組織・人材育成
経営戦略と連動した人材戦略とCHROの必要性
経営戦略と連動した人材戦略はあるか
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
我が国では、人材を人的資源( Human Resource)と捉え、資源として、その使用・消費を管理するという考えから、人材に投じるお金を費用(コスト)と捉えてきました。しかし、最近は、人材を資本として捉える「人的資本(Human Capital)」という考えが主流になってきたと言われています。すなわち、人材は、研修や日々の業務を通じて成長し、企業の価値を創造する担い手になるということです。また、必要な人材は外部から登用するなど、状況に応じて人的資本を確保するという考え方に変わってきました。企業経営においては、この人的資本を大きくすることが、企業の価値を高めていくことになり、マネジメントの方向性も「管理」から人材の成長を通じた「価値創造」へと変わり、人材に投じる資金は価値創造に向けた投資と考えられています。
このような考えは、労働集約型で、ほとんどの職員が国家資格を有する高度な専門職集団の病院においては、今更のことのように感じます。医師や看護師といった専門職の専門性を高め、労働市場における専門職の価値を高め、自院の人的資本力を高めることで、医療の質の確保や病院経営の安定が得られるのは当然のことです。ここで、病院における課題は何かと言えば、人的資本を高める人材戦略と病院の経営戦略が連動していないことです。各管理職に、職員の専門能力を高めることを委ね、研修費等を投資しても、その効果が病院の経営に必ずしもつながっていないように感じます。
そこで今回は、病院の経営戦略と人材戦略について考えます。
このような考えは、労働集約型で、ほとんどの職員が国家資格を有する高度な専門職集団の病院においては、今更のことのように感じます。医師や看護師といった専門職の専門性を高め、労働市場における専門職の価値を高め、自院の人的資本力を高めることで、医療の質の確保や病院経営の安定が得られるのは当然のことです。ここで、病院における課題は何かと言えば、人的資本を高める人材戦略と病院の経営戦略が連動していないことです。各管理職に、職員の専門能力を高めることを委ね、研修費等を投資しても、その効果が病院の経営に必ずしもつながっていないように感じます。
そこで今回は、病院の経営戦略と人材戦略について考えます。
経営戦略と連動した人材戦略はあるか
経営戦略に基づいて、必要な人材をどのように確保していくかという人材戦略を立てている病院は少ないように思われます。経営戦略に基づく事業計画をしっかり立てている病院は増えていますが、そこに人材戦略が織り込まれているでしょうか。「人材が確保できず、計画を遂行できなかった」「プロジェクトを遂行するリーダーが不在で計画は未達成に終わった」ケースもあるのではないでしょうか。計画を実行するのが人であるのは当然にも関わらず、中長期の事業計画と連動した人材戦略が立てられているかというと、必ずしもできていないように思われます。
また、最近は、病院でも人事評価制度を導入する所が増えましたが、単に部下を評価して処遇を決めるだけのツールに留まっているように感じます。組織や職員の行動変容を促して組織風土を変革し、病院経営に貢献しているかと言えば、なかなか難しく、人事評価制度が人材戦略の1つになっていないように思います。その原因の1つは、経営メンバーの中にCHRO(最高人事責任者:Chief Human Resource Officer)が不在だからではないでしょうか。
病院の経営戦略を理解し、また多くの職員の状態を正しく把握し、イニシアティブを発揮して人材戦略を策定するCHROは、多様な人材を擁する病院にこそ必要であると考えます。病院の経営陣の思いと職員の思いをつなげる人材が、これからの病院経営には必要であり、そのような人事のプロを内部で育成するのか、あるいは外部から獲得するのかが、病院の経営戦略と人材戦略を連動させる第一歩だと考えます。
また、最近は、病院でも人事評価制度を導入する所が増えましたが、単に部下を評価して処遇を決めるだけのツールに留まっているように感じます。組織や職員の行動変容を促して組織風土を変革し、病院経営に貢献しているかと言えば、なかなか難しく、人事評価制度が人材戦略の1つになっていないように思います。その原因の1つは、経営メンバーの中にCHRO(最高人事責任者:Chief Human Resource Officer)が不在だからではないでしょうか。
病院の経営戦略を理解し、また多くの職員の状態を正しく把握し、イニシアティブを発揮して人材戦略を策定するCHROは、多様な人材を擁する病院にこそ必要であると考えます。病院の経営陣の思いと職員の思いをつなげる人材が、これからの病院経営には必要であり、そのような人事のプロを内部で育成するのか、あるいは外部から獲得するのかが、病院の経営戦略と人材戦略を連動させる第一歩だと考えます。
経営陣の中で常に人材戦略について確認をする
九州の某精神科病院と人事・賃金制度の運用支援の契約をしている関係で、様々な相談をリモート会議でお受けしています。昨年、認知症専門病棟の看護師さんが大量に退職した時などは、緊急で会議を何度も開きましたが、そのような時にも、経営戦略と人材戦略をつなげる視点でアドバイスをしました。例えば、経営戦略として、地域のニーズが高まっている認知症の患者さんを今まで通り積極的に受ける戦略を継続すべきか、それとも、人材の確保の視点から、縮小の方向に転換するのかは、病院の方向性を決める大事なポイントになります。しかし、今まで人材戦略がなかったわけですから、まずは、経営戦略に連動した人材戦略を立てる必要があるわけです。看護師が担っている介護の負担を軽減し、看護業務に専念できる環境を作るための人材戦略が必要となります。外部から介護福祉士を採用するのか、それとも、現在いる看護助手などの人材に投資し、介護福祉士の資格を取ってもらい、介護の技術を高めてもらうのか、その地域の労働市場に合わせた人材戦略が求められます。昨年、両面からの戦略を立て、介護職の賃金改善を行い外部から介護福祉士を確保するとともに、看護助手に講習等を受けてもらい介護福祉士の資格を取ってもらうことで、1年で必要な人材を確保でき、現在は落ち着いています。今まで経営戦略と連動した人材戦略がなく運営していたわけですから、今回、即効性があったのだと思いますが、当然、これら人材戦略を策定し推進する人材がいたからこそ、短期間で改善できたと言えるのです。
【2023. 4. 15 Vol.566 医業情報ダイジェスト】
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