保険薬局
「薬剤師不足の地域は給料が高い」説は本当か?
薬剤師の平均年収は
株式会社メデュアクト 代表・薬剤師 流石 学令和2年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は565.1万円(人口10万人あたり病院・薬局薬剤師数142.7名)となっている。
人口あたりの薬剤師が最も多い東京都の平均年収は、508.0万円(同178.6名)。東京都は全国で最も平均年収の高いエリアだが、薬剤師に限れば、同資格者全体の平均年収を1割以上も下回っている。東京都の従業員10名以上の企業における平均年収は582.4万円であり、薬剤師の平均年収よりも高い。薬剤師は年収が高いというイメージを世間一般から持たれがちだが、実は場所によっては、その地域の平均ラインに満たないのが実状だ。
しかし、東京都の隣にある神奈川県になると様相が異なる。神奈川県は平均年収593.3万円(同163.5名)。人口10万人あたりの薬剤師数は、全国平均をおよそ15%上回り、薬剤師が比較的潤沢にいるエリアだが、平均年収も全国平均を上回っている。
東京都と隣接している他の県では、埼玉県564.0万円(同137.7名)、千葉県548.7万円(同144.7名)、茨城県608.4万円(同133.3名)、山梨県579.4万円(同135.7名)と、いずれも東京都の平均年収を上回っている。
関西圏においても同様の傾向がある。大阪府は520.4万円(同152.4名)と全国平均より低く、隣接する奈良県569.1万円(同114.4名)、和歌山県544.5万円(同128.3万円)、兵庫県556.6万円(同170.2名)の方が高い。
この傾向の要因にはストロー現象が考えられる。ストロー現象とは、交通網の整備によって、それまで地域の拠点だった小都市が、経路上の大都市の経済圏に取り込まれ、ヒト・モノ・カネがより求心力のある大都市に吸い取られる現象をいう。患者の受療行動は都会のある方面に流れていく傾向があるが、仕事探しにおいても同様で、大都市のある方面で探そうとする。
また大手チェーン薬局は画一的な給与体系が確立されているため、特殊なスキルを評価されてヘッドハンティング的に転職にする場合を除けば、通常の採用では相場から外れた条件が提示されることは少ない。一方、中小規模の薬局では、給与体系が定められていないことも多く、大手チェーン薬局と比較して採用力も強くないため、好条件を出して薬剤師を採用することが多い。極端な場合、経営者の「エイヤ!」で高い給与条件が決まってしまうこともある。平均年収の高いエリアは、地場の中小規模の薬局が相対的に強いエリアと見ることもできる。
圏域単位では、東北は全体的に年収が高い傾向があり、逆に九州は低い傾向がある。東北は、人口10万人あたりの薬剤師数が少なく、薬剤師が不足している地域は給料が高い説を裏付ける代表的な圏域といえる。
逆に九州はどうだろうか。分布図を見てわかる通り、九州はけっして薬剤師が多いわけではない。人口10万人あたりの薬剤師数が全国平均を上回っているのは福岡県と佐賀県だけだ。実は薬剤師不足の地域は給料が高い説は、九州では成り立たない。
要因として薬局店舗数の多さが考えられる。
人口10万人あたり薬局数は、沖縄県を除く九州圏域は全体的に多い。薬剤師数は少ないのに、薬局の店舗数は多いという状況だ。佐賀県にいたっては、人口あたりの薬局数が全国トップである。店舗数が多ければ当然処方箋も分散してしまうため、人件費にあてがうための収益も減少してしまう。結果として薬剤師の平均年収が低くなっていると推察できる。
その中で際立つのが沖縄県だろう。人口10万人あたりの薬剤師数がワーストレベルで少ないにもかかわらず、平均年収が最も低い。薬局数も多くない。沖縄県は、気候やマリンスポーツを求めて移住を希望する人が多く、ワークライフバランスを重視したキャリア選択が、平均年収が上がらない原因にもなっているようだ。
【2022.6月号 Vol.313 保険薬局情報ダイジェスト】
人口あたりの薬剤師が最も多い東京都の平均年収は、508.0万円(同178.6名)。東京都は全国で最も平均年収の高いエリアだが、薬剤師に限れば、同資格者全体の平均年収を1割以上も下回っている。東京都の従業員10名以上の企業における平均年収は582.4万円であり、薬剤師の平均年収よりも高い。薬剤師は年収が高いというイメージを世間一般から持たれがちだが、実は場所によっては、その地域の平均ラインに満たないのが実状だ。
しかし、東京都の隣にある神奈川県になると様相が異なる。神奈川県は平均年収593.3万円(同163.5名)。人口10万人あたりの薬剤師数は、全国平均をおよそ15%上回り、薬剤師が比較的潤沢にいるエリアだが、平均年収も全国平均を上回っている。
東京都と隣接している他の県では、埼玉県564.0万円(同137.7名)、千葉県548.7万円(同144.7名)、茨城県608.4万円(同133.3名)、山梨県579.4万円(同135.7名)と、いずれも東京都の平均年収を上回っている。
関西圏においても同様の傾向がある。大阪府は520.4万円(同152.4名)と全国平均より低く、隣接する奈良県569.1万円(同114.4名)、和歌山県544.5万円(同128.3万円)、兵庫県556.6万円(同170.2名)の方が高い。
この傾向の要因にはストロー現象が考えられる。ストロー現象とは、交通網の整備によって、それまで地域の拠点だった小都市が、経路上の大都市の経済圏に取り込まれ、ヒト・モノ・カネがより求心力のある大都市に吸い取られる現象をいう。患者の受療行動は都会のある方面に流れていく傾向があるが、仕事探しにおいても同様で、大都市のある方面で探そうとする。
また大手チェーン薬局は画一的な給与体系が確立されているため、特殊なスキルを評価されてヘッドハンティング的に転職にする場合を除けば、通常の採用では相場から外れた条件が提示されることは少ない。一方、中小規模の薬局では、給与体系が定められていないことも多く、大手チェーン薬局と比較して採用力も強くないため、好条件を出して薬剤師を採用することが多い。極端な場合、経営者の「エイヤ!」で高い給与条件が決まってしまうこともある。平均年収の高いエリアは、地場の中小規模の薬局が相対的に強いエリアと見ることもできる。
圏域単位では、東北は全体的に年収が高い傾向があり、逆に九州は低い傾向がある。東北は、人口10万人あたりの薬剤師数が少なく、薬剤師が不足している地域は給料が高い説を裏付ける代表的な圏域といえる。
逆に九州はどうだろうか。分布図を見てわかる通り、九州はけっして薬剤師が多いわけではない。人口10万人あたりの薬剤師数が全国平均を上回っているのは福岡県と佐賀県だけだ。実は薬剤師不足の地域は給料が高い説は、九州では成り立たない。
要因として薬局店舗数の多さが考えられる。
人口10万人あたり薬局数は、沖縄県を除く九州圏域は全体的に多い。薬剤師数は少ないのに、薬局の店舗数は多いという状況だ。佐賀県にいたっては、人口あたりの薬局数が全国トップである。店舗数が多ければ当然処方箋も分散してしまうため、人件費にあてがうための収益も減少してしまう。結果として薬剤師の平均年収が低くなっていると推察できる。
その中で際立つのが沖縄県だろう。人口10万人あたりの薬剤師数がワーストレベルで少ないにもかかわらず、平均年収が最も低い。薬局数も多くない。沖縄県は、気候やマリンスポーツを求めて移住を希望する人が多く、ワークライフバランスを重視したキャリア選択が、平均年収が上がらない原因にもなっているようだ。
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