保険薬局
なぜ中途薬剤師の応募がこないのか。~外的要因編~
薬局に薬剤師がいない
株式会社ウィーク 長谷川 周重薬剤師の応募がない。急務で探して欲しい。薬局経営者や人事担当者から、そんな相談の連絡が入る。
「薬局に薬剤師がいない」は、経営上致命的なため、その思いは切実だ。しかし、そう簡単に採用ができない現状がある。
では、なぜ、そもそも貴店に採用したい薬剤師の応募がこないのであろうか。その要因は、大きく分けると外的と内的の2つある。
まず外的な要因として、釈迦に説法で大変恐縮ではあるが思考整理として本編をご一読していただければと思う。厚生労働省は2021年3月17日、2020年末時点の「医師・歯科医師・薬剤師統計」を発表した。それによると、薬剤師数は約32万人(過去最多)であった。採用が難しいと言われている医師数は約34万人(過去最多)であり、薬剤師は、医師に比べても少なく、絶対数が限られていることに他ならない。さらに一番大きな働き口の受け皿となっている薬局数は、2 019年度末時点で、6万店を超えており毎年5 0 0店舗ほどずつ増加し続けている。
一方で、新たな薬剤師(卒業生)の就業状況をみると、多少増減はあるものの年間約1万人程度でほぼ横ばいに推移しており、そのうち約半数が薬局に就職している。また、2020年末現在、70歳以上の薬剤師数は約1万2千人で年々増加している。ちなみに60 代は約3万3千人だ。現役でご活躍中の方も大勢いらっしゃるとは思うが、中途採用において積極的に60 代70 代以上を採用する店舗はほとんどなく、できる限り若い方を採用したいというニーズが高い。
したがって、雇用したい新店舗が増加するなか、ベテラン薬剤師と若手の入れ替えで新陳代謝を図りたくても、新米の若手薬剤師は年間1万人となれば、薬剤師の採用は常時取り合いの状況になるのは必至である。
さらに薬局薬剤師を採用する場合、難しくしているのが職住接近の力学が発生することだ。職住接近とは、職場を自宅近くの場所にすることであるが、特に薬剤師の場合は自宅から近い就業先を選ぶ傾向が強く、通勤時間が30分以内、長くとも1時間以内を希望する方が多い。つまり、ただでさえ限られた薬剤師の人数の中で、さらに限られたエリアに住んでいる薬剤師をターゲット(マーケット)にしなければならない。
もちろん、他県・遠方からの誘致の可能性もあるが、基本原則は地元に何人の薬剤師が存在しているのか、さらに募集のタイミングが転職者のタイミングと合うのかといったところが重要になってくる。
このような背景から、準備しておかなければならないことは、ご自身の店舗のエリア内にある競合薬局の求人内容を事前チェックすることである。いわゆる競合分析をする必要がある。そして、その求人と自店が比較されて求職者が応募してくることを想定して、事前に自社の求人内容や就業規則、面接対策などを準備しておくことが望ましい。
とはいえ、そんなの面倒くさい、とりあえず来てもらえたら……という声が聞こえる。
その結果、多くの店舗・企業では窮地を打開するために、人材紹介会社に連絡し、何とか求職者情報だけでも回して欲しいという依頼をしているのではないかと思う。
ところがここにも外的な要因がある。それは、人材紹介会社による応募フィルターが入ってしまうということだ。特に多くの薬剤師を囲い込んでいる紹介会社や、そもそも求職者ファーストでもない人材紹介会社であれば、自社の売上を鑑みて応募先や求職者をコントロールしている可能性がある。そのため、折角面接をして内定を出しても決定に至らないことが多分に起きているのが現状である。
では、それを打開するためにどうしたらよいのか、例えば、採用困難とされるドクター紹介は紹介手数料が40%はくだらない。50%のところもあると聞く。まさにヘッドハンティングの世界だ。また、昨今ではIT人材の確保や、優秀な人材の取り合いであるが、実は優秀な人材を確保しようとすればするほど、民間企業では優先的に求職者を呼び込むために高い手数料やキャンペーンによる手数料増額によって採用を行っている。
薬剤師の中途採用市場ではそこまで起きていないと思うが、もしかしたら水面下では既にそのような企業があり、優先的に確実に薬剤師を獲得しているところがあるかもしれない。これはこれで外的要因をなくすための1つの戦術であるため否定はしないが、おすすめはしない。しかし、資本力の差で優先順位がつけられている現実を知っておく必要はある。近年、新型コロナウィルス感染症の影響で一時は手数料率を下げてほしいという企業が増加したところではあるが、需要と供給のバランスからみると新型コロナ以前の手数料率に戻るのではないかと予測する。
以上、外的要因編であるが、事業計画書は作っても採用計画、採用戦略、競合分析をしている企業は少ない。しかし、労働集約型モデルにおいて人事・採用戦略は極めて重要である。来月は、内的な要因について述べたいと思う。これは採用活動の根幹となる改善ポイントである。
【2022.7月号 Vol.314 保険薬局情報ダイジェスト】
「薬局に薬剤師がいない」は、経営上致命的なため、その思いは切実だ。しかし、そう簡単に採用ができない現状がある。
では、なぜ、そもそも貴店に採用したい薬剤師の応募がこないのであろうか。その要因は、大きく分けると外的と内的の2つある。
まず外的な要因として、釈迦に説法で大変恐縮ではあるが思考整理として本編をご一読していただければと思う。厚生労働省は2021年3月17日、2020年末時点の「医師・歯科医師・薬剤師統計」を発表した。それによると、薬剤師数は約32万人(過去最多)であった。採用が難しいと言われている医師数は約34万人(過去最多)であり、薬剤師は、医師に比べても少なく、絶対数が限られていることに他ならない。さらに一番大きな働き口の受け皿となっている薬局数は、2 019年度末時点で、6万店を超えており毎年5 0 0店舗ほどずつ増加し続けている。
一方で、新たな薬剤師(卒業生)の就業状況をみると、多少増減はあるものの年間約1万人程度でほぼ横ばいに推移しており、そのうち約半数が薬局に就職している。また、2020年末現在、70歳以上の薬剤師数は約1万2千人で年々増加している。ちなみに60 代は約3万3千人だ。現役でご活躍中の方も大勢いらっしゃるとは思うが、中途採用において積極的に60 代70 代以上を採用する店舗はほとんどなく、できる限り若い方を採用したいというニーズが高い。
したがって、雇用したい新店舗が増加するなか、ベテラン薬剤師と若手の入れ替えで新陳代謝を図りたくても、新米の若手薬剤師は年間1万人となれば、薬剤師の採用は常時取り合いの状況になるのは必至である。
さらに薬局薬剤師を採用する場合、難しくしているのが職住接近の力学が発生することだ。職住接近とは、職場を自宅近くの場所にすることであるが、特に薬剤師の場合は自宅から近い就業先を選ぶ傾向が強く、通勤時間が30分以内、長くとも1時間以内を希望する方が多い。つまり、ただでさえ限られた薬剤師の人数の中で、さらに限られたエリアに住んでいる薬剤師をターゲット(マーケット)にしなければならない。
もちろん、他県・遠方からの誘致の可能性もあるが、基本原則は地元に何人の薬剤師が存在しているのか、さらに募集のタイミングが転職者のタイミングと合うのかといったところが重要になってくる。
このような背景から、準備しておかなければならないことは、ご自身の店舗のエリア内にある競合薬局の求人内容を事前チェックすることである。いわゆる競合分析をする必要がある。そして、その求人と自店が比較されて求職者が応募してくることを想定して、事前に自社の求人内容や就業規則、面接対策などを準備しておくことが望ましい。
とはいえ、そんなの面倒くさい、とりあえず来てもらえたら……という声が聞こえる。
その結果、多くの店舗・企業では窮地を打開するために、人材紹介会社に連絡し、何とか求職者情報だけでも回して欲しいという依頼をしているのではないかと思う。
ところがここにも外的な要因がある。それは、人材紹介会社による応募フィルターが入ってしまうということだ。特に多くの薬剤師を囲い込んでいる紹介会社や、そもそも求職者ファーストでもない人材紹介会社であれば、自社の売上を鑑みて応募先や求職者をコントロールしている可能性がある。そのため、折角面接をして内定を出しても決定に至らないことが多分に起きているのが現状である。
では、それを打開するためにどうしたらよいのか、例えば、採用困難とされるドクター紹介は紹介手数料が40%はくだらない。50%のところもあると聞く。まさにヘッドハンティングの世界だ。また、昨今ではIT人材の確保や、優秀な人材の取り合いであるが、実は優秀な人材を確保しようとすればするほど、民間企業では優先的に求職者を呼び込むために高い手数料やキャンペーンによる手数料増額によって採用を行っている。
薬剤師の中途採用市場ではそこまで起きていないと思うが、もしかしたら水面下では既にそのような企業があり、優先的に確実に薬剤師を獲得しているところがあるかもしれない。これはこれで外的要因をなくすための1つの戦術であるため否定はしないが、おすすめはしない。しかし、資本力の差で優先順位がつけられている現実を知っておく必要はある。近年、新型コロナウィルス感染症の影響で一時は手数料率を下げてほしいという企業が増加したところではあるが、需要と供給のバランスからみると新型コロナ以前の手数料率に戻るのではないかと予測する。
以上、外的要因編であるが、事業計画書は作っても採用計画、採用戦略、競合分析をしている企業は少ない。しかし、労働集約型モデルにおいて人事・採用戦略は極めて重要である。来月は、内的な要因について述べたいと思う。これは採用活動の根幹となる改善ポイントである。
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