保険薬局

変貌する人材サービス~雇用仲介機能のイメージから考える~

ITサービスの発展による人材サービスの多様化
株式会社ウィーク  シニアコンサルタント 長谷川 周重
人材サービスが近年大きく変化している。厚生労働省にて労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会が行われ、2021年1月6日より計17回に渡って議論がされた。第1回の資料4のP20(下記、図)において、雇用仲介機能のイメージが示されており、現在の人材サービスの現状が非常にわかりやすく整理されていたので、是非ご覧いただきたい。



1.ITサービスの発展による人材サービスの多様化

資料のなかでまず目を引くのが求人誌の衰退とインターネットを活用した求人メディア、利用者DB、SNS等の進展である。一昔前の人材サービスは限定的で、対象者が各々重ならない棲み分けができていた。しかし近年はIT化が進み、求人情報に垣根がなくなり情報が交錯するようになった。さらに、利用者DB、SNSといったある目的で特定の個人ユーザーを集客したのち、その個人に対して求人紹介を提供するサービスが生まれ、その会員に対して広告やスカウトができるビジネスモデルが生まれた。元々スカウトサービスは人材紹介会社が主に活用していた行為ではあったが、昨今は企業(主に人事)が直接求職者にスカウトを行えるサービスとして拡大し始めている。

2.職業紹介事業者の取扱領域が広がる

次に、職業紹介事業者も変わった。有料の職業紹介事業者は、以前はホワイトカラーを中心として年収帯も平均年収よりも高い層ではあったが、IT化の進展により求職者獲得が容易にできるようになった。結果として、取り扱い求人の年収下限の引き下げや職種が拡大した。近年、有料職業紹介事業者は増加している。2021年度集計で有料職業紹介事業者数は27,899件となり10年連続で増加している。
このような背景に伴い職業紹介事業者も多様化が進んでいるが、事業者の増加により膨大な求人がインターネット上に公開される弊害も起きている。例えば職業紹介事業者に求人を依頼すると、非公開の指示をしない限り、ほとんどの会社が受領した求人票を元に、求職者獲得のための広告を代わりに作成し、求人をインターネット上に公開する。場合により社名非公開程度の措置はあるものの、求人内容から募集元の求人企業がどこであるのかは容易にわかる。また、その求人がアグリゲータサービスの求人まとめサイトに転用されて、別のところで掲載されていることも多い。つまり、IT化の進展により求人広告そのものの価値は薄れており、意図しない、認知をしていないサイトにまで掲載されてしまっている現状がある。求職者側にとってみれば同じ求人のはずなのに、内容が異なっているという指摘がしばしば起こり、時にはクレームに発展する場合もある。

そもそもこの問題は求人管理、メンテナンスの問題だが、ある企業で私が採用コンサルティングをした際にヒアリングをしたところ、人事が自社の求人のコントロールができていないという課題があった。媒体毎に求人内容の差異があり、求人依頼、掲載を行った後のメンテナンスができないまま募集求人が放置されていた。この問題の原因は、端的に人事が忙しく手が回らないことである。

3.成果報酬型の求人作成、スカウト代行の普及

上記の問題を解決するために、求人媒体会社による成果報酬で求人広告の作成やスカウトの代行を行うサービスが広まりつつある。先ほどのように人事担当者が忙しく、スカウトを打てる時間を確保できないことを解決するサービスである。

しかし、これも利用するサービス提供会社が1社であれば便利で効果的ではあるが、メディアミックスで複数の媒体を既に利用している場合や、スカウトを折角してもらっても質問対応の工数が増えてしまい、オペレーション効率が課題となる可能性がある。そのため、さらにもう一つの手法として以前から存在する採用代行サービスの活用も1つである。このメリットは、特定媒体に限らず人事担当者の代わりとして横断的に対応、管理ができる点にある。どこまでの代行業務を依頼するかはさまざまだが、費用対効果をみてオリジナルで代行したい内容を検討することができるのでお勧めである。

今回は、変貌する人材サービスの全体像を紹介した。人材サービスはそれぞれに特徴や機能が異なっている。それらを上手く使い分けて効率的に採用のチャネル戦略を組み立てる必要がある。次回は、調剤薬局における職種別採用チャネル戦略について解説をします。


【2023.8月号 Vol.327 保険薬局情報ダイジェスト】