介護
通所リハビリの経営は人口動態から地域のニーズを汲み取ること
地域のニーズを汲み取りながら変化させていくことが求められる
株式会社メディックプランニング 代表取締役 三好 貴之通所リハビリの事業所数は、2007年に「6,434」事業所だったものが、2019年に「7,920」事業所と、12年で「約1,500」事業所が増加しています。通所リハビリが設置できるのは、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院ですが、その55%は病院、診療所であり、残り45%が介護老人保健施設、そして、わずかに介護医療院があるという内訳となっています。
通所リハビリに関しては、2018年介護報酬改定にて、4時間以上のサービス提供時間の基本サービス費が1割程度減算されて、多くの事業所が大打撃を受けました。特に、4時間未満の「半日型」や、1-2時間の「短時間型」のない事業所はそのまま「減算=減収」となり、営業利益が1割以下の事業所は赤字に転落したと思います。この対策として、当時、サービス提供時間を延長したり、新たに半日型や短時間型のサービス提供時間を設定したりするなど、今までにない大掛かりな運営方針の転換が求められました。
通所リハビリの運営には、さまざまな選択肢があります。例えば、外来リハビリの延長のような1-2時間の「短時間型」、リハビリとマシントレーニングを組み合わせた「半日型」、そして、従来の6時間以上の「1日型」です。これらをどれか一つ選択するほか、組み合わせて設定する場合もあります。そして、その選択の決め手になる要因は、まさに「地域のニーズに合わせて」です。
地域のニーズとは、結論を言ってしまえば、病院や診療所経営と同じく、「人口動態」が一番重要な要因となるのではないでしょうか。現在、日本の人口動態は大きく3つに分かれます。そのなかで、ほとんどの自治体は、高齢者増加、若年者減少のいわゆる「少子高齢化」、もしくは、高齢者減少、若年者減少のいわゆる「過疎地域」にあたります。
「少子高齢化」の地域では、介護度で言えば、比較的軽度な要支援や要介護1、2くらいの高齢者が増加する傾向があります。そうなると主に骨折後や下肢の関節置換術後、脊椎圧迫骨折後などの運動器疾患の利用者が多くなります。この利用者は、すでに、急性期、回復期でしっかりとリハビリを受けており、歩行をはじめ在宅生活に必要なADLはほぼ自立しているケースも多くあります。令和2年11月16日の介護給付費分科会の資料によれば、要支援の91.1%、要介護1、2の68.4%がADLの指標であるBarthel Indexが80点以上あります(図)。このような場合、利用者は、食事や入浴は自立している場合も多く、必要なのは、心身機能の維持や買い物や旅行のための活動と参加のリハビリとなります。つま、少子高齢化の地域においては、従来の食事や入浴を中心とした「1日型」よりも、「短時間型」や「半日型」の方が需要が高くなります。
逆に「高齢者減少、若年者減少」の過疎地域においては、認知症や脳卒中などの重度な利用者が多く、このような地域においては食事と入浴もある「1日型」の需要が高くなるでしょう。
筆者の支援先である、北海道札幌市にある診療所併設のA 通所リハビリは、定員40名で6時間のサービス提供時間で運営していました。そのため、2018年の介護報酬改定で、大幅な減収となりました。そこで、筆者は、札幌市の人口動態を調査したところ、2015年対比で2040年には介護需要が2倍になるほど、急激な高齢化が予想されました。札幌市は北海道各地から団塊の世代が札幌市へ一極集中しており、そのために急激な高齢化が起こり、さらに2040年に向けて団塊ジュニアの高齢化もそのまま引き続き起こることが予測されたのです。
そこでA通所リハビリは、6時間のサービス提供時間をやめて3時間の「半日型」へと変更したところ、今まで新規利用者の問い合わせは月1、2件だったのが、一気に毎月20件以上に増加し、それから6か月後には「満員御礼」となりました。また、収益は1日型では月800万円だったのが、月700万円に減少しましたが、半日型は入浴も食事もなく、スタッフ数も少なくて済むため、それ以上に費用も減少し、しっかりと利益を出すことができました。
筆者の経験では、通所リハビリの収益を決めるのは「利用者数」です。利用者が多すぎて閉鎖した通所リハビリは聞いたことはありません。通所リハビリが閉鎖するのは「利用者がいない」か「スタッフがいない」場合であり、利用者数を決めるのは「地域のニーズ」といかにマッチしているかです。
そして、この地域のニーズに大きな影響を与えているのが、地域の人口動態や介護度なのです。さらに、この人口動態や介護度は時間の流れとともに変化します。A通所リハビリのように今は半日型でうまくいっているところでも、5年後、10年後は、場合によっては、1日型に戻したり、逆に「短時間」が必要になるかもしれません。通所リハビリの経営は、このように地域のニーズを汲み取りながら変化させていくことが求められています。
【2023. 2. 15 Vol.562 医業情報ダイジェスト】
通所リハビリに関しては、2018年介護報酬改定にて、4時間以上のサービス提供時間の基本サービス費が1割程度減算されて、多くの事業所が大打撃を受けました。特に、4時間未満の「半日型」や、1-2時間の「短時間型」のない事業所はそのまま「減算=減収」となり、営業利益が1割以下の事業所は赤字に転落したと思います。この対策として、当時、サービス提供時間を延長したり、新たに半日型や短時間型のサービス提供時間を設定したりするなど、今までにない大掛かりな運営方針の転換が求められました。
通所リハビリの運営には、さまざまな選択肢があります。例えば、外来リハビリの延長のような1-2時間の「短時間型」、リハビリとマシントレーニングを組み合わせた「半日型」、そして、従来の6時間以上の「1日型」です。これらをどれか一つ選択するほか、組み合わせて設定する場合もあります。そして、その選択の決め手になる要因は、まさに「地域のニーズに合わせて」です。
地域のニーズとは、結論を言ってしまえば、病院や診療所経営と同じく、「人口動態」が一番重要な要因となるのではないでしょうか。現在、日本の人口動態は大きく3つに分かれます。そのなかで、ほとんどの自治体は、高齢者増加、若年者減少のいわゆる「少子高齢化」、もしくは、高齢者減少、若年者減少のいわゆる「過疎地域」にあたります。
「少子高齢化」の地域では、介護度で言えば、比較的軽度な要支援や要介護1、2くらいの高齢者が増加する傾向があります。そうなると主に骨折後や下肢の関節置換術後、脊椎圧迫骨折後などの運動器疾患の利用者が多くなります。この利用者は、すでに、急性期、回復期でしっかりとリハビリを受けており、歩行をはじめ在宅生活に必要なADLはほぼ自立しているケースも多くあります。令和2年11月16日の介護給付費分科会の資料によれば、要支援の91.1%、要介護1、2の68.4%がADLの指標であるBarthel Indexが80点以上あります(図)。このような場合、利用者は、食事や入浴は自立している場合も多く、必要なのは、心身機能の維持や買い物や旅行のための活動と参加のリハビリとなります。つま、少子高齢化の地域においては、従来の食事や入浴を中心とした「1日型」よりも、「短時間型」や「半日型」の方が需要が高くなります。
逆に「高齢者減少、若年者減少」の過疎地域においては、認知症や脳卒中などの重度な利用者が多く、このような地域においては食事と入浴もある「1日型」の需要が高くなるでしょう。
筆者の支援先である、北海道札幌市にある診療所併設のA 通所リハビリは、定員40名で6時間のサービス提供時間で運営していました。そのため、2018年の介護報酬改定で、大幅な減収となりました。そこで、筆者は、札幌市の人口動態を調査したところ、2015年対比で2040年には介護需要が2倍になるほど、急激な高齢化が予想されました。札幌市は北海道各地から団塊の世代が札幌市へ一極集中しており、そのために急激な高齢化が起こり、さらに2040年に向けて団塊ジュニアの高齢化もそのまま引き続き起こることが予測されたのです。
そこでA通所リハビリは、6時間のサービス提供時間をやめて3時間の「半日型」へと変更したところ、今まで新規利用者の問い合わせは月1、2件だったのが、一気に毎月20件以上に増加し、それから6か月後には「満員御礼」となりました。また、収益は1日型では月800万円だったのが、月700万円に減少しましたが、半日型は入浴も食事もなく、スタッフ数も少なくて済むため、それ以上に費用も減少し、しっかりと利益を出すことができました。
筆者の経験では、通所リハビリの収益を決めるのは「利用者数」です。利用者が多すぎて閉鎖した通所リハビリは聞いたことはありません。通所リハビリが閉鎖するのは「利用者がいない」か「スタッフがいない」場合であり、利用者数を決めるのは「地域のニーズ」といかにマッチしているかです。
そして、この地域のニーズに大きな影響を与えているのが、地域の人口動態や介護度なのです。さらに、この人口動態や介護度は時間の流れとともに変化します。A通所リハビリのように今は半日型でうまくいっているところでも、5年後、10年後は、場合によっては、1日型に戻したり、逆に「短時間」が必要になるかもしれません。通所リハビリの経営は、このように地域のニーズを汲み取りながら変化させていくことが求められています。
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「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.10)」を追加しました
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