組織・人材育成
チェックリストの罠
何のためにチェックリストがあるのか
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
診療報酬改定の告示・通知が出されましたが、細かな運用手順などは後に出る事務連絡を待つ必要がありそうですね。情報が小出しになる中で新しい業務が発生しそうな部署の皆さまは、6月の対応に向けて試行錯誤されていることとお察し致します。今回のテーマはそんな業務の中で用いられがちな「チェックリスト」について取り上げたいと思います。
ケース
病院を有する大きな法人に所属するクリニックのお話です。このクリニックでは以前、医療安全上の問題があり、与薬や様々な医療機器を取り扱うためにチェックリストを用いてミスの無いよう努めています。
人材不足が叫ばれる中、新たに新人Aさんが入職されました。Aさんは大学病院での勤務経験があり、医療安全の委員でもあったというベテラン看護師さん。ご家庭の事情で引っ越しをせざるを得ず、縁のあった同クリニックで働くことになりました。
勤務初日、あまりのチェックリストの多さに辟易したAさん。「こんなにたくさんあるのではチェックリストを埋めることで1日が終わってしまう!前の職場ではこんなの無かったのに!」と看護部長や薬剤部長などに直訴しましたが、返ってきた言葉は「これは決まっているから」のひと言でした。
忙しく働く職員たちの様子を見ているうちに、患者さんと話をしているよりもチェックリストと向き合っている時間が多いのでは?と疑問を持ったAさんは院長先生と話をすることにしました。
Aさん「このチェックリストは不要だと思いますし、ダブルチェックどころかトリプルチェックになっているこの様式は変えないと患者さんの様子を観察出来ません!」
院長先生「そんな話は今まで出てきたことが無いのだけど…必要だからあるのでは?」
仕方なく、院長先生は看護部長や薬剤部長などに話を聞きます。
薬剤部長「(呆れた顔をしながら)このチェックリストが出来た経緯を忘れたのですか?これは〇〇という理由で始まったのですよ。全く…必要だから行っているものなのに無くして事故が起こったら業務が効率化されるどころの話じゃないのだけどね。大学病院から来たのだか知らないけど、ここで働いている人はそういうヒトじゃないことに気が付いてほしいですよ」
院長先生がチェックリストを見てみると…確かに何度もチェックするフローは実際に業務を行う現場目線では面倒に見えます。そしてチェックリストを信じるあまりに確認せずチェックリストに「レ点」を付けることに気を付けている人がいることを発見したのでした。
院長先生「確かにチェックリストは過剰だと思われる部分もありそうですが…現場の責任者が首を縦に振らない限りは変えられないですよね…彼らの安心を奪ってしまうことになりかねないので…」
今日も多くのチェックリストと睨めっこする日々に、Aさんはじめ現場で働くスタッフからは退職の意思が固まっていくのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
現場は不要だと思っている一方で、管理職が必要と考えている業務手順は多いように思います。その最たるものがチェックリストでは無いでしょうか。
安心をチェックリストに求めすぎている管理職は、その方法を変えることを極端に嫌ってしまうもの。チェックリストがあることで安全対策が出来ていると考えるためです。一方、慣れていくことで「何のためにチェックリストがあるのか」という目的がズレていくのはよくある話です。チェックを入れることで「チェックをした証」を残して安心するために行っているケースが非常に多く、実際の確認とチェックのタイミングがズレることがある場合は、医療安全という機能が果たされていないことも多いと思います。例えば、チェックリストにある患者の順番をランダムにして確実にチェックが入るように工夫をするということもありますが、忙しい現場の場合にはリストから患者の名前を探すことに時間を取られると不満を訴えられることは十分に考え得るものです。
診療報酬改定によって残念ながら新しい業務が生まれることは多々あります。チェックリスト1つをとっても丁寧に「本当に必要なのか」だけではなく「本当に目的にあった業務フローの1つになっているのか」という確認を現場と共に行っていく必要があるのではないでしょうか。
【2024. 4. 1 Vol.589 医業情報ダイジェスト】
人材不足が叫ばれる中、新たに新人Aさんが入職されました。Aさんは大学病院での勤務経験があり、医療安全の委員でもあったというベテラン看護師さん。ご家庭の事情で引っ越しをせざるを得ず、縁のあった同クリニックで働くことになりました。
勤務初日、あまりのチェックリストの多さに辟易したAさん。「こんなにたくさんあるのではチェックリストを埋めることで1日が終わってしまう!前の職場ではこんなの無かったのに!」と看護部長や薬剤部長などに直訴しましたが、返ってきた言葉は「これは決まっているから」のひと言でした。
忙しく働く職員たちの様子を見ているうちに、患者さんと話をしているよりもチェックリストと向き合っている時間が多いのでは?と疑問を持ったAさんは院長先生と話をすることにしました。
Aさん「このチェックリストは不要だと思いますし、ダブルチェックどころかトリプルチェックになっているこの様式は変えないと患者さんの様子を観察出来ません!」
院長先生「そんな話は今まで出てきたことが無いのだけど…必要だからあるのでは?」
仕方なく、院長先生は看護部長や薬剤部長などに話を聞きます。
薬剤部長「(呆れた顔をしながら)このチェックリストが出来た経緯を忘れたのですか?これは〇〇という理由で始まったのですよ。全く…必要だから行っているものなのに無くして事故が起こったら業務が効率化されるどころの話じゃないのだけどね。大学病院から来たのだか知らないけど、ここで働いている人はそういうヒトじゃないことに気が付いてほしいですよ」
院長先生がチェックリストを見てみると…確かに何度もチェックするフローは実際に業務を行う現場目線では面倒に見えます。そしてチェックリストを信じるあまりに確認せずチェックリストに「レ点」を付けることに気を付けている人がいることを発見したのでした。
院長先生「確かにチェックリストは過剰だと思われる部分もありそうですが…現場の責任者が首を縦に振らない限りは変えられないですよね…彼らの安心を奪ってしまうことになりかねないので…」
今日も多くのチェックリストと睨めっこする日々に、Aさんはじめ現場で働くスタッフからは退職の意思が固まっていくのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
現場は不要だと思っている一方で、管理職が必要と考えている業務手順は多いように思います。その最たるものがチェックリストでは無いでしょうか。
安心をチェックリストに求めすぎている管理職は、その方法を変えることを極端に嫌ってしまうもの。チェックリストがあることで安全対策が出来ていると考えるためです。一方、慣れていくことで「何のためにチェックリストがあるのか」という目的がズレていくのはよくある話です。チェックを入れることで「チェックをした証」を残して安心するために行っているケースが非常に多く、実際の確認とチェックのタイミングがズレることがある場合は、医療安全という機能が果たされていないことも多いと思います。例えば、チェックリストにある患者の順番をランダムにして確実にチェックが入るように工夫をするということもありますが、忙しい現場の場合にはリストから患者の名前を探すことに時間を取られると不満を訴えられることは十分に考え得るものです。
診療報酬改定によって残念ながら新しい業務が生まれることは多々あります。チェックリスト1つをとっても丁寧に「本当に必要なのか」だけではなく「本当に目的にあった業務フローの1つになっているのか」という確認を現場と共に行っていく必要があるのではないでしょうか。
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