保険薬局

令和4年度調剤報酬改定で医療的ケア児の調剤に加算がついた。

社会的弱者を取り残させない
開局薬剤師 岡村 俊子

【医療的ケア児とは】

定義:人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児(児童福祉法第56条の6第2項)
 ※医療的ケアとは
日常生活に必要とされる医療的な生活援助行為(酸素吸入や痰の吸引、経管栄養の注入など)であり、在宅で保護者が行うことが多い。
新生児医療の発達により、超未熟児や先天的な疾病を持つ子どもも以前なら出産直後になくなるケースであっても助かることが多くなってきたため、医療的ケアを必要とする子どもの数も増加傾向にあり、全国で約2万人(令和1年推定)といわれている。

受け入れ先や小児在宅医療の担い手が少なく、保護者の負担も大きいため保護者が就労したくてもできない状態であること、社会とのつながりを失い孤立しやすいことも主な問題の一つと思われる。
2021年6月11日、参議院本会議で医療的ケア児支援法が成立し、同年9月18日に施行された。この法律により、国や地方公共団体は医療的ケア児及びその家族に対する支援に係る施策を実施する責務を負うことになった。

【令和4年度調剤報酬改定 医療的ケア児に対する管理指導】
●服薬管理指導料
( 新設)小児特定加算 (350点/1回につき)
医療的ケア児に対し、患者の状態に合わせた必要な薬学的管理及び指導を行い、かつ、当該内容を手帳に記載した場合に加算する。
●在宅患者訪問薬剤管理指導料
( 新設)小児特定加算 (450点/1回につき)
患者またはその家族等に対して、必要な薬学管理および指導を行った場合に加算する。

医療的ケア児の調剤においてはハイリスク医薬品が多く(高額の場合が多い)、その子どもの状態に合わせて処方が変更になるため不動在庫になりやすい。胃瘻・腸瘻の場合、一包化はもちろん、粉砕のような製剤加工が必要になる場合もある。私の薬局でも数名分を調剤しているが、相当の時間を要し、確実に薬剤師一人の手を取られてしまう。介護保険でもないため、病院からの処方箋の場合、医師から訪問指示をいただかないと訪問してもサービスになってしまうこともあった。保健所から依頼されるケースや、ご家族が薬局のHPを見て直接依頼してこられるケースが多かった。
特に他市から転入してきた方は、どの薬局が対応してくれるのかが分からず困るようだ。家族からお薬手帳を見せてもらい、なるべくそれまでと同じように調剤する。時には以前に調剤していた薬局に問い合わせて、調剤方法を確認する等の連携を取る。また訪問看護師が訪問しているケースが多いので、薬について訪問看護ステーションとの連携も必要になる。

【社会的弱者とは】

医療的ケア児の他にも「社会的弱者」となる方たちには
  •  認知症
  •  知的障害者
  •  身体障害者
  •  独居高齢者
  •  失業者
  •  精神障害者
などが考えられる。

精神障害者とは統合失調症、気分障害(うつ病・躁うつ病)、てんかん、依存症、高次脳機能障害が代表的である。ここ数十年で、精神障害のある方の退院を促し、地域社会で暮らしていけるように支援する動きになっているが、コロナ禍での気分の落ち込みからか、受診自体ができなくなっているケースや、せっかく依存から立ち直っていたのに元に戻ってしまったケースもある。だが、一見しただけでは疾患がわからないため放置される可能性がある。ドクターが往診していたのにプツンと途切れたので医師に理由を聞くと、患者本人が往診や薬を受け付けない、または家族が往診を拒否または諦めてしまうケースもある。

いずれも受診(来局)間隔が空いた時点で薬局からフォローを行い、ソーシャルワーカー・カウンセラー・精神科医で構成される集学的チームによる個別化したサービスの提供が必要になると思うが、まずは保健所に繋げることを頭に置いておきたい。

薬局が患者・家族・行政・医療機関からの信頼を得るには、たとえ効率的ではないとしても「この家族の役に立ちたい」「このお母さんに安心感を届けたい」という医療者としての使命感と倫理観が欠かせないのではないだろうか。


【2022.6月号 Vol.313 保険薬局情報ダイジェスト】