保険薬局

薬局は何をしてくれるところですか?

薬局に求められる役割を改めて考える
開局薬剤師 岡村 俊子
先日、私が居住している中核市の市長と面談する機会をいただいた。今回のテーマは、その際に市長がおっしゃった言葉だ。市長は私とほぼ同年代だが、テニスやスキー、ダイビングがお好きでブログを書き、Facebook、Twitterに投稿するアクティブな方なので病気や薬局には縁がなさそうだった。
市長が続けておっしゃるには「病院やクリニックは病気になったら診てもらうか、検(健)診に行くところ」「歯医者は歯が痛くなったら治療してもらうか、検(健)診に行くところ」「でも薬局は病院や歯医者からもらった処方箋を持って行って薬をもらうところ・・・くらいしかピンとこないんだよね・・・」。

この言葉は一般市民の薬局への認識を率直に表していると思う。すべての団塊の世代が後期高齢者になる2025年にむけて「地域包括ケアの必要性」「患者のための薬局ビジョン」が唱えられ、私たち薬局は生き残りのヒントとして指針に沿って努力してきたはずだ。それでも一般市民の目に映る薬局の姿は変わらないのだ。そこでこれからの薬局に求められる役割を改めて考えた。

①門前薬局から地域連携薬局へ
受診時だけなら門前薬局が早くて薬の在庫もあるが、他医療機関の薬も併せて平時から健康相談にのってもらえる近場の薬局へ。

②専門性を持った薬剤師の育成
薬局には抗がん剤投与等の高度薬学管理機能も求められている。がん患者は今後も増え続けることが予想され、地域の薬局で薬を受け取る場合も多いので専門医療機関連携薬局だけでなく、地域の薬局も高度な知識・技術と臨床経験を持った薬剤師を育てないといけない。

③健康相談ステーションとしての役割
健康サポート薬局のように各薬局でそれぞれ健康相談に取り組んでいると思う。例えば局内ポスター、SNSやホームページ等のオンライン、医薬品・サプリメント・それ以外の物販、健康弁当、介護相談など薬局の特色が出る。

④在宅医療に取り組む
在宅に取り組むとなると365日・24時間対応は避けては通れないが、在宅患者にとっては平日・お盆・年末年始は関係ないので患者のニーズとしてとらえないといけない。
ただ薬剤師の居宅療養管理指導料算定の伸びは顕著なので、介護医療費削減を目的とする議論、例えば外部委託のような効率化やオンライン服薬指導と薬剤師以外の補助を組み合わせるというような議論は続くと思う。

⑤感染症や災害時への対応力強化
この原稿を書いている7月31日は新型コロナウイルスのため大阪モデル「赤信号」点灯中で、大阪府ホームページでは「医療非常事態宣言」と大きく赤字で出ている。
地震は明日やってくるのか50年後にやってくるのかわからないが、新型コロナウイルスは今進行中だ。
一部の薬局は無料PCR検査・抗原定性検査所となり無症状者の検査に奮闘している。一般の来局患者と検査所は区別する必要があり、場所と人員配置・検査時間の確保が必要だが、薬局の機能を一つ加えた取り組みだ。
また新型コロナウイルス治療薬であるラゲブリオ(モルヌピラビル)やパキロビッドパック(ニルマトレルビル・リトナビル)は登録薬局が医療機関から送付された処方箋に基づき、電話やオンライン服薬指導した後、自局や配達業者を使って早急に患者宅に届けている。もちろん、夜間休日、時間外、緊急時対応だ。

⑥継続した取り組み
以上①~⑤について継続的な取り組みを行おうとするならば、薬局は長中期計画を立て、設備や人材・事業計画を立てていかないと急には対応できないし、一般市民からの信頼も得られない。世代により情報の取り入れ方は違うので、ターゲットとする世代の目に留まる情報発信が必要だ。
欠かせないのはオンラインに対応できることだ。今後どのような場面でオンラインが導入されてくるか私には予想もしにくい。だが2023年1月には電子処方箋化が予定されているし、大阪では新型コロナウイルス第7波による外来医療ひっ迫による医療機関の負担を緩和するために、感染疑いのある20~40代へのオンライン診療を開始した。薬局への処方はオンラインかFAXになるだろうが、これに対応できるかどうかでその薬局の本気度が試される。
「薬局はオンライン医療にも対応できます!」。今度、市長にお会いしたらお伝えすることにしよう。


【2022.9月号 Vol.316 保険薬局情報ダイジェスト】