保険薬局

地域薬剤師会の役割

「薬剤師の将来ビジョン」
開局薬剤師 岡村 俊子
平成25年に日本薬剤師会が策定した「薬剤師の将来ビジョン」には2025年(平成37年)の薬剤師像が書かれている。
 1960年(昭和35年)に制定された薬剤師法第一条には「調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」とあり、ただ「調剤」に関しては第五世代では「カウンセリング・後発医薬品の調剤・在宅業務・モニタリング・他職種連携・コンサルテーション」が求められている。令和4年度調剤報酬改定で「調剤」は調剤技術料:「調剤基本料+薬剤調製料」、薬学管理料:「調剤管理料+服薬管理指導料」に分けられた。そして薬剤調製については外部委託にしてしまおうという議論がおこり、「第7回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」での議論では「一包化」に関しては賛成が多い・・となったようで、いつもの事ながら、足がかりの一歩を許したような形だ。調剤において薬剤師に求められる任務は「カウンセリング&モニタリング&コンサルテーション」であることが明確化されたわけだ。実際にこれを行うには広範囲にわたる薬学的知識と深い洞察力、他の職域と積極的に関わっていこうとする行動力・説得力が必要だと思う。感染制御チーム、緩和チーム、褥瘡対策チーム、栄養サポートチームの一員として専門的知識を持って貢献することが求められる。

薬学教育4年制の薬剤師の中にもそれらの能力を持っている薬剤師は多く存在していると思うが、薬学教育6年制の薬剤師は「当たり前にできること」を求められて医療薬学、特に長期の実務実習を行い、医療人としての倫理観と、さらなる高度知識と技術を習得できる教育を施されてきたはずであり、薬学生実務実習指導薬剤師として自らの経験を活かして指導に当たってもらいたいと思う。また医療の担い手としての自覚を持った「街の科学者」として地域社会への貢献を行ってほしい。調剤室での調剤(薬剤調製)と通り一遍の知識で薬剤師と認められる時代は終わったのだ。知識だけであればスマホの中にもある。

薬剤師は調剤薬局だけに存在しているわけではなく、薬局薬剤師・病院薬剤師・製薬薬剤師・卸薬剤師・学校薬剤師・大学教員・行政薬剤師等に分かれている。 
  •  薬-薬連携( 薬局薬剤師―病院薬剤師)は主にセミナー共同開催による顔の見える関係の構築という形で進んできたと思うが、今後は入退院時共同指導の実施による診療情報の共有化に進化しなくてはいけない。
  •  製薬薬剤師・卸薬剤師との連携は医薬品の安定・安全な供給に尽きると思うが、残念ながら今は不安定だ。
  •  学校薬剤師は地域薬剤師会が行政から受託し学校薬剤師活動を行っていることが多いが、単に環境検査だけでなく学校における健康診断や保健指導、薬物指導を行うことが求められる。ただ薬局業務との兼業になる場合が多いため、薬局開設者と職場の理解が必要だ。
  •  薬局薬剤師―行政薬剤師とはインフルエンザや新型コロナのような感染症において感染制御チームを組むことになるし、災害のような有事においては地域薬剤師会と行政は密な連携を組むことになるので日ごろからのコミュニケーションが欠かせない。
  •  大学教員との交流・連携が活発化し、薬局や病院をフィードとした大学と地域薬剤師会との共同研究・調査が日常的に行われている。
私は地域のハブ薬局は地域薬剤師会が担うべきだと思う。
なぜなら地域薬剤師会は薬剤師職能団体であり、様々な形態の薬局薬剤師が在籍している。薬局以外の薬剤師との関わりを持ち、非営利目的の公益法人として純粋に地域市民のために動くことができる。

大手チェーンも大手ドラッグも中小薬局の薬剤師が一つの目的のために協働できるとしたら、その中核として地域薬剤師会しかないと考えるがいかがであろうか。


【2022.8月号 Vol.315 保険薬局情報ダイジェスト】