保険薬局

【続き】かかりつけ機能強化による薬剤師業務

薬剤師にしかできないことを確立することが重要
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方孝行
保険薬局としてかかりつけ薬剤師を推進していくことは必要であるが、かかりつけ薬剤師制度を推進していくには、さまざまな課題もある。その一つに薬剤師の在籍要件などが挙げられる。人事異動などにより、人員調整が頻発するチェーン薬局においては、異動前の店舗においてどれほどかかりつけ薬剤師として活躍していても、異動後の店舗では 「当該保険薬局に継続して1年以上在籍していること」 という在籍要件のため、本来ならかかりつけ薬剤師指導料を算定可能なレベルのサービスを提供していたとしても実績としてカウントされないということが起こり得る。確かにその地域のかかりつけとなるには1年ほどの在籍要件は適当なのかもしれないが、同じ地域の他店舗への異動においては、一概に1年の在籍を求めることが果たして適当なのかは検討が必要であろう。

また冒頭に紹介した調査研究の結果において、かかりつけ薬剤師から受けたサービスとしては、 「薬の継続的な把握」  「薬の飲み合わせなどのチェック」  「薬に関する丁寧な説明」 が上位を占めていた。だが、薬に関する丁寧な説明を除くこれらのサービスはマイナ保険証や電子処方箋が普及した世界観ではいわば当たり前に行われるサービスである。かかりつけ薬剤師ならではといった、他の医療機関との連携であったり、検査結果による薬の安全性の評価、在宅医療への対応というところはまだまだ行われいないのが実態である。特に在宅移行時においては、かかりつけ薬剤師からの視点は非常に重要であり、積極的にかかりつけ薬剤師が薬薬連携に関与していくことも求められていくのではないかと考える。

今後、デジタル技術の発展に伴い、いろいろなサービスが当たり前となっていくなか、薬剤師ならでは、特にかかりつけ薬剤師として提供できるサービスは何なのか、ということを考えることは喫緊の課題であろう。デジタル化に伴って効率化されていく業務のなかで、「デジタル技術ではなく、薬剤師にしかできないこと」を確立することが重要になる。




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【2024.9月号 Vol.340 保険薬局情報ダイジェスト】