診療報酬
新設の地域包括医療病棟は回復期なのか
2024年改定は新入院料創設の超メジャー改定である
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ 2024年改定は新入院料創設の超メジャー改定である
2024年度診療報酬改定の告示・通知が3月5日に行われて全貌が明らかになった。あとは現時点での不明点等が3月末からの五月雨式で事務連絡(Q&A)が発出されていく。ただし、2024年改定がいつもと違う点は、政府の医療DX推進本部が中医協に対して電子カルテベンダーの働き方改革のために申し入れて、新点数施行時期を4月ではなく、6月実施へ2ヶ月後ろ倒ししたことだ。前回改定時の「事務連絡その1」は3月31日の17時過ぎに156ページが一気に発出された。その時に判明したことがわずか6時間後の4月1日の新点数適応までに、レセプトコンピューターのプログラム変更は到底間に合わなかった。今回はいつもよりも余裕があるが、看護必要度等における6ヶ月間の経過措置は9月末までなので要注意だ。
1982年の都内総合病院入職以来、42年間に渡り、診療報酬改定を見てきているが、今回はその中でもトップクラスの超メジャー改定である。過去を振り返ると介護保険制度(介護報酬)が創設された2000年度改定、小泉内閣下で▲3.16%という大幅マイナス改定の中で7対1入院基本料(当時)が新設された2006年度改定を凌駕する内容になっている。筆者の定義は、病院経営収入の6〜7割を占める入院料に新基準ができた場合をメジャー改定としているが、今回は地域包括医療病棟入院料がその要件を満たしている。
地域包括医療病棟入院料は高齢救急患者等に一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供する病棟への評価で、看護配置は10対1となる。昨年12月末の中医協総会で突然に登場してきて、本年2月14日の答申までに正月休みを挟んで十分な議論もないままに点数化されてしまった。
1982年の都内総合病院入職以来、42年間に渡り、診療報酬改定を見てきているが、今回はその中でもトップクラスの超メジャー改定である。過去を振り返ると介護保険制度(介護報酬)が創設された2000年度改定、小泉内閣下で▲3.16%という大幅マイナス改定の中で7対1入院基本料(当時)が新設された2006年度改定を凌駕する内容になっている。筆者の定義は、病院経営収入の6〜7割を占める入院料に新基準ができた場合をメジャー改定としているが、今回は地域包括医療病棟入院料がその要件を満たしている。
地域包括医療病棟入院料は高齢救急患者等に一定の体制を整えた上でリハビリテーション、栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に提供する病棟への評価で、看護配置は10対1となる。昨年12月末の中医協総会で突然に登場してきて、本年2月14日の答申までに正月休みを挟んで十分な議論もないままに点数化されてしまった。
■ 地域包括医療病棟入院料は用意周到だったのではという勝手な推測
中医協では高齢者の「誤嚥性肺炎」「市中肺炎」「尿路感染症」「圧迫骨折」「慢性心不全」などの疾患は三次・二次医療機関の急性一般入院料1(7対1)病棟よりも地域包括ケア病棟(以下、地ケア)が望ましいのではという議論がなされており、様々なデータも出されていた。筆者も地ケアにおいて救急受け入れ機能を評価した加算を創設して対応すると思っていた。実際に改定では地ケアに救急搬送された患者に対する在宅患者支援病床初期加算の点数アップがあった。
しかし、昨年12月末の中医協で新たな入院料として、地域包括医療病棟入院料が登場してきたのには驚いた。理由は地ケアの看護配置は13対1であり、高齢者救急患者には10対1看護でないと対応できないだった。そうは言っても地ケアにおいて看護職員配置加算(50対1)を算定すれば実質10対1になり、多くの地ケアでは同加算の届出を行っている。
なぜか、その件は中医協の議論では完全無視されていた。うがった見方をすれば、最初から地域包括医療病棟は用意しており、あえて年末に提出する作戦だったのではと勝手に推測する。会議の議題で一番、紛糾しそうなものはあえて最後にする。最初だと延々と議論が続くからであり、皆が疲れた最後に議題として登場させ、成立させようとする手法である。
しかし、昨年12月末の中医協で新たな入院料として、地域包括医療病棟入院料が登場してきたのには驚いた。理由は地ケアの看護配置は13対1であり、高齢者救急患者には10対1看護でないと対応できないだった。そうは言っても地ケアにおいて看護職員配置加算(50対1)を算定すれば実質10対1になり、多くの地ケアでは同加算の届出を行っている。
なぜか、その件は中医協の議論では完全無視されていた。うがった見方をすれば、最初から地域包括医療病棟は用意しており、あえて年末に提出する作戦だったのではと勝手に推測する。会議の議題で一番、紛糾しそうなものはあえて最後にする。最初だと延々と議論が続くからであり、皆が疲れた最後に議題として登場させ、成立させようとする手法である。
■ 地域包括医療病棟は「急性期」「回復期」のどちらに該当するのか
答申書の次回改定以降に向けて検討すべき附帯意見では「地域包括医療病棟の新設に伴い、10対1の急性期一般病棟については、その入院機能を明確にした上で、再編を含め評価の在り方を検討すること」と明記された。入院料1のステップダウン用の暫定的な2、3の廃止は既成ルートである。入院料4(10対1)以降は数回の改定を経て新設の地域包括医療病棟入院料へ統合する。それ以外は地ケアという未来の3類型(急性期一般入院料1、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟)を示唆しているのだろう。
地域包括医療病棟は病床機能報告の「急性期」と「回復期」のどちらに該当するのか。日本医療企画「フェィズ3」2024年3月号で日本病院会会長、相澤病院の相澤孝夫理事長は連載「Dr.相澤の医事放談」で「地域包括医療病棟は『回復期』と認識する」「4週間の入院患者であっても、急性期といえるのは入院初期の4〜5日であとは回復期、要するに『大半は回復期』という考え方なのです」と書いている。
現在、病床機能報告において地ケアは「急性期」「回復期」のどちらでも報告可能になっている。実際は「急性期」での報告は2割程度しかない。病床機能報告は毎年10月のため、あるタイミングで地ケアの機能の報告は「回復期」1本にすることは不可能ではない。
2024年以降に増加していくと思われる地域包括医療病棟と既存の地ケアが病床機能報告において「回復期」1本での報告となると、回復期が足りないという問題が解消される。地域医療構想の当初のフィニッシュとされた2025年に間に合わせるのは難しいが、例の病床数がワイングラス型から砲弾型への転換が進んでいくことになるわけだ。さらに2024年改定の「4つの基本的視点について」の視点2に「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化」とあるため、2040年の高齢者多死社会ピークに向けて医療政策は舵が切られた。
【2024. 4. 1 Vol.589 医業情報ダイジェスト】
地域包括医療病棟は病床機能報告の「急性期」と「回復期」のどちらに該当するのか。日本医療企画「フェィズ3」2024年3月号で日本病院会会長、相澤病院の相澤孝夫理事長は連載「Dr.相澤の医事放談」で「地域包括医療病棟は『回復期』と認識する」「4週間の入院患者であっても、急性期といえるのは入院初期の4〜5日であとは回復期、要するに『大半は回復期』という考え方なのです」と書いている。
現在、病床機能報告において地ケアは「急性期」「回復期」のどちらでも報告可能になっている。実際は「急性期」での報告は2割程度しかない。病床機能報告は毎年10月のため、あるタイミングで地ケアの機能の報告は「回復期」1本にすることは不可能ではない。
2024年以降に増加していくと思われる地域包括医療病棟と既存の地ケアが病床機能報告において「回復期」1本での報告となると、回復期が足りないという問題が解消される。地域医療構想の当初のフィニッシュとされた2025年に間に合わせるのは難しいが、例の病床数がワイングラス型から砲弾型への転換が進んでいくことになるわけだ。さらに2024年改定の「4つの基本的視点について」の視点2に「ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化」とあるため、2040年の高齢者多死社会ピークに向けて医療政策は舵が切られた。
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