診療報酬

リハビリテーション単位数の地域差は?

地域性以外の要因はないか?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
「令和4年度入院・外来医療等における実態調査」において、疾患別および届出入院料別の週あたりのリハビリテーション実施日数、実施単位数が示された。同調査では届出入院料別の1日あたりのリハビリテーション提供単位数は、回復期リハビリテーション病棟入院料(以下、回リハ入院料)の「1」では6.18単位、「2」は5.27単位、「3」は4 .71単位、「4」は3.71単位となっている。施設基準が上がるほど、リハビリテーションの単位数は増える傾向がある。脳血管疾患等リハビリテーションの対象患者が多いという理由もあるだろう。

一方で、リハビリテーションの単位数には地域差があることが以前より言われている。他院と比較して提供単位数が少ない医療機関では、セラピストのマンパワー不足に起因する場合もあるが、査定されてしまうといった請求にかかる地域差の問題が要因として挙げられるケースも多い。
回リハ病棟をはじめ、リハビリテーションが出来高算定になる病棟では実施単位数が病床単価に直結するため、経営の立場で考えれば、マンパワーの上限まで算定して欲しいところだ。

■都道府県間の差は?

令和3年度病床機能報告より、回リハ入院料1を届出している病棟を抽出して、病棟ごとの1患者1日あたりリハビリテーション単位数(以下、提供単位数)にかかる都道府県別の平均値(以下、平均単位数)を比較した。
 最も平均単位数が多かったのは茨城で7.9単位となっている。逆に最も少ないのは富山、石川の北陸2県で、いずれも5.6単位だった。
茨城をはじめ、18都府県において平均単位数が7.0単位以上あるのに対して、前述の北陸2県に加え、島根、岡山、秋田、岐阜、新潟、福井、鳥取、宮崎の10県では平均単位数が6単位を下回っている。
 あくまで平均なので、平均ラインを軽く上回る病院もあれば、下回っている病院もある。図を見ての通り、同じ都道府県であっても病院間の振れ幅は大きい。25%タイルと75%タイルで2単位以上の差がある県は少なくない。平均単位数が少ない富山県でも提供単位数の多い病院は7単位を超えており、岡山も中央値は6単位を超えている。

ただし、病床機能報告のデータは、入力ミス等の何らかの理由により真偽が疑わしいデータが一部含まれていることには注意したい。今回の検証では提供単位数が0単位もしくは9単位を超えている病院は分析から除外したが、報告上の数字として提供単位数が10単位を超えている病院もあった。



■地域性以外の要因はないか?

最も平均単位数の多い茨城と最も少ない富山には2.3単位の差がある。病床単価に置き換えれば5,000円以上の差になるだろう。医業収益では、平均稼働40床とした場合、年間7,000万円以上の差に相当する。当然ながら経営的に見てこの差は大きい。地域性の一言では許容しがたい差だ。

とはいえ、平均単位数が少なく、査定が厳しいであろう県であっても、提供単位数が7単位を超える病院がある。一方で、平均単位数が多い地域であっても、提供単位数が4~5単位を下回る病院も少なくない。どことは書かないが、査定が厳しいと耳にしていた県であっても、他県と比較して平均単位数が特別に少ないわけではないことも今回確認できた。地域性と個々の病院の事情の両側面から判断が必要だろう。
 当然ながら、病院ごとの提供単位数は患者構成に大きく左右される。しかし筆者が経験するかぎり、単位数が少ない病院では疾患ごとに他院と比較してもやはり少ない傾向がある。その理由としては、理学療法士等のセラピストの人数がそもそも少ないケースが多い。

経営側、現場側ともに提供単位数が少ないことを認識していても、セラピスト増員のステップとして、現状の人員での生産性を上げることが求められるというのはよくある話だ。とはいえ、そもそもの人員が少ないために、個々のセラピストにかかる間接業務が多く、生産性が上がりづらい環境がある。少ない人員による効率的なオペレーションを求めた結果、逆に生産性が低下してしまうというパターンだ。
リハビリテーションの提供状況は医療の質にもかかわるテーマだ。特に回リハ病棟の病床単価が低いと感じている病院は、改めて自院の状況、立ち位置を確認したい。


【2023. 9. 1 Vol.575 医業情報ダイジェスト】