組織・人材育成
私の役割は何? ~役割を意識することで気付く 「協働」 の意味~
組織力が高まるケーススタディ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
「あなたのお仕事は何ですか?」 と聞かれたら、皆さまはどのように答えますか?医療の現場において 「医者は診察・治療を担当する」 や 「看護師は医師の指示を受け患者をケアする」 「薬剤師は調剤や薬の説明をする」 「事務は請求業務を行う」 など、その職種がどのような仕事をしているのか、理解しているようで、いざ問われると言葉にすることが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。今回は、 「自分の役割」 を言語化することで気付きを得た組織のお話を共有いたします。
ケース
関西にある病院、クリニックを有する法人内で行われた、役職者を対象とした研修のお話です。この法人は組織として急成長・急拡大をしてきたことから事業所ごとの経営体制が統一されていないため、まずは役職者が組織として歩みを揃えられるよう、研修が企画されました。
この日の研修テーマは 「私の部署の役割」 。筆者を講師として、自分の部署は法人の中でどのような役割を果たしているのか言語化することに挑んだのでした。
筆者 「医療は分業(特定の仕事に関して複数人で分担して行うこと。1つの仕事を行うにあたって、複数人でそれぞれ役割を決めて、その役割ごとに作業をしていくため、各自は自分が任された担当だけをやっていく)ではなく協業(複数人で協力して特定の仕事に当たっていくこと。複数人で協力するという点は分業も同じだが、協業は協力をするだけなので、各自で担当を決めたりするとは限らない。全員で同じ作業をやるなど、協力の仕方に関してはその都度異なる)となる場面が多いと思います。色々な部署と協力して法人の仕事を行うためには、それぞれの部署がどのような役割を持っているのかを知り合うことは重要です。難しさを感じる人もおられるかもしれませんが、挑戦してみましょう!」
事前にそれぞれの部署が担っている役割、いわゆる業務分掌を書き出したものを持ち寄り、部署混合のグループに分かれて意見交換を行ったところ、以下のような感想が出ました。
この日の研修テーマは 「私の部署の役割」 。筆者を講師として、自分の部署は法人の中でどのような役割を果たしているのか言語化することに挑んだのでした。
筆者 「医療は分業(特定の仕事に関して複数人で分担して行うこと。1つの仕事を行うにあたって、複数人でそれぞれ役割を決めて、その役割ごとに作業をしていくため、各自は自分が任された担当だけをやっていく)ではなく協業(複数人で協力して特定の仕事に当たっていくこと。複数人で協力するという点は分業も同じだが、協業は協力をするだけなので、各自で担当を決めたりするとは限らない。全員で同じ作業をやるなど、協力の仕方に関してはその都度異なる)となる場面が多いと思います。色々な部署と協力して法人の仕事を行うためには、それぞれの部署がどのような役割を持っているのかを知り合うことは重要です。難しさを感じる人もおられるかもしれませんが、挑戦してみましょう!」
事前にそれぞれの部署が担っている役割、いわゆる業務分掌を書き出したものを持ち寄り、部署混合のグループに分かれて意見交換を行ったところ、以下のような感想が出ました。
- 同じ部署内で「自分たちの役割」について話をした時に、役職者同士でも認識が異なっていることが分かった
- 自分たちの法人は色々な役割を持つ人たちが集まって仕事が行われていることに、改めて気が付いた(=今まで他部署の業務を意識していなかったことに気が付いた)
- 他部署は違う業務だから参考にならないと思っていたが、業務に対する考え方について自部署の業務を見直すきっかけになることに気が付いた
- 言語化する必要があるのか最初は懐疑的だったが、改めて自部署や他部署の業務内容を眺めてみることで自分たちの法人全体の業務に興味を持つことができたため、仕事のモチベーションに繋がった!
- 自分たちの役割は教育や目標を設定するために必要な要素だと気が付いた
- 自分たちの業務を言語化することは 「この仕事はあなたの部署がやるべき」 と責任の押し付けをするための材料にするのではなく、 「今あなたの部署は忙しい時期だと聞いているのでこの部分なら私の部署でも手伝うことができる」 という協業するための材料として意識するものなのだと分かった
- 同じクリニックだが1つは請求業務を事業所独自で行っており、もう1つは法人本部が支援していることが分かった→法人全体として事業所の在り方を考えるきっかけになった
その後、事業所を超えた役職者の交流がそれまで以上に活発になり、 「事業所同士で協力をしながらより良い法人を作っていく」 という空気感が醸成されているとの報告が筆者のもとに届いたのでした。
このケース、どのような感想を持ちましたか?ケースとしてとても簡単にまとめましたが、ここに至るまでに何度も対話を重ねました。どちらかというと分業の意識が強くなりがちな専門職が多く、その専門職と専門職の間に絶対に発生しているはずの仕事に対して意識が向きにくいことに気が付いたことをきっかけに、一気に 「自分たちの仕事を言語化しよう!そしてお互いに意見を交換してみよう」 という勢いがついて上記の感想に至りました。
研修後、ある参加者から 「自分たちの役割は知っていて当たり前だから言葉にする必要はないと軽視せず、向き合うことで仕事に対する意識がこれだけ前向きに変わるのだと感動した」 というコメントも頂きました。やらなければならない目の前の業務に追われていると、自分たちが何のために仕事をしているのか考える機会がなくなり、他部署に思い巡らすこともせずに自分たち本位な思考になりがちだと気が付いたとのこと。私自身もハッとさせられたコメントでした。自分たちの役割を意識した際の役職者の方たちの表情の明るさが、講師として一番印象に残ったのでした。
ぜひ皆さまの組織でも、ご自身の役割に意識を向けてみてはいかがでしょうか?
【2025. 3. 1 Vol.611 医業情報ダイジェスト】
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