診療報酬

外来栄養食事指導料の算定状況は?

栄養管理への期待と課題
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
栄養食事指導は、疾病の進展防止、回復や予後などの過程における治療において、大きな役割を担う。管理栄養士が患者さん一人一人の食生活や好み、生活環境、仕事などのライフスタイル等を踏まえながら、栄養状態の改善のために栄養や食生活に関する指導を行っている。

外来における栄養食事指導の取り組みは、診療報酬では外来栄養食事指導料として評価されている。
入院中以外で、特別食を医師が必要と認めた者、がん患者、摂食機能又は嚥下機能が低下した患者、低栄養状態にある患者に対して、医師の指示に基づき、管理栄養士が患者ごとの具体的な食事計画案等によって療養のために必要な指導を行った場合に算定できる。外来栄養食事指導料2は診療所に限られるが、外部の管理栄養士(他の医療機関や栄養ケア・ステーションに所属する管理栄養士)が指導した場合が対象となる。

B001_9 外来栄養食事指導料
イ 外来栄養食事指導料1
(1)初回 ①対面で行った場合 260点、②情報通信機器等を用いた場合 235点
(2)2回目以降 ①対面で行った場合 200点、②情報通信機器等を用いた場合 180点
ロ 外来栄養食事指導料2
(1)初回 ①対面で行った場合 250点、②情報通信機器等を用いた場合 225点
(2)2回目以降①対面で行った場合 190点、②情報通信機器等を用いた場合 170点

■外来栄養食事指導の算定状況は?

今回は第7回NDBのオープンデータより、外来栄養食事指導料の人口10万人あたりの算定件数を都道府県別に算出した。
人口あたりの算定件数は、島根県、岡山県、愛知県が特に多く、宮崎県、秋田県、山形県が少ない。算定状況に関する地域差の検証でありがちな西高東低の傾向は見られず、高齢化率の高い都道府県で多いわけでもなさそうだ。とはいえ地域差は大きく、最も多い島根県と最も少ない宮崎県では、算定件数に4倍の差があった。
外来栄養食事指導料2の算定状況も地域によって顕著な差がありそうだ。外来栄養食事指導料の総算定件数に占める割合は、青森県、佐賀県、鹿児島県、三重県では10%を超えているが、1%満たない県も8つあった。
2020年改定で外来栄養食事指導料が1と2に分けられたことで、診療所は管理栄養士を雇用しなくても、他医療機関等と連携することで外来栄養食事指導料を算定可能になったが、多くの地域で取り組めているとは言い難い状況のようだ。



■栄養管理への期待と課題

近年は栄養管理への評価が一層高まり、管理栄養士の役割に対する診療報酬上の評価も改定ごとに上がっている。
オンラインによる栄養食事指導も、2020年改定で2回目以降の場合に、2022年改定では初回から算定可能になった。前述のNDBはデータ対象期間が2020年制度のものになるが、外来栄養食事指導料1の2回目以降で「情報通信機器等を用いた場合」の算定割合は0.3%となっている。オンラインの場合、患者が自宅で実際に食べているものを確認できるため、対面とは異なるメリットがあると言われている。少なくとも現時点ではオンライン栄養食事指導はまだまだ浸透していないが、今後の動向に注目したい。
また診療報酬上の評価はないものの、最近では管理栄養士を配置する保険薬局やドラッグストアを見かける機会が増えてきた。栄養管理の意義は多くが認めるところなのだろう。

一方で、飯野らの調査(※)では、ほとんどの医師が栄養食事指導を必要とする患者に関わる機会があったものの、54.3%の医師が管理栄養士へ栄養食事指導を依頼していなかった。また9割以上の医師が管理栄養士に栄養食事指導を任せたいと考えていたものの、「依頼に手間がかかる」「依頼方法が分からない」という理由で依頼していなかったと報告している。
栄養管理への社会ニーズは増加しているなかで、地域差も含めて、急速な環境変化に体制が追いついていない現状がうかがえる。次期改定でも管理栄養士の業務に対する評価が上がる可能性は高い。経営的な観点からも体制づくりが求められる。

※ 飯野みな美ら;外来栄養食事指導の依頼に関する現状調査, JSPEN,Vol1(1),2019


【2023. 8. 1 Vol.573 医業情報ダイジェスト】