介護施設
新たな「複合型サービス」が創設 ~通所介護+訪問介護のメリット・デメリット~
意外と知らない介護経営のポイント
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之
令和4年12月20日に行われた厚労省介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」では、通所介護の職員が利用者の居宅を訪問し、食事や入浴の介護を行える新たな「複合型サービス」の創設が提案されました(図)。これは看護小規模多機能型居宅介護から12年ぶりの新サービスとなります。
この複合型サービスがどのような要件になるのかはこれから議論されるところですが、通所介護の経営に大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。2040年に向けて高齢者が増加する地域では、在宅医療だけではなく、在宅介護が必要な高齢者が増加します。しかし、訪問介護を担うホームヘルパーの数は絶対的に不足しており、今後も不足することが予測されることから訪問介護サービスを担保するための策だと思います。
この新しい「複合型サービス」ですが、すでに新型コロナウイルス感染拡大防止の特別措置として、通所介護からの訪問介護は認められています。
筆者は、岡山県倉敷市にて地域密着型通所介護「リハビリテーション颯倉敷」を運営しています。筆者の施設は、3時間のリハビリ特化型通所介護のため、もともと食事や入浴を提供しておらず、訪問介護の希望者はいませんでした。ただ、筆者の支援先の1日型の通所介護では食事や入浴の希望が多く、通所介護の職員が訪問にて食事介助や入浴介助を行った事例もあります。筆者はこの通所介護からの訪問介護の特別措置が発出された時に「これは厚労省のテストマーケティングじゃないか」と勘ぐっていましたが、まさに、その通りとなりました。通所介護には「施設」が必要なため、訪問介護の事業所が通所介護を始めることは考えにくく、逆に通所介護が新たに訪問介護を実施することが予測できます。
さて、この複合型サービスですが、通所介護にとってはメリットがたくさんあります。施設基準や算定要件は分かりませんが、サービス提供の観点から複合型サービスのメリットを考えていきたいと思います。
この複合型サービスがどのような要件になるのかはこれから議論されるところですが、通所介護の経営に大きな影響を及ぼすことは間違いないでしょう。2040年に向けて高齢者が増加する地域では、在宅医療だけではなく、在宅介護が必要な高齢者が増加します。しかし、訪問介護を担うホームヘルパーの数は絶対的に不足しており、今後も不足することが予測されることから訪問介護サービスを担保するための策だと思います。
この新しい「複合型サービス」ですが、すでに新型コロナウイルス感染拡大防止の特別措置として、通所介護からの訪問介護は認められています。
筆者は、岡山県倉敷市にて地域密着型通所介護「リハビリテーション颯倉敷」を運営しています。筆者の施設は、3時間のリハビリ特化型通所介護のため、もともと食事や入浴を提供しておらず、訪問介護の希望者はいませんでした。ただ、筆者の支援先の1日型の通所介護では食事や入浴の希望が多く、通所介護の職員が訪問にて食事介助や入浴介助を行った事例もあります。筆者はこの通所介護からの訪問介護の特別措置が発出された時に「これは厚労省のテストマーケティングじゃないか」と勘ぐっていましたが、まさに、その通りとなりました。通所介護には「施設」が必要なため、訪問介護の事業所が通所介護を始めることは考えにくく、逆に通所介護が新たに訪問介護を実施することが予測できます。
さて、この複合型サービスですが、通所介護にとってはメリットがたくさんあります。施設基準や算定要件は分かりませんが、サービス提供の観点から複合型サービスのメリットを考えていきたいと思います。
メリット①サービス提供の効率化
今まで、通所介護と訪問介護は別サービスで提供されていたため、通所介護の職員が居宅内で介護をするのは一部を除いては認められていませんでした。よって、例えば、一人暮らしの利用者が通所介護へ行く場合、着替えや整容などの準備としてわざわざ訪問介護を入れているケースもあり、とても非効率でした。しかし、これが一体的に提供できれば非常に効率的なサービス提供が可能になります。
メリット② 居宅内での様子をよりリアルにモニタリング可能
通所介護の機能として、「生活機能の維持・向上」が重要ですが、通所介護の利用者は週2~3回の利用が多く、毎日、通所介護へ来ているわけではありません。今まで居宅内での様子の確認は送迎時や居宅訪問時に限られていましたが、訪問が可能になれば、実際の食事や入浴場面でのモニタリングもサービス提供の範囲内で可能になります。
メリット③食事や入浴サービスが可能になる
これは、筆者のような3時間型の短時間リハビリ特化型通所介護にとっては大きなメリットです。今まで、短時間で利用されていても徐々に介護度が上がってくると「やはり、食事や入浴のある1日型の通所へ」と利用終了になっていました。しかし、通所では今まで通りリハビリに特化する一方で、訪問介護で食事や入浴を提供できれば、利用終了しなくてもよくなります。
では、次にデメリットは何でしょうか。まず考えらえるのは、職員の受け入れです。介護サービスには、入所、通所、訪問と三種類ありますが、通所サービスは、日中のみのサービスであるため、夜勤は無く、早出、遅出のような変則勤務もほとんどありません。また、場合によっては、土日祝休みもあり、入所や訪問と比較して、子育て世代には非常に働きやすい職場です。このような条件で就職した介護職員が夜勤や休日出勤など訪問介護事業所と同様の勤務を行うのは難しいでしょう。
また、通所介護の介護職員は「無資格者」も多くいます。通所介護内では、複数人で介護を提供しますが、訪問介護となれば、場合によっては一人で介護をすることもあり、求められるスキルやプレッシャーは全く違うため、抵抗感があるかも知れません。
また、人材確保の問題も出てくるでしょう。もし、小規模多機能型居宅介護と同様の施設基準となった場合、対象になるのは、定員18人以下の地域密着型通所介護のみとなります。そうなると、もともと職員数が多いわけではないので、既存の職員で訪問介護までできるのか、また、増員が必要な場合、新たに採用ができるのか、採用できたとして、きちんと利益が出るような報酬体系となるのかは不安なところです。そして、小規模多機能型居宅介護のように居宅ケアマネではなく「施設ケアマネ」になるのかどうかや定員数、包括報酬か出来高報酬かも非常に気になります。

【2023. 3. 15 Vol.564 医業情報ダイジェスト】
では、次にデメリットは何でしょうか。まず考えらえるのは、職員の受け入れです。介護サービスには、入所、通所、訪問と三種類ありますが、通所サービスは、日中のみのサービスであるため、夜勤は無く、早出、遅出のような変則勤務もほとんどありません。また、場合によっては、土日祝休みもあり、入所や訪問と比較して、子育て世代には非常に働きやすい職場です。このような条件で就職した介護職員が夜勤や休日出勤など訪問介護事業所と同様の勤務を行うのは難しいでしょう。
また、通所介護の介護職員は「無資格者」も多くいます。通所介護内では、複数人で介護を提供しますが、訪問介護となれば、場合によっては一人で介護をすることもあり、求められるスキルやプレッシャーは全く違うため、抵抗感があるかも知れません。
また、人材確保の問題も出てくるでしょう。もし、小規模多機能型居宅介護と同様の施設基準となった場合、対象になるのは、定員18人以下の地域密着型通所介護のみとなります。そうなると、もともと職員数が多いわけではないので、既存の職員で訪問介護までできるのか、また、増員が必要な場合、新たに採用ができるのか、採用できたとして、きちんと利益が出るような報酬体系となるのかは不安なところです。そして、小規模多機能型居宅介護のように居宅ケアマネではなく「施設ケアマネ」になるのかどうかや定員数、包括報酬か出来高報酬かも非常に気になります。

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