組織・人材育成
私生活で手一杯なスタッフとの向き合い方
仕事の場がより充実した場になる工夫
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
新しい年がはじまりました!皆さまにとってどんな年にしたいですか?リーダーとしては、スタッフにとって職場以外のプライベートな時間も幸せな時を過ごしてほしいと願っていると思います。しかしながら、どんな人でもご家族の介護や私生活での変化などの事情により思うような時間を過ごせなくなることもあるものですね。今回は、そんな私生活が思うように回らないことが職場での動きに影響してしまうスタッフとのかかわりについて学びを深めていきたいと思います。
ケース 1
関東の北にあるクリニックのお話です。このクリニックで働く看護師のAさんは勤続10年以上であり、中学生の1人娘を持つお母さんです。お父さんは仕事が忙しく家を留守にしがちであり、家庭でのAさんは娘aさんと共に過ごす時間をなるべく取れるように気にかけつつも、このクリニックの主力メンバーとして活躍されていました。周りのスタッフにも子育て世代が多く、休憩室ではAさんをはじめスタッフはそれぞれ家庭での幸せな出来事の共有や悩み事を打ち明け合っていたと言います。
ある日、Aさんが非常に疲れた顔で出勤してきました。Aさんの娘aさんが学校に行くことを拒むようになり、出勤前から大きな喧嘩をしてしまったとのこと。Aさんの大変な落ち込みように周りのスタッフは一生懸命に励ましの声を掛けますが、Aさんの耳には入っていない様子。この日からAさんの仕事内容に雑さが見られるようになっていったのですが、周りのスタッフは 「今は家庭が大変だから」 と声を掛けられずにいました。
とある日、Aさんは職場で大きなミスをしてしまいました。患者さんにも影響の出てしまったアクシデントでしたが、Aさんはなぜかむくれ顔。
Aさん 「私は家庭で手一杯な状況であることを分かっているはずなのに……(怒)」
上記を筆者に報告された院長先生は、 「この状況は仕方がないのでしょうか。強く指摘することもできませんし……」 と逡巡されていました。
このケース、どのような感想を持ちましたか?このとき筆者は、もう一つのクリニックのケースをこの院長先生に紹介したのでした。
ある日、Aさんが非常に疲れた顔で出勤してきました。Aさんの娘aさんが学校に行くことを拒むようになり、出勤前から大きな喧嘩をしてしまったとのこと。Aさんの大変な落ち込みように周りのスタッフは一生懸命に励ましの声を掛けますが、Aさんの耳には入っていない様子。この日からAさんの仕事内容に雑さが見られるようになっていったのですが、周りのスタッフは 「今は家庭が大変だから」 と声を掛けられずにいました。
とある日、Aさんは職場で大きなミスをしてしまいました。患者さんにも影響の出てしまったアクシデントでしたが、Aさんはなぜかむくれ顔。
Aさん 「私は家庭で手一杯な状況であることを分かっているはずなのに……(怒)」
上記を筆者に報告された院長先生は、 「この状況は仕方がないのでしょうか。強く指摘することもできませんし……」 と逡巡されていました。
このケース、どのような感想を持ちましたか?このとき筆者は、もう一つのクリニックのケースをこの院長先生に紹介したのでした。
ケース 2
関東の南にあるクリニックで働くB医師のお話です。この先生は小さな息子さん2人のお母さん。医師になってすぐに妊娠が判明し出産したため医師の経験が浅いまま職場復帰することに不安が強かったそうですが、今では働いているクリニックの院長先生に大変感謝していると言います。
B医師 「このクリニックで働いている自分がすごく好きなのです。社会とのつながりを感じられ、少しでも誰かのお役に立てている自分を認めることができて。変な言い方かもしれませんが、仕事でリフレッシュしていますし 『母親業』 から離れて息抜きができています。母親業は子供や夫、親などの言動に振り回されてしまうことも多いのですが、どんなことでも自分次第である仕事をしている自分にとても遣り甲斐を感じています。仕事をしているので以前より疲れは確かにありますが、ずっと家庭にいるよりも私にとっては良いと思います。 『お母さんが優しくなった』 と5歳の子供に言われた時にハッと気が付きました」
このクリニックの院長先生は、スタッフが公私ともに幸せであることを願っているため、スタッフとどうしたら仕事の時間が充実するか一生懸命に考える場として勉強会を定期的に行っています。
院長先生 「仕事の場で家庭の愚痴を言って、家庭で仕事の愚痴を言うような、そんなスタッフを育てたいのではありません。他のクリニックの院長先生なら 『そんな1円にもならない無駄なこと何でやっているんだ』 と言われるかも知れませんが、① 自分が誇らしいと思った行動、② 誰かの誇らしいと思った行動、③ 明日もっと良いクリニックになるための一言、について徹底的に言葉に出すことをお願いしています。最初は本当に呆れた表情で誰も話に参加してくれなかったのですが、少しずつスタッフからも発言が見られるようになり、お互いに認め合い高め合える組織を目指せるようになってきたと思います。まだまだ発展途上中ですが、私は良い組織作りを諦めませんよ!」
何かトラブルが起こった時に対応するとなると、場当たり的な対応になり、また同じことが繰り返されることは多くあります。ケース1の場合、まずはAさんに対するフォローアップとして、仕事に集中できない可能性が高い状況であれば一定期間仕事をお休みすることが必要になると考えられます。ただ、ケース2のように仕事の場がスタッフ一人ひとりの居場所となることで、仕事の場を大切に過ごそうと思えるような人材教育を行うことは、中長期的な視野を持つと重要なことではないかと考えます。
皆さまの組織でも、仕事の場がより充実した場になるような工夫について話し合われてみてはいかがでしょうか?
【2025. 1. 1 Vol.607 医業情報ダイジェスト】
B医師 「このクリニックで働いている自分がすごく好きなのです。社会とのつながりを感じられ、少しでも誰かのお役に立てている自分を認めることができて。変な言い方かもしれませんが、仕事でリフレッシュしていますし 『母親業』 から離れて息抜きができています。母親業は子供や夫、親などの言動に振り回されてしまうことも多いのですが、どんなことでも自分次第である仕事をしている自分にとても遣り甲斐を感じています。仕事をしているので以前より疲れは確かにありますが、ずっと家庭にいるよりも私にとっては良いと思います。 『お母さんが優しくなった』 と5歳の子供に言われた時にハッと気が付きました」
このクリニックの院長先生は、スタッフが公私ともに幸せであることを願っているため、スタッフとどうしたら仕事の時間が充実するか一生懸命に考える場として勉強会を定期的に行っています。
院長先生 「仕事の場で家庭の愚痴を言って、家庭で仕事の愚痴を言うような、そんなスタッフを育てたいのではありません。他のクリニックの院長先生なら 『そんな1円にもならない無駄なこと何でやっているんだ』 と言われるかも知れませんが、① 自分が誇らしいと思った行動、② 誰かの誇らしいと思った行動、③ 明日もっと良いクリニックになるための一言、について徹底的に言葉に出すことをお願いしています。最初は本当に呆れた表情で誰も話に参加してくれなかったのですが、少しずつスタッフからも発言が見られるようになり、お互いに認め合い高め合える組織を目指せるようになってきたと思います。まだまだ発展途上中ですが、私は良い組織作りを諦めませんよ!」
何かトラブルが起こった時に対応するとなると、場当たり的な対応になり、また同じことが繰り返されることは多くあります。ケース1の場合、まずはAさんに対するフォローアップとして、仕事に集中できない可能性が高い状況であれば一定期間仕事をお休みすることが必要になると考えられます。ただ、ケース2のように仕事の場がスタッフ一人ひとりの居場所となることで、仕事の場を大切に過ごそうと思えるような人材教育を行うことは、中長期的な視野を持つと重要なことではないかと考えます。
皆さまの組織でも、仕事の場がより充実した場になるような工夫について話し合われてみてはいかがでしょうか?
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