診療報酬

DX時代の在宅医療が外来在宅共同指導料

医療DXに関して日経新聞は様々な提言を実施
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■医療DXに関して日経新聞は様々な提言を実施

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは経済産業省によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」されている。医療のDXについて様々な提言を行っているのが日本経済新聞である。
2022年6月20日付電子版の朝刊一面では「デジタル医療を成長の原動力に」として、政府・地方自治体が保険医療機関にガバナンスを働かせる仕組みと、デジタル技術を活用して医療体制を再構築する「ヘルスケア・トランスフォーメーション」(HCX)がその核とした記事を掲載している。日経新聞は「本来、医療サービスとデジタル技術は相性がよいはずだが、日本はこの分野で大きく後れを取った」として「オンライン診療一つをとっても、いまだに標準的な医療サービスとして普及していない。また、健康保険証のデータをマイナンバーカードに載せ、各人の検査・医療データを医師がオンラインで確認できるようにするマイナカード保険証(マイナ保険証)は、病院・診療所や調剤薬局の対応がきわめて鈍く、現状では国民へのメリットがないにひとしい」と指摘する。

■ リフィルもそうだが「蟻の一穴」が空いたことの意義が大きい

日経新聞のご指摘はごもっともであり、2022年改定がまさしくDX元年と言っていいのではないだろうか。その象徴として厚労省の指針に基づいて医師が情報通信機器を用いて初診を行った場合の恒久的な評価として初診料(251点)が新設された。これまでもオンライン初診はあったが、あくまでもコロナ禍における特例措置であった。従来の再診にあたるオンライン診療料(月1回71点)は廃止して、新たにオンラインにおける再診料73点(診療所と200床未満病院)と外来診療料73点(200床以上病院)を新設した。改定前はオンライン診療として別建てだった診療報酬を通常の初・再診料や医学管理料のなかに「情報通信機器を用いた場合」として組み込んだわけだ。別建てを一本化した意義は大きい。
また、オンライン資格確認システムの活用に対して、初診、再診、外来診療料に「電子的保健医療情報活用加算」を新設している。ここがすぐに拡大しないことに日経新聞や財務省、経産省はジレンマを感じているようだが、「ジェネリック」という名称が一般語になるまでどれだけの時間がかかっただろうか。改定で新設された1枚の処方箋を3回まで反復利用できる「リフィル処方箋」も本年4月から一気に拡大することはない。ただし、「蟻の一穴」が空いた意義が大きいことは過去の当連載で述べた。あとは患者さんによるニーズと医療機関に対するインセンティブで徐々に拡大していくのは時間の問題である。

■ 外来在宅共同指導料2は最初からリモートでも可能とされた

新設された「外来在宅共同指導料」は継続的に外来受診している患者が在宅医療に移行する際に、外来担当医と他院の在宅担当医が連携して指導等を行った場合に、外来担当の保険医療機関、在宅担当の保険医療機関でそれぞれ算定する点数である。「外来在宅共同指導料1 400点(在宅医療を担う医療機関)」、「外来在宅共同指導料2 600点」(これまで外来医療を担っていた医療機関)となっている。スムーズな在宅移行のための共同指導を評価したものだ。
たとえば急性期医療を担い、在宅医療は行っていないA医療機関を継続的に4回以上受診している外来患者に在宅医療が必要になったとする。それまでは外来通院していたが、高齢化にともなって通院できなくなり、在宅医療に移行するケースだ。その場合、B医療機関に当該患者を逆紹介して、在宅で共同指導した場合にB医療機関は1の400点、A医療機関は2の600点を算定できる。ともに患者1人につき1回に限りの算定となっている。
特徴的な点は、共同指導と言ってもA医療機関の医師はB医療機関の医師と一緒に必ずしも患者宅を訪問する必要はなく、情報通信機器(リモート)でも良いとされたことだ。確かに忙しい医師同士がスケジュールを合わせての同時訪問は難しい。問題はリモート操作であるが、これも患者家族が行うわけではなく、B医療機関側の医師が患者宅から繋ぐことになるので通信障害リスクも低くなる。外来在宅共同指導料2が最初からリモートでも良いとされたことは、まさしくDX(デジタルトランスフォーメーション)時代の在宅医療であろう。こうして時間をかけて緩やかに蟻の一穴は大きくなっていく。幹線道路の崩落のように一気に穴が開くわけではない。


【2022. 7. 15 Vol.548 医業情報ダイジェスト】