組織・人材育成
「私は変わらない」と宣言したリーダーの想い
より良いリーダーシップと組織作りについて
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
2024年度診療報酬改定の全容が明らかになる中、「こんなところも変わるのか!」と業務内容の変更について検討されている医療機関は多いと思います。現場の対応能力が問われる改定になりますね。さて今回は、そんな変化の渦中にいながら「変わらない!」と宣言したリーダーとその発言に動揺を隠せない職員の胸中に踏み込むことで、より良いリーダーシップと組織作りについて考えていきたいと思います。
ケース:
Aさん「院長先生から『私は絶対に今の業務を変える気はない』と言われてしまって…この発言に疲れがドッと出てきました」
最近患者さんが増え収入が安定してきた、規模の大きなクリニックのお話です。このクリニックに勤めるA主任が、24年度診療報酬改定で外来収入に打撃となる「特定疾患療養管理料」の変更(脂質異常症、高血圧、糖尿病を対象患者から除外する)と「生活習慣病管理料」の変更(現行の点数UP並びに検査等を包括しない点数の分岐が新設)を受けて院長先生に業務内容の見直しを提案したところ、冒頭の発言に繋がったようです。
Aさん「今回の改定で外来収入を維持・向上させていくためには、特に生活習慣病に係わる変更が必要と聞きました。これまで比較的算定のハードルが低かった特定疾患療養管理料が算定できなくなり、代わりに患者個別の治療計画書を作成した上でケアを行う生活習慣病管理料が算定できる体制への変更を求められていることは制度改正の内容から察することが出来たのですが、この変化が院長先生にとって受け入れ難いようで…。実は、私は昨年まで産休育休でお仕事から離れていました。私は患者さんとの関わりが好きで医療従事者の道を目指した背景があり、これまでよりも患者さんに関わることが出来る変化が嬉しいと感じていたところだったのです。実際にどのくらい収入が下がるのか計算していないのかな…院長先生の発言に心底ガッカリしています。それは他の職員も同じようです」
Aさんとの会話の後、院長先生と改定に関する話の中で、以下のような発言を聞くことになったのでした。
院長先生「今回の改定は職員から聞いています。私は今回の『クリニック虐め』のような改定を快く思っていません。ただでさえ忙しくて職員が日々の対応で手いっぱいのところをさらに仕事を増やそうという改定ですよね?真正直に対応していたら、患者の待ち時間は増える一方だし、当然のこととして患者負担金額も上がるのです。もっと言うと、患者にとってその労力に見合う成果が得られるかどうかは別問題。それなら収入が下がってもこれまでと変わらない診療内容の方が良くないですか?去年は患者数が伸びて黒字だったし。私は職員と患者さんのお財布事情を考慮して、決心をしたのです」
しかしこの院長先生、実際に収入に与えるインパクトを筆者が数値で示すと「ちょっとは変えないといけないのかな…もう少し考えないといけませんね…」と少し前の強気な発言から弱気な発言へ変化が見られたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
院長先生をはじめとする経営層の発言が職員に与える影響は、経営層自身が考えるよりも大きなものです。この院長先生のように、経営全体に与える影響を総合的に評価する前に発した何気ない言葉が職員全体にあっという間に伝わり、組織全体の士気が下がってしまうことは意外とあるもの。例えその発言内容が「実は職員のことを慮った内容だった」としても同じです。さらに、リーダーが全体像を把握した後に発言を撤回した場合、職員に「コロコロと言うことが変わる」と捉えられてしまう(そしてその感想はリーダーの耳に届かない)こともよくある話です。
組織にとって変化を迫られる時期のリーダーの発言は、特に大きな意味をもたらします。つまり、職員はリーダーの一挙手一投足をよく観察しています。リーダーが意図すること、考えていることが職員になるべく正確に伝わるように、日頃のコミュニケーションが大切であることは言うまでもありませんが、正しく伝わる言葉選びも重要だと感じています。特に「変わらない」のように、否定形の発言には要注意!想像以上に強い意思を持ってネガティブに伝わってしまうことがあります。意外とリーダーといわれる管理職の皆さまの中に否定的な言葉を使われている方は多くいらっしゃいます。日常的に使う言葉選びを意識して過ごしてみることをお勧めいたします。
【2024. 4. 15 Vol.590 医業情報ダイジェスト】
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Aさん「今回の改定で外来収入を維持・向上させていくためには、特に生活習慣病に係わる変更が必要と聞きました。これまで比較的算定のハードルが低かった特定疾患療養管理料が算定できなくなり、代わりに患者個別の治療計画書を作成した上でケアを行う生活習慣病管理料が算定できる体制への変更を求められていることは制度改正の内容から察することが出来たのですが、この変化が院長先生にとって受け入れ難いようで…。実は、私は昨年まで産休育休でお仕事から離れていました。私は患者さんとの関わりが好きで医療従事者の道を目指した背景があり、これまでよりも患者さんに関わることが出来る変化が嬉しいと感じていたところだったのです。実際にどのくらい収入が下がるのか計算していないのかな…院長先生の発言に心底ガッカリしています。それは他の職員も同じようです」
Aさんとの会話の後、院長先生と改定に関する話の中で、以下のような発言を聞くことになったのでした。
院長先生「今回の改定は職員から聞いています。私は今回の『クリニック虐め』のような改定を快く思っていません。ただでさえ忙しくて職員が日々の対応で手いっぱいのところをさらに仕事を増やそうという改定ですよね?真正直に対応していたら、患者の待ち時間は増える一方だし、当然のこととして患者負担金額も上がるのです。もっと言うと、患者にとってその労力に見合う成果が得られるかどうかは別問題。それなら収入が下がってもこれまでと変わらない診療内容の方が良くないですか?去年は患者数が伸びて黒字だったし。私は職員と患者さんのお財布事情を考慮して、決心をしたのです」
しかしこの院長先生、実際に収入に与えるインパクトを筆者が数値で示すと「ちょっとは変えないといけないのかな…もう少し考えないといけませんね…」と少し前の強気な発言から弱気な発言へ変化が見られたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
院長先生をはじめとする経営層の発言が職員に与える影響は、経営層自身が考えるよりも大きなものです。この院長先生のように、経営全体に与える影響を総合的に評価する前に発した何気ない言葉が職員全体にあっという間に伝わり、組織全体の士気が下がってしまうことは意外とあるもの。例えその発言内容が「実は職員のことを慮った内容だった」としても同じです。さらに、リーダーが全体像を把握した後に発言を撤回した場合、職員に「コロコロと言うことが変わる」と捉えられてしまう(そしてその感想はリーダーの耳に届かない)こともよくある話です。
組織にとって変化を迫られる時期のリーダーの発言は、特に大きな意味をもたらします。つまり、職員はリーダーの一挙手一投足をよく観察しています。リーダーが意図すること、考えていることが職員になるべく正確に伝わるように、日頃のコミュニケーションが大切であることは言うまでもありませんが、正しく伝わる言葉選びも重要だと感じています。特に「変わらない」のように、否定形の発言には要注意!想像以上に強い意思を持ってネガティブに伝わってしまうことがあります。意外とリーダーといわれる管理職の皆さまの中に否定的な言葉を使われている方は多くいらっしゃいます。日常的に使う言葉選びを意識して過ごしてみることをお勧めいたします。
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