保険薬局

WEB企業説明会・カジュアル面談で求職者との接点を増やす

人材紹介会社が教える採用のコツ
株式会社ウィーク  シニアコンサルタント 長谷川 周重
1年前くらいになりますが、厚生労働省にて2022年2月14日、「第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が開催され、その後、7回の会合が開催されたのち、2022年7月11日にとりまとめ資料が公表されました。そこで扱われた「薬局薬剤師に関する基礎資料」(図参照)によると、薬剤師は全国に約31万人、そのうち薬局薬剤師が約18万人、薬局数が約6万店で増加しています。同一法人の薬局の店舗数の推移では、20店舗以上を経営する薬局の割合は増加傾向であり、2021年(R 3)では38.4%でした。一方で2~5店舗経営の薬局は28%と減少傾向にあります。2015年(H27)の段階では50%を超えていた2~5店舗経営の薬局は、僅か6年で約半分になりチェーン店化が急速に進んでいます。


出典: 厚生労働省 令和4年2月14日 第1回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 資料2

また、薬剤師の地域格差は今なお解消されていません。そのため、地方店舗によってはまったく応募がないところもあるでしょう。1人でも来てくれたら有難いと願っているものの、残念ながらその願いも虚しく事業継続が厳しく、廃業やM&Aという選択になっていると推察できます。事業の継続を考えた時に薬剤師確保は必要不可欠です。それでも、応募がままならない場合はどうしたらよいのでしょうか。苦肉の策かもしれませんが、年齢を問わずどんな人でも全員に会うという手段が必要です。無駄な時間になってしまうこともありますが、現状を知る上でも得られるものがあり、新しい活路が見いだせる可能性もあります。また、そこまでやりつくせば廃業やM&Aという選択にも納得がいきます。

薬剤師は、勤務地が重要であることは間違いありません。従って、薬剤師の絶対数が限られているため以下の2点が必要となります。
  1.  通勤が可能な薬剤師と常にコミュニケーションをとり、いつでも声をかけられる状態にしておく
  2.  他エリアから誘致する

1は、地道な活動ですが、いざという時に効果を発揮します。しかし、お互いのタイミング次第なので、日頃から魅力的な職場であることをPRしておくことが必要です。今すぐ採用はできないが、そのような時が来ることがあれば、声だけはかけさせて頂いても良いか、確認しておいても良いかもしれません。結局は人脈による採用が強いということはよくあることです。また、人材紹介会社を通じての紹介の場合、直接取引は禁止の契約になっていることがほとんどです。しかし、なかにはオーナーシップ期間(およそ1年が多い)を経た後であれば対象外になる場合もあります。もちろんお互いにトラブルがないようにモラルのある対応をすることが前提です。つまり、採用枠1名の時に応募者複数名を面接し、1名採用で何人か見送りにしなければならない時があります。名残惜しい求職者であったならば、関係を維持しておくことで窮地を救うこともあります。それが、再度エージェントを通じてなのか、自社で対応をするかはケースバイケースです。
いつでも声を掛けられる求職者をストックしておくことは、経営の安定にも繋がります。

2は、他エリアから誘致することです。これには、ちょっとした工夫が必要です。いつものように人材紹介会社に求人依頼をすれば良いという事ではうまくいきません。薬剤師よりも難易度が高いと言われる医師の地方招聘事例が参考になります。
 ご承知の通り医師も地域差があるため採用に苦労しています。そのため、病院は医師向けのリクルート資料を作ったり、病院の見学や食事会に招待したりしています。特にリクルート資料は、病院の説明と共に、その街のPR資料や、現職医師のプロフィール、他エリアから引っ越してきた医師の紹介など、心理的安全性を高めた資料を作成しています。
知らない街に誘致をする場合、その場所がどのような場所か求職者に調べてもらうことはハードルが高くなるため、職場PRだけでなく街の紹介を入れるととても効果的です。例えば、もし住んだとしたら生活環境はどうなるのか、近くにスーパーやコンビニがあるのか、学会に出張するためには最寄りの新幹線の駅や空港までのアクセスはどのようになるのか、働く家はどのようなところがあるのか、学校はどのようなところがあるのか、また、キャンプやハイキング、ウォータースポーツ、陶芸などリフレッシュができるところはあるのか――など記載内容は様々です。

現在、都内の民間企業においても人口減少に伴い、優秀な人材の獲得競争が激化しています。紹介手数料が100%に達するところもあります。それでも採用に苦慮しているのです。そのような中、最近はWEB面談が簡易にできるようになったため、企業説明会が盛んに行われるようになりました。実際に働いている社員が生の声を配信することもあります。また、カジュアル面談を実施するところも増えています。そして、その後は応募を経て2回から3回の面接をし、オファー面談という流れになります。これは大手に限らず中小企業も積極的に行っています。

薬剤師の中途採用は1回面接が多く、業界の習わしのようになっています。そこで、他社との差別化を図るためにW EBでの企業説明会・カジュアル面談の機会を増やし、求職者との接点の数を増やす方法をお勧めします。そうすることで、採用のチャンスがさらに広がっていきます。


【2023.3月号 Vol.322 保険薬局情報ダイジェスト】