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役割を持って組織の中で発言をするということ
リーダーが与える影響力を考える
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子![](/upimg/PIC__0_1721867774.jpg)
診療報酬改定など組織に変化が必要な状況では、職位や職種を越えて様々な意見交換がなされることは決して悪いことでは無く、むしろプラスに働くことが多いと思います。しかしながら、意見が熟考されないままに言葉が飛び交う組織になってしまうと、スタッフを混乱に陥れてしまうことにもなり兼ねません。今回はそんな色々な意見が出されるようになって喜ばしという反面、組織の統率が難しくなったことを嘆く院長先生のケースをご紹介したいと思います。
ケース:
経営が傾きかけていたAクリニックを立て直しつつある院長先生のお話です。
Aクリニックの前院長先生は 「スタッフは院長である私に忠実であるべき」 という考えを持っており、スタッフにクリニック経営に関する意見を求めることはもちろん無く、スタッフはクリニックの経営状態がどうなっているのか知る機会すらありませんでした。そんな前院長先生が急逝し、親族である新しい院長先生が着任することになったことでAクリニックの杜撰な経営状態が判明!とは言え右も左も分からない状態で院長になった先生は、スタッフとの対話を重視する方針を取り、中でも比較的改善に向けて前向きに行動できると考えたBさんを 「経営改善の現場リーダー」 として据えたのでした。(そしてコンサルタントとして筆者がご支援することに)
Bさんは医療従事者としての資格は有していますが、マネジメントの役割を与えられる経験は今回が初めて。しかし、他人の顔色を伺うよりも指示されたことを正しく業務として遂行するBさんは 「カイゼン」 の任務にピッタリだったようで、経営改善の立役者として頭角を現していったのでした。
そんなある時、 「Bさんがクリニック内で色々な部署をかき乱している!」 と、筆者にまるで110番通報のような切羽詰まった連絡がA院長先生より入りました。よくよくお話を伺うと、Bさんは多方面にご自身が気付いたことについて意見を求め、それを基に他の人に意見を求めるということを繰り返しているらしく、何に問題があり、何が検討中で、何が決定事項であるのかが分かりにくくなってしまっていたのです。
そこで筆者はBさんと面談を行いました。するとBさんからこんな発言がありました。
「思い付いたり気付いたことがあったら直ちに言葉にすることを信条にしています!」
つまり、Bさんはもちろん悪気があったわけでは無く、むしろ 「何かあったら声に出して言葉にした方が良い」 という良かれと思った故の行動だったのです。
Aクリニック内の混乱を把握できていなかったBさんはショックを受けた一方、 「自分の立場で発言をすると 『経営改善の現場リーダー』 としての発言だとスタッフが受け止めるという言葉にハッと気が付きました。今まで自分の立場が与える発言の影響について考えたことがありませんでした。とても良い機会をいただきました。自分の中に改善点を見つけられたことが嬉しいです!」 とBさんらしく前向きな発言をされたのでした。
さてA院長先生にこの旨をご報告したのち、筆者から質問をしました。
筆者 「この度は大変でしたね。Bさんにリーダー業をお願いするときに、どのようなことを伝えられたのですか?」
A院長先生 「クリニックをより良く変えていこうね!とお願いしただけで、その後のBさんの言動など全く考えていませんでした。何となく上手くこなしてくれるかなと…。今回の経営改善を行うに当たりリーダーとしてどんなことに気を付けた方が良いか等全く考えていなかったし、そのことについてBさんと話をした方が良いという発想自体がありませんでした。院長としての自分の言動そのものを振り返る必要がありますね」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
組織の中ではその人がどういう意図で発言をするかを問わず、発言には色が付くものです。このケースのように、リーダーが発信する言葉はご自身が考えるよりも遥かに影響力のあるもの。リーダーが与える影響について認識しないままに何かしらの業務の指揮を執る立場を任せてしまうと、個人が良いと考える言動を取ることになるため、組織に思わぬ大きな混乱を招くことがあります。
さて、皆さまは誰かにお仕事をお願いするとき(特にリーダーシップを取る必要がある役職など)に、その役割やふさわしい在り方について意識して任命していますか? 「こんなことくらい分かるでしょう!」 と思っていても、自分の想像を超えた言動を相手がしてしまうことはよくあること。効率よく結果を出していくためにも、 「お願いするリーダーに必要なふるまいとは何だと思う?」 「リーダーにとって大切なことって何だろう?」 と、事前にリーダーのあり方について具体的な話し合いを行うと、このような極端なミスマッチの予防になるのではないかと思います。
【2024. 6. 1 Vol.593 医業情報ダイジェスト】
Aクリニックの前院長先生は 「スタッフは院長である私に忠実であるべき」 という考えを持っており、スタッフにクリニック経営に関する意見を求めることはもちろん無く、スタッフはクリニックの経営状態がどうなっているのか知る機会すらありませんでした。そんな前院長先生が急逝し、親族である新しい院長先生が着任することになったことでAクリニックの杜撰な経営状態が判明!とは言え右も左も分からない状態で院長になった先生は、スタッフとの対話を重視する方針を取り、中でも比較的改善に向けて前向きに行動できると考えたBさんを 「経営改善の現場リーダー」 として据えたのでした。(そしてコンサルタントとして筆者がご支援することに)
Bさんは医療従事者としての資格は有していますが、マネジメントの役割を与えられる経験は今回が初めて。しかし、他人の顔色を伺うよりも指示されたことを正しく業務として遂行するBさんは 「カイゼン」 の任務にピッタリだったようで、経営改善の立役者として頭角を現していったのでした。
そんなある時、 「Bさんがクリニック内で色々な部署をかき乱している!」 と、筆者にまるで110番通報のような切羽詰まった連絡がA院長先生より入りました。よくよくお話を伺うと、Bさんは多方面にご自身が気付いたことについて意見を求め、それを基に他の人に意見を求めるということを繰り返しているらしく、何に問題があり、何が検討中で、何が決定事項であるのかが分かりにくくなってしまっていたのです。
そこで筆者はBさんと面談を行いました。するとBさんからこんな発言がありました。
「思い付いたり気付いたことがあったら直ちに言葉にすることを信条にしています!」
つまり、Bさんはもちろん悪気があったわけでは無く、むしろ 「何かあったら声に出して言葉にした方が良い」 という良かれと思った故の行動だったのです。
Aクリニック内の混乱を把握できていなかったBさんはショックを受けた一方、 「自分の立場で発言をすると 『経営改善の現場リーダー』 としての発言だとスタッフが受け止めるという言葉にハッと気が付きました。今まで自分の立場が与える発言の影響について考えたことがありませんでした。とても良い機会をいただきました。自分の中に改善点を見つけられたことが嬉しいです!」 とBさんらしく前向きな発言をされたのでした。
さてA院長先生にこの旨をご報告したのち、筆者から質問をしました。
筆者 「この度は大変でしたね。Bさんにリーダー業をお願いするときに、どのようなことを伝えられたのですか?」
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このケース、どのような感想を持ちましたか?
組織の中ではその人がどういう意図で発言をするかを問わず、発言には色が付くものです。このケースのように、リーダーが発信する言葉はご自身が考えるよりも遥かに影響力のあるもの。リーダーが与える影響について認識しないままに何かしらの業務の指揮を執る立場を任せてしまうと、個人が良いと考える言動を取ることになるため、組織に思わぬ大きな混乱を招くことがあります。
さて、皆さまは誰かにお仕事をお願いするとき(特にリーダーシップを取る必要がある役職など)に、その役割やふさわしい在り方について意識して任命していますか? 「こんなことくらい分かるでしょう!」 と思っていても、自分の想像を超えた言動を相手がしてしまうことはよくあること。効率よく結果を出していくためにも、 「お願いするリーダーに必要なふるまいとは何だと思う?」 「リーダーにとって大切なことって何だろう?」 と、事前にリーダーのあり方について具体的な話し合いを行うと、このような極端なミスマッチの予防になるのではないかと思います。
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