診療報酬
次期改定では救急患者の受け入れをどう評価するか?
病床管理の運用見直しが必要になる
株式会社メデュアクト 代表取締役 流石 学次期診療報酬改定に向けての議論が進んできた。施行が2ヶ月後ろ倒しになるとはいえ、診療報酬に触れる機会が多い人には2年に1度の大イベントであることには変わらず、議論の動向が気になるところだろう。
8月30日に開催された中医協では、次期改定の論点等に関する議論を整理した「令和6年度診療報酬改定に向けた議論の概要」が公開された。急性期および回復期入院医療に関しては、論点として下記を挙げている。そのまま読み取れば、一般病棟入院基本料、地域包括ケア病棟入院料の施設基準の見直し、誘導するためのインセンティブないしディスインセンティブの設定が議論されるのだろう。
・ 急性期入院医療について、高齢者の救急搬送件数の増加等を踏まえ、急性期病棟と地域包括ケア病棟に求める役割・機能について及びこれらの機能分化を促進し、個々の患者の状態に応じた適切な医療資源が投入される効率的かつ質の高い入院医療の提供を推進するための評価のあり方についてどのように考えるか。
・ 回復期入院医療について、在宅患者等に対する救急医療を含め、地域包括ケア病棟に求められる役割やその評価のあり方及び回復期リハビリテーション病棟における質の高いリハビリテーションを推進するための評価のあり方についてどのように考えるか。
8月30日に開催された中医協では、次期改定の論点等に関する議論を整理した「令和6年度診療報酬改定に向けた議論の概要」が公開された。急性期および回復期入院医療に関しては、論点として下記を挙げている。そのまま読み取れば、一般病棟入院基本料、地域包括ケア病棟入院料の施設基準の見直し、誘導するためのインセンティブないしディスインセンティブの設定が議論されるのだろう。
・ 急性期入院医療について、高齢者の救急搬送件数の増加等を踏まえ、急性期病棟と地域包括ケア病棟に求める役割・機能について及びこれらの機能分化を促進し、個々の患者の状態に応じた適切な医療資源が投入される効率的かつ質の高い入院医療の提供を推進するための評価のあり方についてどのように考えるか。
・ 回復期入院医療について、在宅患者等に対する救急医療を含め、地域包括ケア病棟に求められる役割やその評価のあり方及び回復期リハビリテーション病棟における質の高いリハビリテーションを推進するための評価のあり方についてどのように考えるか。
■緊急入院患者の受け入れ状況の差は?
救急医療に関しては、地域包括ケア病棟への救急搬送の受け入れが評価のあり方のテーマになっている。8月10日の中医協では、救急搬送後に地域包括ケア病棟に直接入棟した患者の主傷病は、誤嚥性肺炎、尿路感染症、腰椎圧迫骨折がトップ3として示された。これらの疾患は言うまでもなく一般病棟にも多く入院している。
今回は令和3年度「退院患者調査」より、これら3疾患を医療資源病名とする最も件数の多い診断群分類を抽出して、DPC対象病院、出来高算定病院(DPC準備病院を含む)における救急車搬送入院ならびに救急医療入院の割合を確認した。なお診断群分類は、誤嚥性肺炎(040081x x99x0x x)、尿路感染症(110310xx99xxxx)、腰椎圧迫骨折(160690xx99xxxx)となり、いずれも「手術なし」で、かつ誤嚥性肺炎は「手術・処置等2なし(人工呼吸なし)」に該当する場合である。ただし、退院患者調査では一般病棟以外の病棟に入院した患者(DPC対象病棟とならない入院料を算定した患者)は分析対象から除外されるため、地域包括ケア病棟に入棟した患者はここに含まれない。
図の通り、DPC対象病院と出来高算定病院を比較すると、救急車による搬送後の入院、救急医療入院の割合ともにDPC対象病院の方が高い。同じ疾患であっても、DPC対象病院の方が、急性期度合いの高いケースが多いのだろう。誤嚥性肺炎や圧迫骨折では、救急車搬送による入院割合が2倍以上の高い。逆に言えば、出来高算定病院では、外来からの入院、救急医療管理加算の対象にならない程度の病状のケースが多いということが見えてくる。
今回は令和3年度「退院患者調査」より、これら3疾患を医療資源病名とする最も件数の多い診断群分類を抽出して、DPC対象病院、出来高算定病院(DPC準備病院を含む)における救急車搬送入院ならびに救急医療入院の割合を確認した。なお診断群分類は、誤嚥性肺炎(040081x x99x0x x)、尿路感染症(110310xx99xxxx)、腰椎圧迫骨折(160690xx99xxxx)となり、いずれも「手術なし」で、かつ誤嚥性肺炎は「手術・処置等2なし(人工呼吸なし)」に該当する場合である。ただし、退院患者調査では一般病棟以外の病棟に入院した患者(DPC対象病棟とならない入院料を算定した患者)は分析対象から除外されるため、地域包括ケア病棟に入棟した患者はここに含まれない。
図の通り、DPC対象病院と出来高算定病院を比較すると、救急車による搬送後の入院、救急医療入院の割合ともにDPC対象病院の方が高い。同じ疾患であっても、DPC対象病院の方が、急性期度合いの高いケースが多いのだろう。誤嚥性肺炎や圧迫骨折では、救急車搬送による入院割合が2倍以上の高い。逆に言えば、出来高算定病院では、外来からの入院、救急医療管理加算の対象にならない程度の病状のケースが多いということが見えてくる。
■病床管理の運用見直しが必要になる
地域包括ケア病棟には、在宅患者の緊急時の受け入れが求められている。ただし、緊急入院にかかるインセンティブは大きくない。
地域包括ケア病棟に直接入棟した場合、現状では在宅患者支援病床初期加算として、介護老人保健施設からの直接入棟で500点、自宅等の場合は400点を14日間算定できる。ただし、緊急入院では入院初期に検査や画像診断が必要となるため、入院料を超える包括範囲医療資源投入量が必要になるが、救急医療管理加算の算定はできない。
そのため、まずは一般病棟に入院して、病状が落ち着いてから地域包括ケア病棟に転棟させる方が、経営上のメリットが生じるケースが多い。一般病棟を持たない病院では、緊急入院の患者をすべて地域包括ケア病棟で受け入れることになるが、ここへの不安が病床再編に尻込みする要因の1つになっている。政策的に地域包括ケア病棟への緊急入院を求めるのであれば、インセンティブをどのようにつけるか注目する点だ。
そして急性期病床にとっても対岸の火事ではない。地域包括ケア病棟への救急患者の受け入れ増加は、急性期病床の稼働率の低下につながる。
大都市圏は病院間の機能分化を進めるドライバーになるかもしれないが、医療機関が限られる地域では、中核病院があらゆる機能を担っていることが多く、病床管理が複雑になる可能性がある。また200床以上の病院では、自院の一般病棟から地域包括ケア病棟への入棟割合を6割未満にしないと減算される、いわゆる6割未満ルールがあるため、改定の内容によっては、病床管理を見直す選択を迫られることになるかもしれない。
【2023. 10. 1 Vol.577 医業情報ダイジェスト】
地域包括ケア病棟に直接入棟した場合、現状では在宅患者支援病床初期加算として、介護老人保健施設からの直接入棟で500点、自宅等の場合は400点を14日間算定できる。ただし、緊急入院では入院初期に検査や画像診断が必要となるため、入院料を超える包括範囲医療資源投入量が必要になるが、救急医療管理加算の算定はできない。
そのため、まずは一般病棟に入院して、病状が落ち着いてから地域包括ケア病棟に転棟させる方が、経営上のメリットが生じるケースが多い。一般病棟を持たない病院では、緊急入院の患者をすべて地域包括ケア病棟で受け入れることになるが、ここへの不安が病床再編に尻込みする要因の1つになっている。政策的に地域包括ケア病棟への緊急入院を求めるのであれば、インセンティブをどのようにつけるか注目する点だ。
そして急性期病床にとっても対岸の火事ではない。地域包括ケア病棟への救急患者の受け入れ増加は、急性期病床の稼働率の低下につながる。
大都市圏は病院間の機能分化を進めるドライバーになるかもしれないが、医療機関が限られる地域では、中核病院があらゆる機能を担っていることが多く、病床管理が複雑になる可能性がある。また200床以上の病院では、自院の一般病棟から地域包括ケア病棟への入棟割合を6割未満にしないと減算される、いわゆる6割未満ルールがあるため、改定の内容によっては、病床管理を見直す選択を迫られることになるかもしれない。
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