診療報酬

管理栄養士業務は病院給食管理から臨床栄養管理へシフト

診療報酬改定でも栄養関連は大きく評価
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■ 昨年の介護報酬改定に続いて診療報酬改定でも栄養関連は大きく評価

本年4月の2022年度診療報酬改定において管理栄養士関連は次のような点数の新設や変更があった。
 
【主な管理栄養士関連の変更項目】
① 入院栄養管理体制加算(新設)(病棟における栄養管理体制の評価)
② 早期栄養介入管理加算の見直し
③ 周術期栄養管理実施加算(新設)
④ 外来栄養食事指導料の見直し(情報通信機器の活用)
⑤ 外来栄養食事指導料の見直し(外来化学療法に係る栄養管理の評価)
⑥ 栄養サポートチーム加算の見直し
 
特定機能病院に限定ではあるが①入院栄養管理体制加算として、管理栄養士の病棟配置による患者の病態・状態に応じた栄養管理が評価された。これは画期的な点数であり、今後の改定で一般病院への拡大も予測される。②は特定集中治療室等入室後早期の栄養管理について、経腸栄養の開始の有無に応じた評価に見直し、③は管理栄養士が行う周術期に必要な栄養管理について、新たな評価を行ったものだ。
改定では初診、再診、在宅医療等においてオンライン診療が大きく拡大された。同様に④外来栄養食事指導料の見直しとして、これまで同指導料1の2回目以降に限定されていたオンラインの栄養食事指導料が、同指導料1、2ともに初回から情報通信機器等を用いた場合の栄養食事指導が算定可能となった。
⑤は外来化学療法を実施しているがん患者に対して、専門的な知識を有する管理栄養士が指導を行った場合の評価を新設、⑥は障害者等施設入院基本料において栄養サポートチーム加算が算定できるようになった。

■病院給食外注化率は2018年度で70.3%

このように医療機関や介護施設において管理栄養士の役割はますます重要になっている。本年3月に公表された第36回管理栄養士国家試験の合格発表によると受験者数16,426名のうち合格者数は10,692名、合格率は65.1%だった。 医師や看護師の国家試験合格率が9割強であるのに比べると低いが、4年制大学の管理栄養士養成課程(新卒)に限定すると合格率は91.6%と高くなる。同(既卒)や栄養士から実務経験を経て受験する栄養士養成課程 (既卒)の合格率が低いために全体としては6割台になるわけだ。

これまでの管理栄養士の重要な仕事は「病院給食管理」であった。しかし、最近は介護報酬や診療報酬の改定を見てもわかるように「臨床栄養管理」にシフトしている。筆者は従来から、病院給食は自前ではなく外部委託論者である。日本医療サービス振興会の調査によると病院給食外注化率は2018年度で70.3%となっている。委託化で院内の管理栄養士は栄養管理計画、栄養指導、NST業務等の臨床業務に専念できる体制になり、給食部門は委託会社の管理栄養士へと業務のタスクシフティングが可能になる。

しかし、外部委託をしない病院の最大の理由は、自前による食事の「質の管理」だ。1日当たりの入院時食事療養費(Ⅰ)は1,920円(1食当たり640円)であるが、高い質を求めた食事提供は自前だと採算度外視で可能になる。一方、給食委託会社は企業として利益も出す必要があるため、必然的に病院自前と比較すると食事の質は下がってしまう。

■日本栄養士会会長も「給食は委託へ」と筆者と同じ考え

かつて給食部門の外部委託化はコスト削減が大きな目的であった。しかし、最近の厚労省調査によると人件費や食材費の高騰等で全面委託の場合でも収支は悪くなっている。つまり、給食部門の外部委託化の目的は、単なる「コスト削減」から管理栄養士が臨床業務に専念して医療の質と栄養指導等によって労働生産性を上げるための「医療の質向上と収入増加」へとシフトしている。

ただし、病院給食の質にこだわる管理栄養士は多く、その結果として臨床栄養管理業務がおろそかになっている病院も多い。その件で筆者はよく栄養科責任者と衝突をする。これについては公益社団法人日本栄養士会会長、神奈川県立保健福祉大学学長である中村丁次氏が(株)保健・医療・福祉サービス研究会Visionと戦略」2022年5月号において、「これまで日本の病院における管理栄養士・栄養士は病診給食の運営が主な業務でした。しかし、栄養管理により在院日数が短くなり、急性期における静脈栄養や経腸栄養が確立するなか、病院給食のみにしがみついていたのでは、管理栄養士・栄養士に将来がありません。(中略)管理栄養士は病棟で医療職種としての業務を果たす一方で、給食に関しては業者に委託していく。つまり、病院や施設における給食のマネジメントと、臨床の栄養管理部門が専門化し、連携していく必要があります」と述べている。筆者が言うと説得力がないが、日本栄養士会会長が言うとやはり違う。


【2022. 8. 15 Vol.550 医業情報ダイジェスト】