病院・診療所

ベースアップ評価料の算定にチャレンジしよう!③

令和7年1月に届出が簡素化されました
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

近畿地方の開業10年目の内科クリニックの院長より 「地区医師会から 『ベースアップ評価料の届出様式が簡素化されたので積極的に届出をして算定しよう』 という案内文がきています。当院は職員10名以下で、1名のみ正社員で残り9名はパート職員です。内容があまり理解できておらず、厚生局に提出する書類を作成するのも煩雑な印象があり、算定しておりません。簡単に届出ができるのであれば職員の賃上げをしたい気持ちはあるのですが、なかなか行動できていません。ベースアップ評価料は算定したほうがよいのでしょうか?」 というご相談を頂きました。

【回 答】

賃上げをしたいというお気持ちがあれば、ベースアップ評価料を積極的に算定したほうがよいと考えています。無床診療所の院長がベースアップ評価料を算定しない理由はおおむね下記のような理由ではないでしょうか。
  • 賃金の2.5%引き上げまで達しないとベースアップ評価料を算定できないのでは?
  • ベースアップ評価料が廃止された場合、賃上げした給料は下げられない!
  • 厚生局へ提出する書類がよくわからないし書類を作成する気がおこらない!
じつは上記の算定しない理由は、思いのほかハードルは高くありません。下記に解決策をお伝えします。

1. 賃金の2.5%引き上げまで達しないとベースアップ評価料を算定できないのでは?
2.5%は政府目標であり、賃金を2.5%引き上げないとベースアップ評価料を算定できないわけではありません。また、対象職員のベースアップは、すべて一律ではなく、任意で決めることができます。2.5%の引き上げは目標であり、自院の初・再診料の算定回数にあわせて、賃上げ計画を作成する必要がありますが、賃上げ計画は厚労省が用意した「賃金計画書用計算ツール」と令和7年1月22日改定の届出様式にて簡単に作成可能です。

2. ベースアップ評価料が廃止された場合、賃上げした給料は下げられない?
たしかに 「基本給」 や 「職務手当」 など決まって毎月支払われる手当でベースアップ評価料の算定額を充当している場合、ベースアップ評価料が廃止になっても 「基本給」 や 「職務手当」 は減額できません。そこで就業規則の賃金規定で 「ベースアップ評価料手当」 を新設し、賃金規定にて 「ベースアップ評価料が廃止された場合、ベースアップ評価料手当も廃止し不支給となる」 と診療報酬に紐づけた手当であることを示せば合法的に手当を廃止することができます。また、賞与、退職金に影響する基本給として増額するのではなく、毎月支払われる 「ベースアップ評価料手当」 として手当を新設することで、将来の人件費増加を防止するメリットもあります。就業規則にない場合は、この機会に作成いただくことをお勧めします。

3. 厚生局へ提出する書類がよくわからないし書類を作成する気がおこらない!
医療機関の届出にかかる負担軽減のため、令和7年1月22日に無床診療向けのベースアップ評価料(1)専用届出様式が公開されました。
厚生労働省 ベースアップ評価料特設ページURL  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)による収入を、基本給または決まって毎月支払われるベースアップ評価料手当の引上げにまるまる活用する場合の書類の記入は、次のように行います。

ステップ1:届出に関する基本事項を記載
保険医療機関コード、保険医療機関名、所在地、開設者名など基本事項を入力します。

ステップ2: 直近1か月間の実績(初再診料等の算定回数)を入力
ベースアップ評価料による算定金額見込みを算出します。事前に直近の初診料・再診料・訪問診療料の算定回数のデータをご用意ください。算定回数のデータは電子カルテやレセコンから出力できる帳票がありますので、職員がレセコン業者にご確認ください。

ステップ3:収入見込み額から職員への分配方法
収入見込み額を算出し、見込み額を基準にベースアップ評価料手当の設定を行います。
賃金改善計画書用計算ツールの 「計算シート」 を使い、ベースアップ評価料算定金額や各医療機関・職員の状況を踏まえベースアップ評価料手当を設定します。
令和6年の補正予算では、ベースアップ評価料を算定する医療機関に限定で生産性向上に資する設備導入等の取り組みを進めた場合、経費相当分の給付(無床診療所の場合は上限18万円)を支給し、生産性向上・職場環境整備等を図ることになっています。今後、ベースアップ評価料を算定していることを要件にする給付金が増える可能性がありますので、ぜひベースアップ評価料の算定にチャレンジしていただきたいと思います。


【2025. 2. 15 Vol.610 医業情報ダイジェスト】