組織・人材育成

【続き】令和6年の人事院勧告から給与の課題への対応について考える

給与制度における対応すべき課題
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
現在、筆者が支援している病院では、労働組合から、看護師の初任給で、この総合職(大卒)を上回る金額を提示されていますが、採用面での競争力を考えれば、もっともな要求と言えなくもありません。今回の人事院勧告によって、初任給の引き上げは、医療機関等でも一層進むことと思われますから、地域で競合する所の初任給には注意を払う必要があります。
賞与は、現在の年間4.5ケ月分を4.6ケ月分に引き上げ、この引上げ分は期末手当及び勤勉手当に0.05ケ月分ずつ均等に配分されます。なお、手当については、地域手当において、支給地域等の見直しを行い、市単位から都道府県単位へと広域化する、また、異動による地域手当の保障期間を現行の2年から3年に延長するとしています。さらに、通勤手当の手当額の支給限度額を15万円に引上げ、新幹線等の特別料金も支給限度額の範囲内で全額支給されます。筆者が支援している法人で、都道府県をまたいだ異動や、遠距離通勤をする可能性があるのは2法人だけですが、今回の内容を多少は参考にできると考えます。
他に、手当で注目すべきは、扶養手当の配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当を現行の10,000円から13,000円に引き上げることです。医療機関では共働き世帯も多く、配偶者手当をすでに廃止しているところが多いと推察しますが、国の動きを受け、今後ますます配偶者手当の廃止は進むものと考えます。

係長以上の給与体系の見直し

今回、特に注目すべきは、どちらかと言えば年功的なイメージのある公務員給与において、組織パフォーマンス向上に向け、職務や職責をより重視した俸給体系を整備することです。具体的には、係長級~本府省課長補佐級の俸給の最低水準を各級の初号の額を引き上げることで、最大3.5万円引き上げるとし、本府省課室長級は、同じく、初号を引き上げつつ職務の級間の重なりを解消するとしています。そして、これにより、昇格時の俸給上昇幅は最大5万円上昇するということです。
筆者も昇格・昇進時に、基本給の上昇分と役職手当の上昇分を加えて5万円程度は引き上げることを推奨してきましたが、今回の勧告では、本給だけでの話ですから大きな改革と言えます。今年の人事院勧告は、民間企業の現在の賃上げ等の状況を反映させているとはいえ、医療機関においては、この勧告に準拠して見直すことは経営的に非常に厳しいと考えます。病院では、国の給与表に準拠しているところもあると思いますが、今後は、公務員の給与に沿って改定することは困難になると推察します。今回の勧告の年功から脱却する給与のあり方は、医療機関でも見習うべきですが、水準については、自院の支払い能力を基に考えざるを得ないことは言うまでもありません。


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【2024. 9. 1 Vol.599 医業情報ダイジェスト】