組織・人材育成

KGI・KPI管理の導入で採用強化

現状把握と課題が明確になる
株式会社ウィーク  シニアコンサルタント 長谷川 周重
今回は、おそらく一度は聞いたことがある経営管理指標のKGI、KPI管理を採用業務に置き換えて使用し、自社の採用状況を適切に把握し強化していくというテーマです。

まず、KGI《key goal indicator》とは、企業などの組織において、個人や部門が達成すべき最終的な成果を定量的に表した指標。売上高や利益額のように具体的に定義できるものが選択される。重要目標達成指標。

 KPI《key performance indicator》とは、企業などの組織において、個人や部門の業績評価を定量的に評価するための指標。達成すべき目標に対し、どれだけの進捗がみられたかを明確にできる指標が選択される。これをもとに、日々の進捗把握や業務の改善などが行われる。重要業績評価指標。(出典:小学館デジタル大辞泉)

どちらも定量的な指標とすることがポイントです。従って抽象的、定性的な目標管理ではありません。

例として、採用業務をKGI、KPIの指標項目にあてはめると以下のようになります。

KGI…6か月以内に薬剤師を1名採用する。
KPI…応募者数、書類受付人数/率、書類選考通過人数/率、内定者数/率、内定承諾人数/率、入社人数/率媒体ごとの費用対効果、1人当たりの採用コスト、採用単価 など

KPIは、データ化できるところはすべて指標にすることが可能です。参考に、例を図式化すると以下のようになります。


(作成:株式会社ウィーク)

つまり、KPIはKGIを達成するための中間達成目標を設定することになります。この例の場合、1名を採用するためには、応募数10名という目標設定が必要となります。

 このように管理するメリットは、3つあります。

1.採用活動の進捗状況を可視化
数値化により目標が明確になり、現状との差異がわかるようになる。

2.チーム内の理解が進み行動に繋がる
1の可視化の効果は、共通言語となるため複数で採用業務を行う時に相互理解がしやすくなり、何が問題で、何をすべきか明確になる。つまり、ベクトルを合わせられる。

3.客観的な評価ができ、課題を見つけやすい。
KPIを設定することで、数値を蓄積することで分析ができる。
その結果、早く的確に課題を見つけ、効率的な対処が可能となる。

では、実際にどのように図のようなKPI設定をすればよいのでしょうか。

まず、採用は、新卒と中途に分けて管理をすることが基本で、別々に設定します。次に、自社における新卒、中途採用の過去実績の棚卸を行い、過去の実績結果から書類選考通過率など、進捗率を算出します。あとは逆算して目標数を設定すればOKです。
よく他社や業界平均値をベンチマークされる方がおりますが、これは全く意味がありません。重要なことは、自社における実績を知ることです。昨年よりも今年といった具合に時系列で比較することで、採用状況の変化がわかりやすくなります。通年で採用を行っているところであれば、月次推移を見ることで、季節要因などの変化にも気づくことができます。余談になりますが、この数年、新型コロナウィルスの影響で例年と異なった採用の動きが顕著でした。KPI管理をすることで日々のデータを蓄積し分析すると、早く市場の変化に気づくことができ、適切なタイミングでアクションを起こしやすくなります。

また、先の図で3点ポイントがあります。

1.応募数は必ず経路別で集計
経路別とは、大きく分けて人材紹介会社経由と求人掲載媒体経由があります。その他、リファラル、店内掲示などもあります。さらに人材紹介会社経由は紹介会社別に、求人掲載媒体経由は媒体別に集計をするようにしてください。これらは、入社人数まで数値化することが理想です。さらに余裕がある場合には、求人掲載媒体がネット広告であった場合、表示回数(PV数)やクリック数などのデータを入手することができますので、こちらも合わせて指標化できるとより望ましいです。

2. 書類選考数は応募意思の確認がとれた個人情報の入った書類の選考数
薬剤師の採用の場合、人材紹介会社からマスキングされたレジュメを打診されるケースが散見されます。この数を入れてしまうと一般的な指標管理とはかけ離れてしまうため、必ず自社に応募意思があり、個人情報が開示された数を前提に集計を行ってください。ただし、あまりにも応募がなく打診しかない場合は、例外とします。

3.内定承諾で終えずに、実際に入社した数まで把握
最後に、入社数です。これは、実際に入社した人の数をカウントしてください。内定承諾を得られたとしても、残念ながら入社まで何が起こるかわからないのが採用です。承諾後に気を抜いてしまわないように、入社を見届けるまでは管理指標の1つとして設定することが大切です。

今号は、採用業務をKGI、KPIで管理をすることで、採用業務を可視化し、現状把握と課題が明確になるというテーマでした。もし、お取組みがなされていない場合は、是非実践してみてください。


【2023.6月号 Vol.325 保険薬局情報ダイジェスト】