組織・人材育成
ただ伝えることと成長を促すことの違い ~お話上手なリーダーの悩み~
組織力が高まるケーススタディ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
季節は春。新入職員の受け入れ準備をされている医療機関も多いのではないでしょうか。2024年度診療報酬改定では 「2025年は現役世代の急減の年」 と言われていましたが、その前から人材不足に悩む組織が多い医療業界において、 「新人入職者の早期独り立ち」 はリーダーのみならず、既存スタッフみんなの悲願だと思います。今回は、そんな新卒・既卒共に新人さんの育成を目指す過程で気付きを得たリーダーのお話を共有いたします。
ケース
日本の真ん中に位置する県にあるクリニックのお話です。このクリニックの院長先生は新人育成に頭を悩ませており 「普通の人が来ないかな…?」 と嘆いています。
院長先生 「最近、どの新人さんも本当に覚えが遅くって……今までと同じように指導をしているはずなのですが、入職される皆さんのんびりで、受け身の人が多くなったように感じています」
筆者 「そうなのですね。今までの人と何が違うのですか?」
院長先生 「例えば、昔のほうが 『練習させてください!』 と言ってくる職員が多かったと思います。仕事にプライドを持つことが当たり前だと思っていたのですが、そうではなくなったのでしょうか……」
筆者 「仕事の価値観は時代とともに変化しているかもしれませんね。これまでたくさん苦労を重ねて職員の皆さまを育てられてきたと思いますが、最近はどのような育て方をされているのですか?私が新人さんだと仮定した場合、どのような言葉を使い、どのように教えているのか具体的に教えてもらってもいいですか?」
院長先生 「分かりました……(ちょっと考えてから)今から 『〇〇』 についてお伝えします(なぜ知っておく必要があるのか、なぜこの業務がクリニックで必要なのかという前提から、間違えやすいポイントまで多岐に渡り非常に丁寧にお話をいただきました)」
筆者 「ありがとうございます。今お話してみてどうでしたか?」
院長先生 「話し切ったと思います」
筆者 「私からの感想をお伝えしようと思います。お話はとっても分かりやすかったです。話のスピードはもちろん、難しい言葉を使うわけではなく、 『なぜそれが必要なのか』 という説明まであったため、説明の途中で 『あれ?』 と内容に疑問が湧くことはなく、すんなりと話を聞くことができました。ただし、あまりに聞きやすく、理解しやすかったため 『理解した』 と思い込んでしまうかもしれません。つまり、とっても話は上手なのですが、残念ながら相手に理解し行動を促すために 『記憶に残る説明』 『実際に行動ができる説明』 という点では難しい……と感じました」
院長先生 「手前味噌ですが、説明が上手であることは今まで何人もの人に指摘されたことがあり、私の自信のある部分でした。しかし、言われてみると確かに……説明するとは納得をしてもらうために言葉を選んでいるのであり、成長を促すためには相手に何らかの行動を起こすものを残さなければならないことに気が付きました。そう言えば、自分が所属しているスタディグループのリーダーである医師は、非常に説明が上手なのですが、グループのメンバーである医師が育たないことを口にしていたことを思い出しました。説明が上手であることは良いことで、あとは聴き手の課題であると認識していましたが、必ずしもそうとは限らないのかもしれませんね。教えているつもりが、 『ただ伝えていた』 だけなのか……」
この後、院長先生は職員に説明中 「おや?」 と思ってもらえることが目標になり、自分の説明よりも相手の言動に注意を向けるようになったのです。
このケース、どのような感想を持ちましたか?もちろん聞きやすい説明であることは悪いことではありませんが、相手に行動変容を起こさせるのであれば、流れるような聞きやすい説明よりも 「あれ?」 と相手に考えてもらうタイミングを増やす話の仕方をすることも重要です。つまり、話し方よりも相手の聞き方・受け止め方にフォーカスするほうが成長を促しやすいということです。このことは私が経営コンサルタントとしてお客様の前でお話する際も気を付けている点です。
人は納得すると行動が変わりやすいものですが、納得した先に 「ではどう行動を変えていくか」 という選択を個人に促していかなければ成長のための変化とはなりません。そのためには個人に対して 「考える」 ことを促すアプローチが重要になると考えます。
院長先生のようなリーダーシップをとる方たちは皆さま非常に優秀で、論理的な思考が得意な方が多く、とても説明が上手な方が多くいらっしゃいます。その良い点はそのままに、個人にあった指導の方法を相手目線で考えてはいかがでしょうか。
「どうして分からないのだろう=もっともっとかみ砕いて説明しよう!」 ではなく 「この人にはどうしたら伝わりやすいだろう=どこまで理解できているのか聞いてみよう&理解ができているのであれば行動できるようになるための方法を一緒に考えていこう」 という発想の転換が、組織をより成長させる要になると思いますよ!
【2025. 3. 15 Vol.612 医業情報ダイジェスト】
院長先生 「最近、どの新人さんも本当に覚えが遅くって……今までと同じように指導をしているはずなのですが、入職される皆さんのんびりで、受け身の人が多くなったように感じています」
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筆者 「仕事の価値観は時代とともに変化しているかもしれませんね。これまでたくさん苦労を重ねて職員の皆さまを育てられてきたと思いますが、最近はどのような育て方をされているのですか?私が新人さんだと仮定した場合、どのような言葉を使い、どのように教えているのか具体的に教えてもらってもいいですか?」
院長先生 「分かりました……(ちょっと考えてから)今から 『〇〇』 についてお伝えします(なぜ知っておく必要があるのか、なぜこの業務がクリニックで必要なのかという前提から、間違えやすいポイントまで多岐に渡り非常に丁寧にお話をいただきました)」
筆者 「ありがとうございます。今お話してみてどうでしたか?」
院長先生 「話し切ったと思います」
筆者 「私からの感想をお伝えしようと思います。お話はとっても分かりやすかったです。話のスピードはもちろん、難しい言葉を使うわけではなく、 『なぜそれが必要なのか』 という説明まであったため、説明の途中で 『あれ?』 と内容に疑問が湧くことはなく、すんなりと話を聞くことができました。ただし、あまりに聞きやすく、理解しやすかったため 『理解した』 と思い込んでしまうかもしれません。つまり、とっても話は上手なのですが、残念ながら相手に理解し行動を促すために 『記憶に残る説明』 『実際に行動ができる説明』 という点では難しい……と感じました」
院長先生 「手前味噌ですが、説明が上手であることは今まで何人もの人に指摘されたことがあり、私の自信のある部分でした。しかし、言われてみると確かに……説明するとは納得をしてもらうために言葉を選んでいるのであり、成長を促すためには相手に何らかの行動を起こすものを残さなければならないことに気が付きました。そう言えば、自分が所属しているスタディグループのリーダーである医師は、非常に説明が上手なのですが、グループのメンバーである医師が育たないことを口にしていたことを思い出しました。説明が上手であることは良いことで、あとは聴き手の課題であると認識していましたが、必ずしもそうとは限らないのかもしれませんね。教えているつもりが、 『ただ伝えていた』 だけなのか……」
この後、院長先生は職員に説明中 「おや?」 と思ってもらえることが目標になり、自分の説明よりも相手の言動に注意を向けるようになったのです。
このケース、どのような感想を持ちましたか?もちろん聞きやすい説明であることは悪いことではありませんが、相手に行動変容を起こさせるのであれば、流れるような聞きやすい説明よりも 「あれ?」 と相手に考えてもらうタイミングを増やす話の仕方をすることも重要です。つまり、話し方よりも相手の聞き方・受け止め方にフォーカスするほうが成長を促しやすいということです。このことは私が経営コンサルタントとしてお客様の前でお話する際も気を付けている点です。
人は納得すると行動が変わりやすいものですが、納得した先に 「ではどう行動を変えていくか」 という選択を個人に促していかなければ成長のための変化とはなりません。そのためには個人に対して 「考える」 ことを促すアプローチが重要になると考えます。
院長先生のようなリーダーシップをとる方たちは皆さま非常に優秀で、論理的な思考が得意な方が多く、とても説明が上手な方が多くいらっしゃいます。その良い点はそのままに、個人にあった指導の方法を相手目線で考えてはいかがでしょうか。
「どうして分からないのだろう=もっともっとかみ砕いて説明しよう!」 ではなく 「この人にはどうしたら伝わりやすいだろう=どこまで理解できているのか聞いてみよう&理解ができているのであれば行動できるようになるための方法を一緒に考えていこう」 という発想の転換が、組織をより成長させる要になると思いますよ!
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