組織・人材育成
人間、常に変わり続けるものだから気を付けたい自分の言動~ハラスメント
長年関わり続けている間柄でも気を付けたい「言動」について振り返る
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
秋を感じることが少ないままに冬の寒さが訪れたような日々ですが、皆さまお変わりありませんか。組織も人も季節のように、暖かく穏やかだったり厳しい寒さが訪れたり、時に季節外れの気候となったり常に変化しているものですね。今回は長年一緒に業務で関わり続けている間柄でも気を付けたい「言動」について振り返る機会となったケースをご紹介しながら、変化を組織と人の成長に繋げられる風土づくりについて考えていきたいと思います。
ケース:
都内近郊にある人口の多い都市で地元住民に人気の高いクリニックのお話です。このクリニックの院長先生は先代から引き継いだ2代目。院長先生が代替わりした際には色々とご苦労があったそうですが、今では5年以上働くスタッフが多くなり、安定した組織運営が行われています。
筆者が定期的に組織の一体感を高める研修を行っているこのクリニックでいつものように全体研修が終了し、筆者が帰宅をしようとした際にスタッフAさんから呼び止められました。
Aさん「ちょっと相談があるのですが……」
筆者がスタッフとも院長先生とも離れた落ち着いた場所に誘導すると、重たい口を開いたのでした。
Aさん「院長先生と上村さんのコーチングセッションで、院長先生に伝えてほしいことがあるのですけど……そういうのって可能ですか?」
筆者「内容にもよりますが、クリニックの場合は人数が少ないため『誰とは言えないのですがスタッフからの声として〇〇ということがありました』と伝えたとしても、誰からの言付けか院長先生が理解できてしまう可能性は高いと思います。今の院長先生であればどんな内容であっても一度は受け止められると思いますが、どんな反応があるかを保証することはできません。もし私が伺って良い内容であれば、まずお話いただいてもよろしいでしょうか?」
Aさん「実は……セクハラなのですけど……。最近院長先生からのボディタッチが気になるのです。私が一番年齢が若いこともあるのかもしれませんが、他のスタッフには決してしないボディタッチが多くて気になっています。院長先生は明るくフレンドリーな性格なのは理解していますし、悪意は無いと思うのですがあまり好ましくなくて……。別に私が上村さんに伝えたと理解されても良いので、院長先生に言ってほしいのです」
筆者「分かりました。それでは院長先生とのセッションの際にお伝えするようにしますね」
それから数日後に行われた院長先生とのコーチングセッションでのことです。
筆者「実は本日は1つご報告があります。特定の誰かということは敢えてお伝えしませんが、院長先生がスタッフに対してボディタッチが多くなっていると感じているスタッフの方がいらっしゃるようです。ご自身での認識はいかがですか?」
院長「そうなのですか!全く自分では認識していなかったので、教えていただいてありがとうございます。クリニック内の人間関係がとても良好だと感じているので、私自身、スタッフに甘えてしまっている部分があるのだと思います。スタッフが自走してくれるので、嬉しい気持ちが高まったのもあるのかな。スタッフに対する感謝を伝える方法はボディタッチでなくても良いはずですものね。今までと接し方を変えている気は全くなかったのですが、何かが変わっていたのですね。スタッフとの良好な関係性を継続するためにも重要な指摘だったと思います」
筆者「気持ちがモヤモヤしたり、納得できない思いがあったりしませんか?」
院長「いいえ、むしろ驚いています。スタッフが上村さんに伝えてくれるということは、本当に変化してほしいという思いなのだと思います。スタッフが私にそういう発言をしてくれるようになったことは、素直に嬉しいと思います。以前の自分だったら、『そんなことしてない!』と思ったかもしれませんね(笑)。私のクリニックではなく、スタッフも患者さんも含めたみんなのクリニックという認識です。そのクリニックをより良くするために、クリニックの顔であるスタッフが心地よい環境を作ることがリーダーの役割……なのですよね?上村さん?」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
Aさんは5年以上このクリニックに勤めています。勤務年数が長くなればなるほど、このような指摘はしにくいもの。Aさん自身はボディタッチについてたしなめるような態度を取っていたようですが、長年の「仲の良い」関係性で院長先生は全く気が付くことが無かったようです。この後、院長先生はスタッフ全員に対して謝罪をし、その後はスタッフとの距離感について再検討するようになり、さらにより良い関係性が築かれているようです。
長く一緒に働いているからこそ、ご自身の立ち居振る舞いに意識を向けてみませんか?そうすることにより、もっと良いスタッフとの関係性を見出せるかもしれません。
【2024. 1. 1 Vol.583 医業情報ダイジェスト】
筆者が定期的に組織の一体感を高める研修を行っているこのクリニックでいつものように全体研修が終了し、筆者が帰宅をしようとした際にスタッフAさんから呼び止められました。
Aさん「ちょっと相談があるのですが……」
筆者がスタッフとも院長先生とも離れた落ち着いた場所に誘導すると、重たい口を開いたのでした。
Aさん「院長先生と上村さんのコーチングセッションで、院長先生に伝えてほしいことがあるのですけど……そういうのって可能ですか?」
筆者「内容にもよりますが、クリニックの場合は人数が少ないため『誰とは言えないのですがスタッフからの声として〇〇ということがありました』と伝えたとしても、誰からの言付けか院長先生が理解できてしまう可能性は高いと思います。今の院長先生であればどんな内容であっても一度は受け止められると思いますが、どんな反応があるかを保証することはできません。もし私が伺って良い内容であれば、まずお話いただいてもよろしいでしょうか?」
Aさん「実は……セクハラなのですけど……。最近院長先生からのボディタッチが気になるのです。私が一番年齢が若いこともあるのかもしれませんが、他のスタッフには決してしないボディタッチが多くて気になっています。院長先生は明るくフレンドリーな性格なのは理解していますし、悪意は無いと思うのですがあまり好ましくなくて……。別に私が上村さんに伝えたと理解されても良いので、院長先生に言ってほしいのです」
筆者「分かりました。それでは院長先生とのセッションの際にお伝えするようにしますね」
それから数日後に行われた院長先生とのコーチングセッションでのことです。
筆者「実は本日は1つご報告があります。特定の誰かということは敢えてお伝えしませんが、院長先生がスタッフに対してボディタッチが多くなっていると感じているスタッフの方がいらっしゃるようです。ご自身での認識はいかがですか?」
院長「そうなのですか!全く自分では認識していなかったので、教えていただいてありがとうございます。クリニック内の人間関係がとても良好だと感じているので、私自身、スタッフに甘えてしまっている部分があるのだと思います。スタッフが自走してくれるので、嬉しい気持ちが高まったのもあるのかな。スタッフに対する感謝を伝える方法はボディタッチでなくても良いはずですものね。今までと接し方を変えている気は全くなかったのですが、何かが変わっていたのですね。スタッフとの良好な関係性を継続するためにも重要な指摘だったと思います」
筆者「気持ちがモヤモヤしたり、納得できない思いがあったりしませんか?」
院長「いいえ、むしろ驚いています。スタッフが上村さんに伝えてくれるということは、本当に変化してほしいという思いなのだと思います。スタッフが私にそういう発言をしてくれるようになったことは、素直に嬉しいと思います。以前の自分だったら、『そんなことしてない!』と思ったかもしれませんね(笑)。私のクリニックではなく、スタッフも患者さんも含めたみんなのクリニックという認識です。そのクリニックをより良くするために、クリニックの顔であるスタッフが心地よい環境を作ることがリーダーの役割……なのですよね?上村さん?」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
Aさんは5年以上このクリニックに勤めています。勤務年数が長くなればなるほど、このような指摘はしにくいもの。Aさん自身はボディタッチについてたしなめるような態度を取っていたようですが、長年の「仲の良い」関係性で院長先生は全く気が付くことが無かったようです。この後、院長先生はスタッフ全員に対して謝罪をし、その後はスタッフとの距離感について再検討するようになり、さらにより良い関係性が築かれているようです。
長く一緒に働いているからこそ、ご自身の立ち居振る舞いに意識を向けてみませんか?そうすることにより、もっと良いスタッフとの関係性を見出せるかもしれません。
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2025-05-27「疑義解釈資料の送付について(その26)」を追加しました
2025-05-26
「疑義解釈資料の送付について(その25)」を追加しました
2025-05-03
「疑義解釈資料の送付について(その24)」を追加しました
[お知らせ]
2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
2024-05-30
『九州医事新報/中四国・関西医事新報/東海・関東医事新報』で「HMレビュー」が紹介されました
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