組織・人材育成
医師の偏在とこれからの処遇のあり方
賃金制度の見直しとインセンティブ手当
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
厚生労働省が、今年の3月19日に 「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 を公表しました。医師の働き方改革などで医師不足が叫ばれている今日、医師の人数が昔と比べて、どのように推移しているのか気になるところです。
この調査によると、令和4年12月31日現在における全国の届出 「医師数」 は343,275人で、 「男」 262, 136人(総数の76. 4%)、「女」 81, 139人(同23.6%)です。平成14年の調査では、医師数は262,687人でしたから、この20年で80,588人(30.7%)も増えたことになります。
最近では、医師の地域間の偏在だけでなく、診療科による偏在も大きな問題となっています。そこで、特に不足していると言われる外科の医師数の推移を見ると、平成14年の全国の外科医の数は28,396人、令和4年では27,634人と、762人減っていました。しかも、年齢構成を示したグラフを確認すると、60~69歳と70歳以上で3分の1近くを占めているのです。
これでは、近い将来、外科医が不足し、必要な手術ができなくなることも危惧されます。ちなみに、前回(令和2年)調査と比べて最も増えた診療科は美容外科(対前回比132.4%)です。美容外科の医師の賃金水準が高いことと、最近は変則勤務の少ない診療科が選ばれていることから、このような結果になったと推測します。
そこで今回は、不足している診療科の医師の確保に向けて、人事制度の面で工夫ができないかを考えます。
この調査によると、令和4年12月31日現在における全国の届出 「医師数」 は343,275人で、 「男」 262, 136人(総数の76. 4%)、「女」 81, 139人(同23.6%)です。平成14年の調査では、医師数は262,687人でしたから、この20年で80,588人(30.7%)も増えたことになります。
最近では、医師の地域間の偏在だけでなく、診療科による偏在も大きな問題となっています。そこで、特に不足していると言われる外科の医師数の推移を見ると、平成14年の全国の外科医の数は28,396人、令和4年では27,634人と、762人減っていました。しかも、年齢構成を示したグラフを確認すると、60~69歳と70歳以上で3分の1近くを占めているのです。
これでは、近い将来、外科医が不足し、必要な手術ができなくなることも危惧されます。ちなみに、前回(令和2年)調査と比べて最も増えた診療科は美容外科(対前回比132.4%)です。美容外科の医師の賃金水準が高いことと、最近は変則勤務の少ない診療科が選ばれていることから、このような結果になったと推測します。
そこで今回は、不足している診療科の医師の確保に向けて、人事制度の面で工夫ができないかを考えます。
医師の賃金制度の見直しとインセンティブ手当
筆者は30年近く前、某病院で、医師の基本給に職務給という考えを入れました。医師の職務評価を行い、各診療科の仕事の難易度や職務の特性によって等級と基本給を決めたわけです。この結果、外科医と皮膚科医や耳鼻科医では等級が異なり基本給水準も異なりました。例えば、この3つの診療科の医師で見ると、外科医の職務等級が上位となり基本給も高かったわけです。昔は、医師の給与を診療科によって変えようなどと考えなかった時代ですが、報酬というのは組織貢献とイコールでなければならないという原則から言えば、変えるべきだと考えます。緊急の手術等が多く、患者さんの命に直結する仕事は、当然貢献度も高く、職務の特性としても過酷な勤務や精神状態が求められるわけですから、それに見合った報酬が与えられなければ、外科医を目指そうという若者が減っていくのは当たり前のことです。
最近は、労働市場の中で、診療科による賃金格差が見えてきていますから、それに合わせて賃金の格差をつけなければ、医師の採用は難しくなります。
なお、すでに格差が存在している以上、仕事の内容が異なるから基本給を変えるというよりは、基本給調整手当といった手当を支給することで水準を変えてはどうかと考えます。例えば、最近医師の賃金制度を見直した病院では、外科、整形外科、麻酔科等の医師に手当を支給することにしました。月額5万円とわずかな金額ですが、今後は、診療科によって、賃金水準を変えていくという方向性を示したことになります。
さらに、救急対応や手術等変則的で過酷な勤務への報酬として、救急患者を診察して入院させた場合には、1件につき1万円を支給するといったインセンティブ手当などの支給も併せて検討するようにしています。
最近は、労働市場の中で、診療科による賃金格差が見えてきていますから、それに合わせて賃金の格差をつけなければ、医師の採用は難しくなります。
なお、すでに格差が存在している以上、仕事の内容が異なるから基本給を変えるというよりは、基本給調整手当といった手当を支給することで水準を変えてはどうかと考えます。例えば、最近医師の賃金制度を見直した病院では、外科、整形外科、麻酔科等の医師に手当を支給することにしました。月額5万円とわずかな金額ですが、今後は、診療科によって、賃金水準を変えていくという方向性を示したことになります。
さらに、救急対応や手術等変則的で過酷な勤務への報酬として、救急患者を診察して入院させた場合には、1件につき1万円を支給するといったインセンティブ手当などの支給も併せて検討するようにしています。
医師の人事評価および診療科目標の加点と業績賞与
医師の人事評価を行う際、救急対応を行う医師の評価に、当直回数や日当直帯での診察率等を救急医療対応加点といった形で、加点項目として加え、人事評価の結果が高くなるような配慮もするようにしています。救急医療に関わらない医師は100点満点ですが、救急対応をする外科医などは110点満点にすることにより、高い人事評価結果が得られやすくなります。
また、各診療科の半期の収入目標を設定し、その達成度合いで診療科の業績を判定し、病院に貢献した診療科の医師の賞与を引き上げるような仕組みも入れるとよいでしょう。その際、救急車受入れ件数や、診療点数の高い手術の件数などを加点項目として評価し、外科医等の診療科業績賞与を膨らませるような仕組みを入れるとよいと考えます。
すなわち、医師の賞与は、表のように、医師個人業績賞与と診療科業績賞与の組み合わせとし、個人業績賞与には人事評価の結果を反映させた係数を掛け、診療科業績賞与には、診療科の収入目標や加点項目の達成度を反映させた係数を掛けてはいかがでしょう。外科医の賃金を手当等で単に上げることも大事ですが、医師個人の業績や診療科の業績を反映させて賞与が上がる仕組みを入れることで、頑張っている医師に、真に報いる処遇制度となります。
【2024. 7. 15 Vol.596 医業情報ダイジェスト】
また、各診療科の半期の収入目標を設定し、その達成度合いで診療科の業績を判定し、病院に貢献した診療科の医師の賞与を引き上げるような仕組みも入れるとよいでしょう。その際、救急車受入れ件数や、診療点数の高い手術の件数などを加点項目として評価し、外科医等の診療科業績賞与を膨らませるような仕組みを入れるとよいと考えます。
すなわち、医師の賞与は、表のように、医師個人業績賞与と診療科業績賞与の組み合わせとし、個人業績賞与には人事評価の結果を反映させた係数を掛け、診療科業績賞与には、診療科の収入目標や加点項目の達成度を反映させた係数を掛けてはいかがでしょう。外科医の賃金を手当等で単に上げることも大事ですが、医師個人の業績や診療科の業績を反映させて賞与が上がる仕組みを入れることで、頑張っている医師に、真に報いる処遇制度となります。
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2025-05-27「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
2025-05-03
「疑義解釈資料の送付について(その24)」を追加しました
[お知らせ]
2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
2024-05-30
『九州医事新報/中四国・関西医事新報/東海・関東医事新報』で「HMレビュー」が紹介されました
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