診療報酬

2022年改定の主な新設項目を俯瞰する

急性期充実体制加算届出は156件と少ない
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■急性期充実体制加算届出は156件と少ない

2022年診療報酬改定から半年が過ぎた。新設された主な改定新設届出項目について地方厚生局データからの届出状況を検証してみたい。

【2022年改定の主な新設項目と届出件数】
  1.  急性期充実体制加算 156件
  2. 周術期薬剤管理加算 231件
  3. 二次性骨折予防継続管理料 管理料(1)1558件, 管理料(2)1272件 , 管理料(3)3164件
  4. 報告書管理体制加算 339件
  5. 術後疼痛管理チーム加算 28件
  6. 周術期栄養管理実施加算 238件
  7. 重症患者初期支援充実加算 422件
(2022年8月1日現在は北海道、東海北陸、近畿、中国、四国厚生局、2022年7月1日現在は東北、関東甲信越厚生局)

急性期病院における改定の大きな目玉と言えるのが①急性期充実体制加算である。その要件は全身麻酔手術2,000件以上(そのうち緊急手術350件以上)実績等、限りなく高いハードルになっている。そのため全国でも156件と少なく、これ以上は爆発的に増加することもないだろう。とくに敷地内薬局を持っていると届出不可になったことがネックで届出できていない病院も多い。敷地内薬局を快く思っていなかった厚労省の後出しジャンケンである。

■点数の高低という「主婦(主夫)的感覚」でインフラ(基盤整備)点数は判断しない

麻酔管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の加算が、薬剤師の周術期における薬学的管理を評価した②周術期薬剤管理加算231件である。これもまだまだ少ないが、医師の働き方改革を進める上で薬剤師へのタスクシフティングは重要な課題である。そのためには薬剤師定員増を図る必要がある。
①〜⑦の中で最もハードルが低いのが、大腿骨近位部骨折の患者に対して、関係学会のガイドラインに沿って継続的に骨粗鬆症の評価を行い、必要な治療等を実施した場合の「二次性骨折予防継続管理料」である。届出件数も手術を行う医療機関の管理料(1)1558件、転院患者にリハビリを行う医療機関の管理料2)1272件、外来でフォローする管理料(3)3164件で合計5994件(重複あり)と最も多い。

このように管理料(1)〜(3)は急性期から回復期の病棟、急性期・回復期の病棟から外来へと連携しながら、それぞれで骨粗鬆症治療を評価・継続することが求められている。重要な点は手術治療を行う医療機関が(1)を届け出ていないと、連携する(2)(3)の医療機関が算定要件となる適切な評価及び治療効果の判定等、必要な治療を継続して実施しても算定できない点である。
画像診断・病理診断報告書の確認漏れ等対策を講じて、診断または治療期間の遅延防止体制を評価したのが④報告書管理体制加算339件である。退院時1回7点と点数が低いので届出しないといった病院も見られたが、結果見落としのリスクマネジメントを評価した医療安全のインフラ(基盤整備)点数である。いまだに診療報酬を「主婦(主夫)的感覚」で点数の高低で見るコンサルタントがいるが、それは大きな間違いである。見落とし防止体制を取っていた病院に点数が付き、そのような体制がない病院はしっかりと構築しなさいというメッセージ性が強い加算である。結果見落としがあった際に最も被害を被るのは患者さんだ。

■ 管理栄養士は病院限定的に周術期と病棟配置を評価した

麻酔科医師、看護師、薬剤師の多職種で構成されたチームで全身麻酔後の患者さんへ質の高い術後疼痛管理を実施した場合に算定できるのが、⑤術後疼痛管理チーム加算28件である。看護師、薬剤師、臨床工学技師(配置が望ましい要件)は術後疼痛管理にかかわる研修を修了していることが要件である。しかし、研修要件ハードルが高いために全国でも届出件数は28件と少ない。ハードルが少し高過ぎたのではないだろうか。

管理栄養士が行う周術期に必要な栄養管理について、新たな評価を行ったのが⑥周術期栄養管理実施加算238件である。届出は、急性期エリート病院を評価した総合入院体制加算、急性期充実体制加算届出病院に限定された。改定では特定機能病院限定の管理栄養士病棟配置を評価した「入院栄養管理体制加算」も新設された。周術期と病棟配置の管理栄養士を評価した加算が次回改定以降は一般病院でも届出可能になることを望みたい。

ICUやHCU等の集中治療領域において、専任の入院時重症患者対応メディエーター(仲介者)の支援する体制を評価したのが⑦重症患者初期支援充実加算422件である。WAM(福祉医療機構)によるとメディエーターの職種は社会福祉士が77.8%、次に看護師が50.0%と入退院支援加算の施設基準職種と同じである。地域によっては社会福祉士の売り手市場による採用困難事例が散見されている。


【2022. 11. 01 Vol.555 医業情報ダイジェスト】