組織・人材育成
令和6年の人事院勧告から給与の課題への対応について考える
給与制度における対応すべき課題
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
人事院は8月8日に、2024年度の一般職の国家公務員の給与改定について、国会と内閣に3年連続で給与の引き上げを勧告しました。昨年に続き、初任給を大幅に引き上げ、また、管理職の給与を職責重視の俸給体系へと見直すなど、時代の要請に即した給与制度への転換を図っていると言えます。筆者もこの数年、病院で同様の制度の見直しを進めてきましたが、国のように、経営を考えずにダイナミックな施策を行うことは、予算の関係でできず、羨ましく感じます。
今回、人事院は、給与制度における対応すべき課題として、次の3つを挙げています。①人材の確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③ワークスタイルやライフスタイルの多様化への対応です。これら課題は、医療機関の課題と一致します。
そこで今回は、令和6年の人事院勧告の内容を確認し、これらの課題への対応等について考えます。
今回、人事院は、給与制度における対応すべき課題として、次の3つを挙げています。①人材の確保への対応、②組織パフォーマンスの向上、③ワークスタイルやライフスタイルの多様化への対応です。これら課題は、医療機関の課題と一致します。
そこで今回は、令和6年の人事院勧告の内容を確認し、これらの課題への対応等について考えます。
令和6年給与勧告のポイント
令和6年の給与勧告は、民間給与の状況を反映して、平成4年の2.87%以来、32年ぶりとなる高水準の2.76%のベースアップとなっています。これに定期昇給分を加えると、月例給で約4.4%の給与改善とのことです。主なポイントを確認すると、まず月例給は、民間給与との格差(11,183円)を解消するため、俸給表等が引上げ改定されます。その内訳は、俸給9,836円(昨年は3,431円)、俸給の改定により諸手当の額にはね返る分1,267円(昨年438円)、寒冷地手当80円(民間の同種手当の支給額を踏まえ月額11.3%引き上げる)となっています。
今年の勧告で最も注目すべき点は、採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅に引き上げることです。例えば、総合職(大卒)は230,000円(14.6%増の29, 30 0円増)、一般職(大卒)220,000円(12.1%増の23,800円増)、一般職(高卒)188,000円(12.8%増の21,400円増)としています。また、30歳台後半までの職員に重点を置いて改定するとしており、行政職俸給表(一)の平均改定率は、1級(係員)11.1%、2級(主任等)7.6%、全体で3.0%です。
現在、筆者が支援している病院では、労働組合から、看護師の初任給で、この総合職(大卒)を上回る金額を提示されていますが、採用面での競争力を考えれば、もっともな要求と言えなくもありません。今回の人事院勧告によって、初任給の引き上げは、医療機関等でも一層進むことと思われますから、地域で競合する所の初任給には注意を払う必要があります。
賞与は、現在の年間4.5ケ月分を4.6ケ月分に引き上げ、この引上げ分は期末手当及び勤勉手当に0.05ケ月分ずつ均等に配分されます。なお、手当については、地域手当において、支給地域等の見直しを行い、市単位から都道府県単位へと広域化する、また、異動による地域手当の保障期間を現行の2年から3年に延長するとしています。さらに、通勤手当の手当額の支給限度額を15万円に引上げ、新幹線等の特別料金も支給限度額の範囲内で全額支給されます。筆者が支援している法人で、都道府県をまたいだ異動や、遠距離通勤をする可能性があるのは2法人だけですが、今回の内容を多少は参考にできると考えます。
他に、手当で注目すべきは、扶養手当の配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当を現行の10,000円から13,000円に引き上げることです。医療機関では共働き世帯も多く、配偶者手当をすでに廃止しているところが多いと推察しますが、国の動きを受け、今後ますます配偶者手当の廃止は進むものと考えます。
今年の勧告で最も注目すべき点は、採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅に引き上げることです。例えば、総合職(大卒)は230,000円(14.6%増の29, 30 0円増)、一般職(大卒)220,000円(12.1%増の23,800円増)、一般職(高卒)188,000円(12.8%増の21,400円増)としています。また、30歳台後半までの職員に重点を置いて改定するとしており、行政職俸給表(一)の平均改定率は、1級(係員)11.1%、2級(主任等)7.6%、全体で3.0%です。
現在、筆者が支援している病院では、労働組合から、看護師の初任給で、この総合職(大卒)を上回る金額を提示されていますが、採用面での競争力を考えれば、もっともな要求と言えなくもありません。今回の人事院勧告によって、初任給の引き上げは、医療機関等でも一層進むことと思われますから、地域で競合する所の初任給には注意を払う必要があります。
賞与は、現在の年間4.5ケ月分を4.6ケ月分に引き上げ、この引上げ分は期末手当及び勤勉手当に0.05ケ月分ずつ均等に配分されます。なお、手当については、地域手当において、支給地域等の見直しを行い、市単位から都道府県単位へと広域化する、また、異動による地域手当の保障期間を現行の2年から3年に延長するとしています。さらに、通勤手当の手当額の支給限度額を15万円に引上げ、新幹線等の特別料金も支給限度額の範囲内で全額支給されます。筆者が支援している法人で、都道府県をまたいだ異動や、遠距離通勤をする可能性があるのは2法人だけですが、今回の内容を多少は参考にできると考えます。
他に、手当で注目すべきは、扶養手当の配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当を現行の10,000円から13,000円に引き上げることです。医療機関では共働き世帯も多く、配偶者手当をすでに廃止しているところが多いと推察しますが、国の動きを受け、今後ますます配偶者手当の廃止は進むものと考えます。
係長以上の給与体系の見直し
今回、特に注目すべきは、どちらかと言えば年功的なイメージのある公務員給与において、組織パフォーマンス向上に向け、職務や職責をより重視した俸給体系を整備することです。具体的には、係長級~本府省課長補佐級の俸給の最低水準を各級の初号の額を引き上げることで、最大3.5万円引き上げるとし、本府省課室長級は、同じく、初号を引き上げつつ職務の級間の重なりを解消するとしています。そして、これにより、昇格時の俸給上昇幅は最大5万円上昇するということです。
筆者も昇格・昇進時に、基本給の上昇分と役職手当の上昇分を加えて5万円程度は引き上げることを推奨してきましたが、今回の勧告では、本給だけでの話ですから大きな改革と言えます。今年の人事院勧告は、民間企業の現在の賃上げ等の状況を反映させているとはいえ、医療機関においては、この勧告に準拠して見直すことは経営的に非常に厳しいと考えます。病院では、国の給与表に準拠しているところもあると思いますが、今後は、公務員の給与に沿って改定することは困難になると推察します。今回の勧告の年功から脱却する給与のあり方は、医療機関でも見習うべきですが、水準については、自院の支払い能力を基に考えざるを得ないことは言うまでもありません。
【2024. 9. 1 Vol.599 医業情報ダイジェスト】
筆者も昇格・昇進時に、基本給の上昇分と役職手当の上昇分を加えて5万円程度は引き上げることを推奨してきましたが、今回の勧告では、本給だけでの話ですから大きな改革と言えます。今年の人事院勧告は、民間企業の現在の賃上げ等の状況を反映させているとはいえ、医療機関においては、この勧告に準拠して見直すことは経営的に非常に厳しいと考えます。病院では、国の給与表に準拠しているところもあると思いますが、今後は、公務員の給与に沿って改定することは困難になると推察します。今回の勧告の年功から脱却する給与のあり方は、医療機関でも見習うべきですが、水準については、自院の支払い能力を基に考えざるを得ないことは言うまでもありません。
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