組織・人材育成
職員に期待する行動を引き出すヒント
人事評価要素としての職員の期待像のレベル
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
先日、広報の専門家の方と話をしていたら、次のように述べられていました。
「病院の広報担当者は、広報誌を作ることが目的になってしまっているように感じるが、広報の本来の仕事は、パブリックリレーションであり、地域の人々との関係を深めることにある。したがって、自分は、広報誌を作る時には必ず地域の商店や公共機関などの取材記事を入れ、地域に出ていかなければ広報誌が完成できないようにしている」
この話を聴いた時に、3つのポイントがあると感じました。1つは、今までと違う少し難しいルールを課すこと、もう1つは、そのルールを守らなければ、スタッフが考えている目的を達成できないこと、そして最後に、広報誌というのは定期的に発行するものですから、何回かルールを守ることで習慣化することです。これにより、広報パーソンに期待する行動を引き出し、それを継続することで、広報パーソンとしての能力を育成することになるのだろうと感心しました。そこで今回は、この話をヒントに、人事評価の課題とその解決策について考えます。
「病院の広報担当者は、広報誌を作ることが目的になってしまっているように感じるが、広報の本来の仕事は、パブリックリレーションであり、地域の人々との関係を深めることにある。したがって、自分は、広報誌を作る時には必ず地域の商店や公共機関などの取材記事を入れ、地域に出ていかなければ広報誌が完成できないようにしている」
この話を聴いた時に、3つのポイントがあると感じました。1つは、今までと違う少し難しいルールを課すこと、もう1つは、そのルールを守らなければ、スタッフが考えている目的を達成できないこと、そして最後に、広報誌というのは定期的に発行するものですから、何回かルールを守ることで習慣化することです。これにより、広報パーソンに期待する行動を引き出し、それを継続することで、広報パーソンとしての能力を育成することになるのだろうと感心しました。そこで今回は、この話をヒントに、人事評価の課題とその解決策について考えます。
目標管理の課題とその解決策
人事評価に目標管理を導入しても、部署の目標やスタッフの目標設定が曖昧で上手く運用ができていないという相談を受けることがあります。管理職が部署の目標を立て、その達成に向けて各スタッフの目標が立てられ、スタッフみんなで部署の目標を達成する活動は、組織の業績を最大化させ、また、その過程でスタッフの能力は開発されると信じているため、人事評価制度を整備する際に目標管理を導入するようにしています。
しかし、実際の運用にあたっては、管理職によって、目標の立て方やレベルがまちまちであり、人事評価によって決められた部署目標を立てるというルールすら守られていないところもあります。まずは、管理職が部署のビジョンや目標を立てなければ始まりませんから、部署の目標を立てるという少し難しいルールを人事評価によって課すわけですが、それができていないと評価が悪くなるということだけでは、その行動を引き出せないとすれば、何らかの工夫が必要です。
そこで、冒頭の広報の例を参考とすれば、病院の年報の中に、各部署の年間目標やその達成結果等を記載して紹介する欄を設けることが、1つの方策として考えられます。目標管理の活動をしないと、年報に空欄ができてしまうわけですから、自ずと部署の目標を立て、達成に向けた活動にも力が入るのではないかと考えます。
また、年報に限らず、病院内で、部署目標や職員の目標を全員で共有する仕組みを作り、そこに必ず目標を掲載しなければいけないというルールにして、周りから全職員の目標が見られる状態にすることで、自らの目標を真剣に考え目標を立てるようになるのではないでしょうか。目標を共有することで、他の職員の目標で優れたものがあれば、それを真似て、自らの目標をブラッシュアップするという効果も期待できそうです。
しかし、実際の運用にあたっては、管理職によって、目標の立て方やレベルがまちまちであり、人事評価によって決められた部署目標を立てるというルールすら守られていないところもあります。まずは、管理職が部署のビジョンや目標を立てなければ始まりませんから、部署の目標を立てるという少し難しいルールを人事評価によって課すわけですが、それができていないと評価が悪くなるということだけでは、その行動を引き出せないとすれば、何らかの工夫が必要です。
そこで、冒頭の広報の例を参考とすれば、病院の年報の中に、各部署の年間目標やその達成結果等を記載して紹介する欄を設けることが、1つの方策として考えられます。目標管理の活動をしないと、年報に空欄ができてしまうわけですから、自ずと部署の目標を立て、達成に向けた活動にも力が入るのではないかと考えます。
また、年報に限らず、病院内で、部署目標や職員の目標を全員で共有する仕組みを作り、そこに必ず目標を掲載しなければいけないというルールにして、周りから全職員の目標が見られる状態にすることで、自らの目標を真剣に考え目標を立てるようになるのではないでしょうか。目標を共有することで、他の職員の目標で優れたものがあれば、それを真似て、自らの目標をブラッシュアップするという効果も期待できそうです。
人事評価要素としての職員の期待像のレベル
人事評価表を見ていると、 「遅刻はなかったか」 とか 「言葉遣い・態度はよかったか」 といった、服務規律的なことがたくさん書かれているものを見かけます。多くの最低限必要なルールを人事評価によって課すのも1つの方法でしょうが、あまりにも期待像が低いと、評価をする意味があるのか考えてしまいます。
冒頭の広報誌の作成を考えると、院内の情報だけを発信するのであれば、地域に出ていく必要はありません。地域の取材記事を必ず入れるというルールを守ることは、簡単にできることではないと思われます。同様に、人事評価で職員に期待する行動も、簡単にできることはできるだけ排除し、重要で簡単にはできないことを入れるべきではないかと考えます。例えば、 「遅刻はなかったか」 は人事評価では不要であり、遅刻をしたら給与を減らすことにしておけばよいだけです。もし、このようなことを人事評価の要素に入れるとすれば、 「決められた時間や約束を守る」 という評価要素であれば、病院職員としては簡単にはできないルールとなり、重要なルールということは言えそうです。病院の職員の行動を見ていると、決められた会議に出席しない、会議の時間に遅れてくるというのを頻繁に目にします。遅刻は駄目だけど、会議に遅れるのは許されるというのはおかしな話です。周りの人に迷惑をかけることでは同じです。
少し難しいルールを人事評価で課し、定期的にそれらが守られているかを報告させることで、部下に期待する行動が引き出され習慣化され、継続により能力も高まるものと考えます。
【2025. 2. 15 Vol.610 医業情報ダイジェスト】
冒頭の広報誌の作成を考えると、院内の情報だけを発信するのであれば、地域に出ていく必要はありません。地域の取材記事を必ず入れるというルールを守ることは、簡単にできることではないと思われます。同様に、人事評価で職員に期待する行動も、簡単にできることはできるだけ排除し、重要で簡単にはできないことを入れるべきではないかと考えます。例えば、 「遅刻はなかったか」 は人事評価では不要であり、遅刻をしたら給与を減らすことにしておけばよいだけです。もし、このようなことを人事評価の要素に入れるとすれば、 「決められた時間や約束を守る」 という評価要素であれば、病院職員としては簡単にはできないルールとなり、重要なルールということは言えそうです。病院の職員の行動を見ていると、決められた会議に出席しない、会議の時間に遅れてくるというのを頻繁に目にします。遅刻は駄目だけど、会議に遅れるのは許されるというのはおかしな話です。周りの人に迷惑をかけることでは同じです。
少し難しいルールを人事評価で課し、定期的にそれらが守られているかを報告させることで、部下に期待する行動が引き出され習慣化され、継続により能力も高まるものと考えます。
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2025-05-01
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2025-05-07【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催「ミクロとマクロのデータ分析による エビデンスある病院経営戦略」
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