組織・人材育成
インシデント(ヒヤリハット)との向き合い方
リスクとなる事象が起こる前に対策を行うことが重要
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
自然災害の脅威について日々ニュースで取り上げられていますね。BCP(事業継続計画)など、あらゆる事態を想定した準備やその確認をされている組織も多いと思います。大きな災害とは言わないまでも、仕事の中では毎日何事もなく終わるわけではなく、大小問わずトラブルがつきものです。今回は新人採用が増えるなかで未然のトラブルを防ごうとインシデントについて考えることを決めたクリニックのお話を紹介いたします。
ケース:
海のない県にある歯科クリニックのお話です。このクリニックではもともとスタッフが10名程でしたが、長年勤めたスタッフが家庭の事情により退職することが続き、最近では新人職員の数が多くなってきました。そこでリスクマネジメントを改め、インシデント(ヒヤリハット)について対策を取ろう!と勉強会が開かれることになりました。
このクリニックの問題は実は副院長先生。専門医である副院長先生はクリニックにとってなくてはならない存在であるものの、患者・家族とのコミュニケーションが苦手で、これまでは他のベテランスタッフが患者・家族との間に入ってサポートしてきたのでした。しかし、このベテランスタッフがいなくなったことで、これまで阿吽の呼吸で業務ができていた副院長先生の診察が上手く回らなくなり、トラブルが発生する可能性が否定できなくなったのです。そこで、 「小さくともトラブルの種を組織として認識したほうが良い」 という院長先生の想いから勉強会が開かれることになったのでした。
このクリニックでインシデントの勉強会が開かれるのは初めてのこと。今までインシデントレポートを書いたことのないスタッフがほとんどのなか、勉強会が行われました。
いわゆる 「1件の重大事故(重傷以上)があれば、その背後に29件の軽度の事故があり、300件のインシデントが隠れている」 というハインリッヒの法則について知るとともに、次のようなことが伝えられました。
このクリニックの問題は実は副院長先生。専門医である副院長先生はクリニックにとってなくてはならない存在であるものの、患者・家族とのコミュニケーションが苦手で、これまでは他のベテランスタッフが患者・家族との間に入ってサポートしてきたのでした。しかし、このベテランスタッフがいなくなったことで、これまで阿吽の呼吸で業務ができていた副院長先生の診察が上手く回らなくなり、トラブルが発生する可能性が否定できなくなったのです。そこで、 「小さくともトラブルの種を組織として認識したほうが良い」 という院長先生の想いから勉強会が開かれることになったのでした。
このクリニックでインシデントの勉強会が開かれるのは初めてのこと。今までインシデントレポートを書いたことのないスタッフがほとんどのなか、勉強会が行われました。
いわゆる 「1件の重大事故(重傷以上)があれば、その背後に29件の軽度の事故があり、300件のインシデントが隠れている」 というハインリッヒの法則について知るとともに、次のようなことが伝えられました。
- 自分のミスや不注意を報告することがインシデントレポートではなく、他の人も同じようなことがあるかも知れないからお互いに注意喚起し合うツールがレポートだ
- インシデントレポートを提出することはネガティブなことではなく、レポートが提出されないことのほうが問題だ
- そもそも 「何がインシデントになるのか」 という価値観も人それぞれであり、自分が認識していないインシデントに気が付くことも重要だ
この話のなかで副院長先生はこのような発言をされたのでした。
「自分がインシデントだと認識していなくても第三者からするとインシデントになり得ることがある、という気付きはとてもインパクトがあった。実は、誰かの視点でものを考えることに苦手意識があったのだが、このような仕組みはクリニック全体にとってとても有意義であると思う。他者の考えを知ることは得意な人がやれば良いと思っていたけど、自分にとっても良いことなのだと理解できた」
もともと非常に真面目な副院長先生は、その勉強会が終わってすぐにインシデントレポートのひな形を作成し、誰よりも多くのレポートを提出するようになったのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?病院では当たり前に行うことが多いインシデントの取り扱いについて、クリニックという小さな組織の場合にはミーティングで口頭での情報共有で終わることがまだまだ少なくないのではないでしょうか。
リスクマネジメントはリスクとなる事象が起こった際に対処するのではなく、その前に対策を行うことが重要です。しかし、頭ではわかっていてもいざ 「緊急性が高くないから」 と後回しになることも多いのがリスクマネジメントであると思います。このケースを参考に、ぜひ組織のリスクマネジメントについて考える機会になれば幸いです。
【2024. 9. 1 Vol.599 医業情報ダイジェスト】
「自分がインシデントだと認識していなくても第三者からするとインシデントになり得ることがある、という気付きはとてもインパクトがあった。実は、誰かの視点でものを考えることに苦手意識があったのだが、このような仕組みはクリニック全体にとってとても有意義であると思う。他者の考えを知ることは得意な人がやれば良いと思っていたけど、自分にとっても良いことなのだと理解できた」
もともと非常に真面目な副院長先生は、その勉強会が終わってすぐにインシデントレポートのひな形を作成し、誰よりも多くのレポートを提出するようになったのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?病院では当たり前に行うことが多いインシデントの取り扱いについて、クリニックという小さな組織の場合にはミーティングで口頭での情報共有で終わることがまだまだ少なくないのではないでしょうか。
リスクマネジメントはリスクとなる事象が起こった際に対処するのではなく、その前に対策を行うことが重要です。しかし、頭ではわかっていてもいざ 「緊急性が高くないから」 と後回しになることも多いのがリスクマネジメントであると思います。このケースを参考に、ぜひ組織のリスクマネジメントについて考える機会になれば幸いです。
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