診療報酬

紹介・逆紹介の実施状況に地域差はどの程度あるか?

診療所の数と紹介件数の関係は?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
令和4年度改定において紹介割合、逆紹介割合という新しい指標ができた。従来からある紹介率、逆紹介率と名称は似ているものの、計算式がまったく異なるため、混乱した方も多いのではないだろうか。下記がそれぞれの計算式となる。違いを整理するために補足すれば、紹介率・逆紹介率は医療法に基づき、紹介割合・逆紹介割合は健康保険法(診療報酬)に基づく指標だ。

紹 介 率:紹介患者数/初診患者数×100(%)
逆紹介率:逆紹介件数/初診患者数×100(%)
紹介割合:(紹介患者数+救急患者数)/初診患者数×100(%)
逆紹介割合:逆紹介患者数/(初診+再診患者数)×1,000(‰)

令和4年度改定では、特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床以上)、紹介受診重点医療機関、許可病床400床以上(一般病床200床以上)の医療機関は、紹介割合、逆紹介割合が基準を満たせない場合、初診料、外来診療料を減算されることになった。
 特に注意したいのが逆紹介割合だ。分母に再診患者数が入っていること、そして単位が百分率の%ではなく、千分率の‰になっているためだ。

前述した特定機能病院、地域医療支援病院、紹介受診重点医療機関では、逆紹介割合30‰未満が減算対象となるが、百分率で置き換えると3%未満であり、僅かな数値の変動で減算対象になる恐れがある。
逆紹介割合を上げるためには、分子の逆紹介患者数を増やすか、再診患者数を減らさなければならない。現実的な取り組み策としては
  •  再診患者を逆紹介する
  • リフィル処方によって、再診患者数を減らす
の2点になるだろう。前者は分子を増やし、かつ分母を減らすことになるので、より効果的だ。しかし、周辺に医療機関の少ない地域では、逆紹介したくても、紹介先の選択肢がないという声を聞くことが少なくない。

■診療所の数と紹介件数の関係は?

今回は第7回NDBオープンデータより、都道府県別に診療情報提供料(Ⅰ)の算定状況を検証した。
まず人口10万人あたりの診療情報提供料(Ⅰ)の算定件数をみると、件数上位を鹿児島、大阪、広島、岡山、京都などの西日本エリアが、下位は福島、埼玉、岩手、山梨、秋田などの東日本エリアが占めている。医療機関連携は「西高東低」にあるようだ。
さらに医療施設調査の結果を盛り込み、縦軸に人口10万人あたりの診療情報提供料(Ⅰ)の算定件数、横軸を人口10万人あたりの診療所数として、都道府県別にプロットしたところ、診療所の数が多いエリアほど、診療情報提供料(Ⅰ)の算定件数が増加する傾向にあることが見えてきた(図)。前述した地域の医療機関の嘆きを示すように、紹介、逆紹介する際の選択肢の多さは、紹介割合、逆紹介割合の指標だけでなく、そもそもの目的である地域医療連携の推進を考えるうえで無視できない課題だ。
とはいえ、人口あたりの診療所数が同程度であっても、地域によって連携状況には開きがある。例えば、鹿児島と山梨を比較すると、人口10万人あたりの診療所数は鹿児島県が86.1施設、山梨県は86.0施設とほぼ同じだが、診療情報提供料(Ⅰ)の算定件数にはおよそ1.8倍の差があった。



■地域医療連携の推進に向けて

外来機能の明確化・連携の推進を目的に、今年4月から外来機能報告制度がスタートした。
そして年明けには、外来機能報告の結果に基づき、地域の協議の場で「医療資源を重点的に活用する外来」(重点外来)を基幹的に担う医療機関(紹介受診重点医療機関)が決定される予定となっている。

今年10月より、地域医療支援病院(一般病床200床以上)等を紹介状なしで受診した場合の患者の定額負担が7,000円に引き上げられたが、来年春からは紹介受診重点医療機関もここに加わる。対象医療機関に紹介状なしで受診する患者は減ることが見込まれるが、同時に地域における紹介・逆紹介の件数は増加するかもしれない。
一方で、医療機関の少ない地域では、定額負担を義務付けられる紹介受診重点医療機関に手上げして問題が生じないのか、懸念する声も耳にする。

制度変更に伴い、今後何かしらの動きが出てくるだろう。医療機関の分化・連携が進み、検証で見えたような地域間格差は縮小するのか、それともさらに拡大してしまうのか。現時点ではどちらの可能性も考えられる。外来医療のターニングポイントとして、今後の動向に注目したい。


【2022. 12. 15 Vol.558 医業情報ダイジェスト】