組織・人材育成

賃金上昇と定年延長が進む中、退職金制度の見直しは急務

ポイント制退職金制度とは
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
2024年度の診療報酬改定でベースアップ評価料が新設されたことにより、筆者が支援しているA病院では、一律10,000円のベースアップを実行しました。A病院の定期昇給額が平均6,000円~7,000円程度と推定されますので、2024年度の賃上げ額は、およそ平均16,000円~17,000円に上ると思われます。
ちなみに、5月20日に日本経済団体連合会(経団連)が、大手企業の2024年春闘の回答・妥結状況を公表しましたが、定期昇給を含む月額賃金の引き上げ額は、1万9,480円(率5.58%)と、昨年の1万3,110円(率3.91%)を大きく上回りました。

A病院では、人材の確保と定着を目的として、従来から賃金表の見直しを検討していましたので、このような賃上げに踏み切ったわけであり、特殊なケースと言えますが、今後、他の病院等でも人材確保のために同様の対応が必要になることもあると考えます。
また、2025年4月には、雇用保険法の改正により高年齢雇用継続給付金が縮小されるほか、高年齢者雇用安定法の経過措置終了により、企業は希望者全員を65歳まで雇用することが義務化されます。この雇用確保義務化は、65歳までの定年延長の義務化まで求めているわけではありませんが、人材確保の面からも、近い将来には65歳定年延長はせざるを得ないものと推察します。

このような状況下で、A病院では退職金制度の見直しが急務と考えています。そこで、今回は、賃金の上昇と定年延長が進む中での退職金制度の見直しについて考えます。

退職金制度の見直し

厚生労働省の2023年1月の就労条件総合調査では、医療・福祉産業における退職金算定基礎額は、退職時の賃金としている所が71.6%、筆者が推奨するポイント制は11.8%にとどまっています。ちなみに、従業員1,000人以上の企業(産業計)では、退職時の賃金が30.4%、ポイント制が52.9%でした。
人材を確保するためには、今後も賃金を上げざるを得ないことからすれば、退職時の賃金(主に基本給)と連動する退職金制度は、早急に見直したほうが無難と言えます。そして、その際には、退職金を支給する勤続年数も併せて見直す必要があるでしょう。ちなみに先述の調査で、医療・福祉産業の退職金の受給に必要な最低勤続年数(自己都合)を調べた結果では、勤続3年以上4年未満が最も多く61.0%、2番目が1年以上2年未満12.1%、3番目が5年以上10.3%となっていました。医療・福祉産業で働く人材は、スキルアップのためにも一定期間での転職は一般的であることからすれば、退職金は5年以上勤続した職員に支払うことでよいのではないかと考えます。


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【2024. 6. 15 Vol.594 医業情報ダイジェスト】