組織・人材育成

【続き】賃金上昇と定年延長が進む中、退職金制度の見直しは急務

ポイント制退職金制度とは
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
退職金の主な役割を在職中の功労に対する報酬(功労報奨)と考えれば、5年未満の短期間の功労にまで退職金の支払いは不要ではないでしょうか。すなわち、転職を前提に就職してくる若い人材を確保するためには、退職金ではなくて、賃金を上げたほうが効果的と言えます。
なお、今後、定年年齢を65歳まで延長すると、その年齢まで賃金を上げ続けることは難しいですから、定年退職時の賃金水準が最も高くなるとも限りません。ポイント制であれば、勤続していた時の等級や役職に基づいてポイントが決まり退職金額が決まりますから、在職期間全体を通しての功労に対する報酬ということになり、退職金の主な役割にも一致します。

ポイント制退職金制度とは

ポイント制退職金制度とは、勤続1年あたりのポイント数や資格等級に応じた1年あたりのポイント数を決めておき、就職から退職までのポイントの累積に、1ポイント当たりの単価を掛け、それに退職事由別係数を掛けて、退職金額を算出する方式です。退職事由別係数は、病院都合の場合には1.0でよいでしょうが、自己都合の場合には5年以上で0.5、10年以上0.7などと5年単位で比率を上げ、25年位で病院都合に合わせればよいでしょう。

ポイントとして考えられる要素は、勤続や等級だけでなく、役職ポイントや人事評価ポイントなども挙げられます。また、病院の場合には、統計的には職種によって退職金の水準が異なることから、職種ポイントを設定することもあります。なお、等級と役職が完全に一致している等級制度においては、役職ポイントは必要ないかもしれませんし、人事評価ポイントも不要かもしれません。しかし、人事評価ポイントを持つことで、評価結果によって毎年のポイント数に差ができるということは、高い評価を得られるよう組織に貢献するという意欲を引き出すインセンティブ効果が期待できるように思います。特に医師のポイント制退職金制度においては、人事評価ポイントを持つようにしています。

労働力確保のために賃金は上げざるを得ませんし、65歳までの労働力も今後戦力として必要でしょうが、これらと連動して退職金まで増やしていたのでは病院経営は厳しくなります。できるだけ早く、退職金の算定を賃金連動から切り離すべきと考えます。


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【2024. 6. 15 Vol.594 医業情報ダイジェスト】