保険薬局

業界激震?!再編が加速化

ドラッグストア業界の再編
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
大手ドラッグストア同士の経営統合、ドラッグストアと大手チェーン薬局の経営統合など、最近のニュースにはとても驚かされます。今回は、現在この業界で何が起こっているのか、最近の出来事を整理し、これからどんな展開が考えられるかを考察してみます。

■ドラッグストア業界の再編

2021年にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合し、マツキヨココカラ&カンパニーが誕生したことは大きなニュースでした。その後は比較的落ち着いていましたが、最近になって売上高1位のウェルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが経営統合に向けて動き出したというニュースが出ました。

この統合を主導しているのはウェルシアの親会社であるイオンです。実現すれば、売上高2兆円規模の巨大ドラッグストアチェーンが誕生することになります。市場が飽和傾向にあり、低成長期に入っている中、統合によって大規模なスケールメリットを獲得することで、大幅なコスト削減と収益力を目指すというコメントが出されています。また、成長を見込める中国や東南アジアでの店舗展開を考えているとのことです。

■ドラッグストア×大手チェーン薬局の動き

先日、調剤併設型ドラッグストアの展開を軸とするスギ薬局を運営するスギホールディングスが、兵庫県で薬局を展開するI&Hを連結子会社化すると発表しました。売上高を単純合算すると9,000億円を超え、ウェルシア&ツルハやマツキヨココカラファインに次ぐ企業となります。
面薬局を主力とする企業と、門前薬局を主力とする企業の組み合わせからどのような薬局が誕生するのか、注目したいところです。

■業界の再編が盛んになっている理由

ドラッグストアが日本で始まったのは1970年代と言われています。1990年代に入ると、ドラッグストアの利用が増え、市場も拡大しました。その後、2000年代に入ると競争が激化し、力のある企業がM&A戦略を通じて競合他社を傘下に入れることで、企業数は減少しましたが、いくつかの企業はさらなる成長を遂げてきました。
事業ライフサイクルとして、市場は導入期、成長期、成熟期、衰退期と推移します。ドラッグストア業界の場合、現在はおそらく成熟期に差し掛かっていると考えられます。この厳しい競争社会で今後も成長を遂げるには、再編が重要な手段となっています。
また、コンビニやスーパーとの競争が激しくなっていること、薬剤師の確保が困難で出店の足かせとなっていることにも、経営統合のメリットがあります。さらに、日本の高齢化や人口減少により、国内市場での成長が限定的であるため、より強固な企業体としてアジアや世界市場への展開も視野に入れていると考えられます。

■今後の可能性

大手チェーンドラッグストア間の統合が始まったことを皮切りに、業界再編が今後さらに活発になることは間違いありません。また、薬局業界も、医薬分業が進み、新規開業数が減っていることから成熟期から衰退期に差し掛かる市場です。企業が成長する過程としての統合が進み、業界再編は加速すると考えられます。今回のような、面薬局としての強みを持つドラッグストアと、門前薬局の強みを持つ企業の統合は、大きな相乗効果が期待されますので、ますます進んでいくことでしょう。

統合が進み大手企業の力が増す中でも、小規模薬局だからこその大手企業に負けない強みが存在します。それは地域に根差し、柔軟に変化に対応していく能力です。大手企業はその規模の大きさから動きが鈍くなりがちで、店舗に独自性を持たせることや地域社会との結びつきを強化することが難しくなります。しかし、小規模薬局ならではの強みを活かし、地域密着型のサービスを提ることで、大手にはない価値を見出すことができます。私たちが地域に根差しできることは何か、日々自身に問いながら仕事に向かい合っていきたいものです。




【2024.4月号 Vol.335 保険薬局情報ダイジェスト】