組織・人材育成
労働基準法の解釈における病院人事パーソンの認識の違い
人事・労務 ここは知っておきたい
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
労働基準法は、日本国憲法第27条第2項 「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」 という規定が根拠になっています。本来、労働関係は労働者と使用者の対等な立場での契約自由の原則に基づいて行われるべきですが、労働者は使用者より一般的に弱い立場にあることから、使用者に有利な契約になっては困るため、法律によって最低限の基準を設けているわけです。
法律、特に労働基準法の厄介な点は、大事なことが、行政解釈、すなわち通達によって決められている点です。何十年も前に出された通達が効力を有し、それを守っていないと労働基準法違反になりかねません。
そこで、今回は、労働基準法において、病院の人事パーソンが誤った認識をしていると思われることについて考えます。
法律、特に労働基準法の厄介な点は、大事なことが、行政解釈、すなわち通達によって決められている点です。何十年も前に出された通達が効力を有し、それを守っていないと労働基準法違反になりかねません。
そこで、今回は、労働基準法において、病院の人事パーソンが誤った認識をしていると思われることについて考えます。
休日についての認識の違い
先日、支援先の人事課長から 「就業規則には年間休日120日とあるのだが、病院の外来勤務の職員は、土曜日は半日勤務なので、残り半日を休日扱いとし、他に半日休日を与えていたところ、 『年間120日の休日を取得できていないことになり、就業規則違反になる可能性がある』 と某専門家から指摘された。土曜の半日は休日にならないというのは正しい解釈なのか。もし正しいとすれば、他にもう1日休日を与えなければならなくなるが、どうしたらよいか」と相談がありました。これは、土曜の午後を半日の休みと考えている人事課長の認識が間違っています。
休日とは、労働契約において労働義務がないとされている日を言います。この休日は、交替制勤務や旅館業などの例外を除き、原則として暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間をいい、午前0時から午後12時までの間に勤務しない場合が休日であるという、暦日休日制という行政解釈をとっています(昭和23年4月5日基発535号)。
なお、3交替制勤務等で暦日をまたがる勤務がある場合には、暦日休日制の原則を適用すると、1週2暦日の休日を与えなければならないこととなり、週休制をとった立法趣旨に合致しないことから、次の2つの要件によって継続24時間をもって休日とすることで差し支えないとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。①番方編成による交替制であることを就業規則で定め、制度として運用されていること、②各番方の交替が規則的に定められ、勤務割表等でその都度設定されるものでないこと。
このように、行政解釈によって、休日の定義ともいうべき重要なことが決められているため、昔から土曜半ドン(半日休み)が一般的だった病院の人事パーソンのなかには、この行政解釈と異なる認識を持っている人も多いのではないかと推察します。自院の休日の運用において、就業規則に示した休日数を下回る勤務体制の職員がいないか一度確認されるとよいでしょう。なお、相談をしてきた人事課長には、専門家の指摘が的確であること、今後、病院の外来診療のあり方について十分検討し、土曜を休診とするか、あるいは、別の平日を休診にするなどして、外来職員も年間休日120日となるようにされてはどうかとお伝えしました。
休日とは、労働契約において労働義務がないとされている日を言います。この休日は、交替制勤務や旅館業などの例外を除き、原則として暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間をいい、午前0時から午後12時までの間に勤務しない場合が休日であるという、暦日休日制という行政解釈をとっています(昭和23年4月5日基発535号)。
なお、3交替制勤務等で暦日をまたがる勤務がある場合には、暦日休日制の原則を適用すると、1週2暦日の休日を与えなければならないこととなり、週休制をとった立法趣旨に合致しないことから、次の2つの要件によって継続24時間をもって休日とすることで差し支えないとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。①番方編成による交替制であることを就業規則で定め、制度として運用されていること、②各番方の交替が規則的に定められ、勤務割表等でその都度設定されるものでないこと。
このように、行政解釈によって、休日の定義ともいうべき重要なことが決められているため、昔から土曜半ドン(半日休み)が一般的だった病院の人事パーソンのなかには、この行政解釈と異なる認識を持っている人も多いのではないかと推察します。自院の休日の運用において、就業規則に示した休日数を下回る勤務体制の職員がいないか一度確認されるとよいでしょう。なお、相談をしてきた人事課長には、専門家の指摘が的確であること、今後、病院の外来診療のあり方について十分検討し、土曜を休診とするか、あるいは、別の平日を休診にするなどして、外来職員も年間休日120日となるようにされてはどうかとお伝えしました。
管理監督者についての認識の違い
病院人事パーソンが誤った認識をしやすいもう1点は、病院の管理職が、労働基準法上の管理監督者に該当すると認識されていることです。労働基準法は労働条件の最低基準として、労働時間、休憩、休日、時間外及び休日の労働などを規定しています。ただし、労働基準法第41条では、これらの規定に関して適用を除外されるものを定めています。それが、 「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」 であり、このような人を管理監督者と呼んでいるわけです。
労働基準法上の管理監督者とは 「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場」 であり、 「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内 容で、責任と権限を有していること」 「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」 という解釈がなされています(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発第150号)。
病院の管理職といっても、病院によって与えられている責任と権限等は異なりますし、出退勤時間も自らの裁量に任せられている病院とそうでない病院があると思います。万が一、単に師長という名称だけで管理監督者として捉えているとすれば、それは誤った認識ということになります。例えば、部下の労働条件の決定について権限を与えられている病院の管理職がどの程度いるか疑問に思っています。なぜなら、病院の多くは、管理職に部下の賃金すら伝えていないからです。
一度、このことについても行政解釈を確認し、自院の管理職が管理監督職に該当するか、再点検をする必要があると思います。
【2025. 4. 1 Vol.613 医業情報ダイジェスト】
労働基準法上の管理監督者とは 「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場」 であり、 「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内 容で、責任と権限を有していること」 「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」 という解釈がなされています(昭和22年9月13日発基17号、昭和63年3月14日基発第150号)。
病院の管理職といっても、病院によって与えられている責任と権限等は異なりますし、出退勤時間も自らの裁量に任せられている病院とそうでない病院があると思います。万が一、単に師長という名称だけで管理監督者として捉えているとすれば、それは誤った認識ということになります。例えば、部下の労働条件の決定について権限を与えられている病院の管理職がどの程度いるか疑問に思っています。なぜなら、病院の多くは、管理職に部下の賃金すら伝えていないからです。
一度、このことについても行政解釈を確認し、自院の管理職が管理監督職に該当するか、再点検をする必要があると思います。
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