診療報酬
初・再診時の定額負担額を経済学的に考える
10月から初診・再診時の定額負担制度の義務金額が引き上げへ
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ 10月から初診・再診時の定額負担制度の義務金額が引き上げへ
本年10月から紹介状がない患者の大病院外来の初診・再診時の定額負担制度の対象と最低徴収額が拡大され、初診時5,000円以上が7,000円以上、再診時2,500円以上が3,000円以上に義務化された。さらに増加した初診時2,000円分、再診時500円分は新たに病院収入になるのではなく、保険請求分の初診料、外来診療料の点数から相殺して請求することになった。
対象には従来の対象医療機関である特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院のほか、新たに一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関が加わった。紹介受診重点医療機関については都道府県による公表が本年度末までになるため、実際に徴収が開始されるのは来年4月以降になるだろう。
改定の度に定額負担制度の対象は拡大しており、外来機能分化を図りたい厚労省の強い意志を感じる。前々回の2018年度改定では義務化の対象を「一般病床500床以上の地域医療支援病院」から「許可病床400床以上の地域医療支援病院」にした。これは医療法上の「一般病床」から「許可病床」に変更したことがポイントになる。例えば、許可病床400床で、内訳が「一般病床300床+療養病床100床」であれば、従来の「一般病床」だと該当しなかったが、改定後は該当するようになった。そして、前回の2020年度改定では「許可病床400床未満かつ一般病床200床以上の地域医療支援病院」に定額負担の義務化が拡大された。
対象には従来の対象医療機関である特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院のほか、新たに一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関が加わった。紹介受診重点医療機関については都道府県による公表が本年度末までになるため、実際に徴収が開始されるのは来年4月以降になるだろう。
改定の度に定額負担制度の対象は拡大しており、外来機能分化を図りたい厚労省の強い意志を感じる。前々回の2018年度改定では義務化の対象を「一般病床500床以上の地域医療支援病院」から「許可病床400床以上の地域医療支援病院」にした。これは医療法上の「一般病床」から「許可病床」に変更したことがポイントになる。例えば、許可病床400床で、内訳が「一般病床300床+療養病床100床」であれば、従来の「一般病床」だと該当しなかったが、改定後は該当するようになった。そして、前回の2020年度改定では「許可病床400床未満かつ一般病床200床以上の地域医療支援病院」に定額負担の義務化が拡大された。
■再診時定額負担が初診ほど多くない理由
毎年、中医協総会では「主な選定療養に係る報告状況」(各年7月1日現在)が公表されている。病床数が200以上の病院において受けた初診・再診は、次のような4年間の推移になっている。
(1)病床数が200以上の病院において受けた初診
(2)病床数が200以上の病院において受けた再診
初診時における大病院(一般病床200床以上)の紹介状なし受診時の定額負担は、2021年に全国で1,164病院、最低金額200円、最高金額11,000円、平均4,063円である。一方、再診については2021年に全国で730病院と初診の6割強であり、最低金額220円、最高金額11,000円、平均2,499円だった。初診ほど多くないが、その理由は「他院へ文書での紹介を申し出たが、自院を自己の選択に基づいて受診した場合」という要件が、他院からの紹介状がないと無条件で徴収できる初診時と違うからである。2022年改定では正当な理由がある場合、定額負担を求めなくてもよい再診患者要件が大きく見直されて要件が厳しくなった。
再診の定額負担に該当する患者は、ホテルや飲食店等の通常のサービス業ならば、熱烈なリピーターで大切にしないといけない顧客になる。それを自院の外来機能分化のため、心を鬼にして他院を紹介するのであるが、「それでも定額負担を払って受診したい」という熱烈なファンが対象になる。
■首都高も利用料金アップで渋滞がなくなった
初診時・再診時の定額負担は経済学的にドライに考えれば役割が明確になる。首都圏の大動脈である首都高速道路はいつも渋滞している。筆者がよく利用する東名高速道路から用賀を経て渋谷へ向かう首都高3号線は朝、夕のラッシュ時は大渋滞である。ただし、昨年の東京オリンピックの際は、首都高利用1回当たり料金が1,000円上乗せになった。その間、筆者も運転したが、渋滞は全くなかった。ところが首都高3号線の下を走る青山通りは、普段よりも激しい大渋滞と報道されていた。首都高を大病院、青山通りを200床未満のかかりつけ医機能を持つ、まだまだ外来キャパがある病院や診療所に置き換えるとわかりやすい。
一方、2010年の民主党政権(当時)時代に高速道路無料化社会実験が沖縄において実施された。すると、ふだん高速道路を利用しない農耕用軽トラック等が低速走行したため、逆に大渋滞が発生してしまった。これはかつての老人医療費無料化時代と全く同じことだ。
定額負担金額が義務化されていない200床以上病院によっては初診・再診で200円台の安い金額があるが、クレームが出ない程度の少額ならば、価格を高くして外来患者受診需要を落とすという本来のミッションを果たしていないと言えるわけだ。現在、医療法において第8次医療計画(2024〜2029年度まで)が検討されている。そこでは「外来医療機能の明確化」が実施される。200床未満病院の外来は専門病院を除いては「かかりつけ医」機能が義務化される可能性もある。一方、200床以上病院は紹介中心の外来を実施していく必要がある。
【2022. 11. 15 Vol.556 医業情報ダイジェスト】
一方、2010年の民主党政権(当時)時代に高速道路無料化社会実験が沖縄において実施された。すると、ふだん高速道路を利用しない農耕用軽トラック等が低速走行したため、逆に大渋滞が発生してしまった。これはかつての老人医療費無料化時代と全く同じことだ。
定額負担金額が義務化されていない200床以上病院によっては初診・再診で200円台の安い金額があるが、クレームが出ない程度の少額ならば、価格を高くして外来患者受診需要を落とすという本来のミッションを果たしていないと言えるわけだ。現在、医療法において第8次医療計画(2024〜2029年度まで)が検討されている。そこでは「外来医療機能の明確化」が実施される。200床未満病院の外来は専門病院を除いては「かかりつけ医」機能が義務化される可能性もある。一方、200床以上病院は紹介中心の外来を実施していく必要がある。
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