診療報酬

脳卒中ケアユニットは持つべきか 早期介入への適正評価の観点で考える

早期介入の取り組みが最大限評価されるSCU
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■脳卒中ケアユニットは着実に増えている

2006年度診療報酬改定で新設された脳卒中ケアユニット入院医療管理料について、届出施設数と病床数の推移を見た=グラフ1=。その歩みはゆっくりではあるものの、着実に増え続けていることがわかる。脳卒中ケアユニット入院医療管理料は、高い診療報酬に呼応して施設数・病床数が急増するような誘導的な入院料と異なる。なぜなら、まず入院できる疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に限定されるため、これらの疾患を多く診ていないことには病床の必要性がない。また、救命救急入院料や特定集中治療室管理料、ハイケアユニットなどの他の入院料の病床を持っている場合には、診療報酬上の大きな魅力がないことも少なからず影響しているだろう。
そこで、急増はしないものの着実に増えている脳卒中ケアユニット(以降、SCU)を持つことについて、2024年度診療報酬改定の議論も踏まえつつ考えてみる。

グラフ1 SCUの届出施設数・病床数推移
2022年まで:中央社会保険医療協議会 資料「主な施設基準の届出状況等」を基に作成
2023年: 各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2023年10月または11月現在)を基に作成

■3床だけでも届出すべきなのか

直近のSCUの届出施設における施設ごとの病床数の分布を見た=グラフ2=。6床が多く、それ以外では12床、9床、3床と、いずれも3の倍数が多い。これは看護師の配置基準が3対1以上であるため当然の結果と言える。

グラフ2 SCUの届出病床数(施設ごと)

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2023年10月または11月現在)を基に作成

自院でSCUの新設・届出を検討するケースを想定する。3の倍数が効率的であることはわかったとして、3床にすべきか、6床にすべきか、実際の病床数を決定するには、対象患者数やハード要件が大事になる。このとき、グラフ2で着目してほしいことは、3床の施設がそれなりに多いことである。
SCUの届出をしている施設の総病床数と、SCUの届出病床数の関係を見た=グラフ3=。総病床数50 0床以上の施設では、SCUを7床以上持つ施設数が多い。とは言え、比率で見れば、100床台、200床台なども7床以上持つ施設割合が高い。総病床数とSCUの病床数にはあまり関係がないと考えるべきだろう。また、3床で届出している施設を見ると、総病床数によらず、どの病床規模でも一定数存在している。

グラフ3 脳卒中ケアユニットの届出病床数と総病床数の関係

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2023年10月または11月現在)を基に作成

つまり、脳卒中の患者が一定ボリュームいれば、3床でも持つことが合理的と考えているものと思われる。「たった3床だから持たない」ではなく、「わずか3床でも持つ」の他院の戦略は参考にすべきだろう。

■早期介入の取り組みが最大限評価されるSCU

2018年度改定でICUの入室患者を対象に新設された早期離床・リハビリテーション加算は、2022年度改定で、HCUやSCUなどに対象拡大された。また同様に2020年度改定で新設されたICU対象の早期栄養介入管理加算も2022年度改定でSCUなどに対象拡大された。早期離床・介入の取り組みを強化することの重要性は、ICUやHCU、SCUのみならず急性期病床全般の共通事項であり、個人的には2024年度改定でのさらなる評価拡充に期待している。
現状、早期離床・介入の取り組みに対する診療報酬による直接的な評価は、ICUやHCU、SCUに限られている。逆手に取れば、適正な評価を受けるには、ICUやHCU、SCUが有利であると考えられる。実際、SCUの3割以上が早期栄養介入管理加算の届出を行っており、届出施設にはSCUが3床しかない施設も複数含まれている=グラフ4=。なお、早期離床・リハビリテーション加算は、疾患別リハの点数の方が有利と考える施設が少なくないため、SCUでの届出割合は1割弱にとどまっている。

グラフ4 SCUにおける早期介入関連加算の届出施設割合 

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2023年10月または11月現在)を基に作成

SCUの使い勝手は看護必要度の要件など2024 年度改定の動向にも左右される。そのため、脳卒中の患者を受け入れていれば、どの病院でも持つべきと単純に考えることはできない。しかし、SCUを持たない施設でも、早期介入の取り組み強化を図りつつ、今後の改定議論の動向を注視し、今後の作戦を練ることが有用と考えている。


【2023. 12. 15 Vol.582 医業情報ダイジェスト】