保険薬局

薬局のBCPを作成していますか?

災害時の業務継続のためのBCPについて
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
薬局で事業継続計画(BCP)を作成していますか?
薬局は地域医療において不可欠な存在であり、災害時の迅速な業務復旧が求められます。BCPは、自然災害やパンデミックなど予期せぬ事態に対応するための“事業継続計画”を指します。この計画は、非常時における薬局の役割を明確にし、効果的な対応を可能にするために重要です。義務化されることに伴い、作成の準備にとりかかっている方も多いのではないでしょうか。今回は、BCPの概要について簡潔にまとめますので、参考にしてください。

■BCPってなに?

そもそもBCPとは、Business Continuity Planning(事業継続計画)の略称で、自然災害やパンデミック、社会的混乱などの緊急事態においても、業務を継続し、損害を最小限に抑えるための方法や手段を取り決めておく事前計画を指します。
特に医薬分業が進んでいる現代では、薬局は地域医療における医薬品供給の中心として不可欠です。災害発生時における薬局の業務継続や早期復旧の方法を定めることは、非常に重要です。

■BCP策定の必要性

介護報酬の改定に伴い、BCP(事業継続計画)の策定が義務化され、2024年3月までに薬局(みなし)を含む介護事業所でBCPの作成が必要となりました。さらに、災害発生時の対応策を明記した体制や手順書の作成は、連携強化加算の施設基準にも盛り込まれています。
これらの制度的な要請に加えて、BCPは単なる危機管理を超え、緊急事態においても地域社会への重要な医療サービスを提供する薬局の責任を果たすための重要な指針となります。このことを念頭に置いて、BCPの作成に取り組む必要があります。

■BCPで求められる内容

さまざまな資料がネットでも閲覧可能ですが、東京都保健医療局が作成した『災害時の薬局業務運営の手引き~薬局BCP・地域連携の指針~』は、BCP策定においてとても参考になる資料です。この指針では、BCP作成のための8つのステップが示されています。①基本方針の策定、②被害の想定、③業務の把握と優先業務の選定、④業務資源の把握、⑤リスクの評価、⑥業務継続目標の設定、⑦対策の検討、⑧BCP文書の作成――です。各項目には、具体的な内容記載の指針も提供されており、BCP策定の際の参考にすることをお勧めします。
また、県の地域防災計画や、薬局が所在する区市町村の地域防災計画を読んで、地域の災害医療体制について知ることも大切です。その上で、災害時にどのような対応をしなければならないかを考える必要があります。

■現場で運用可能かどうか

BCPを策定する際には、計画が実際の現場で適切に機能するかどうかを重視することが不可欠です。形式的なBCPでは、災害時に内容が十分に理解されていない、または実務に即していないために、逆に混乱を招く恐れがあります。そのため、BCPは現場で実効性を持つものである必要があります。
また、店舗での共有と研修を行うことも非常に重要です。BCPを体裁だけ整えた単なる書類作成と捉えるのではなく、実際の運用に焦点を当てることが、忘れてはいけない大切な視点だと思います。

■まとめ

今回は、災害時の業務継続のためのBCPについて概説しました。災害はいつどこで発生するかは予測できません。石川県能登地方を震源とする地震により、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
平時に策定した基準と方針は、緊急事態発生時に迅速かつ適切な対応を可能にします。薬局は災害時も地域社会に重要な医療サービスを提供する責任があります。そのため、BCPの重要性を改めて理解し、適切な計画を策定することが求められます。
私自身も、BCPの重要性をあらためて見つめ直し、適切な指針を作成していきたいと思います。





【2024.2月号 Vol.333 保険薬局情報ダイジェスト】