介護

訪問リハビリは、まだまだ新規参入の余地あり

訪問リハビリ新規参入の余地ある3つの理由
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
先日、診療所の事務長から「もう訪問リハビリはやめた方が良いでしょうか」と質問を受けました。理由は、介護報酬がどんどん下がり、改定の度に徐々に規制が厳しくなるのではないかということでした。
訪問リハビリには、病院、診療所、老健、介護医療院(以下、病院等)からの「訪問リハビリ事業所」と訪問看護ステーションの訪問看護師の代わりにリハビリ職が訪問リハビリを提供する「訪問看護基本療養費」があり、改定の度に厳しくなっているのは後者の訪問看護からの訪問リハビリの方です。病院等の訪問リハビリ事業所に関しては、さほど厳しくはなっていません。

▼訪問リハビリ新規参入の余地ある3つの理由

逆に現在、訪問リハビリを提供していない病院等に関しては、まだまだ新規参入の余地があると思っています。その理由は、大きく3つあります。

(1)初期費用の低さ
 第一に初期費用が低いことです。例えば、訪問看護ステーションであれば、まず、開設に当たって常勤換算で看護師2.5人を配置しなければなりません。訪問看護ステーションの運営で一番難しいとされるのが、訪問看護師の採用です。全国訪問看護事業協会によれば令和2年の訪問看護ステーションの新規開設は「1633事業所」に対し、廃止と休止は「781事業所」もあります。その理由は「訪問看護師の採用ができない」「退職者の穴埋めができない」などで、訪問看護師の採用が大きな課題となっています。しかし、病院等の訪問リハビリは、医療機関が開設する場合は、「みなし指定」として、独立した事務所や人員配置は不要で、「専任医師:1名以上(兼務可)」「リハビリ職の配置:適当数(兼務可)」であり、既存の医師、リハビリ職で始められます。また、施設基準も「訪問リハビリに必要な設備、備品等」と、特に大きな初期投資は不要です(図)。

(2)収益性の高さ
訪問リハビリは、通所リハビリの「短期集中個別リハビリ」よりも高い報酬が設定されています。通所リハビリの短期集中個別リハビリは、サービス提供時間と介護度別の「基本サービス費」+「短期集中個別リハビリ実施加算110単位/日」ですが、訪問リハビリの場合は「307単位/回(20分)+ 短期集中リハビリ実施加算200単位/日」となります。例えば、利用者1人当たり2回を6人に提供すれば「307単位×2回×6人」で「36, 840円/日」となり、これに加算を足すと「約4万円/日」になります。これを20日間提供すれば「80万円/月」となり、病棟や外来での疾患別リハビリ料と変わらないか、むしろ高くなると思います。

(3)地域に出ていく武器になる
今後、都市部を除く多くの地域で在宅医療のニーズが高まってきます。その場合、病院等は徐々に在宅医療を強化していくことが予測されます。病院等が実施する訪問事業は、訪問診療、訪問看護、訪問介護、そして訪問リハビリと主には4種類です。訪問看護は、先述の通り、訪問看護師の採用で難易度が高く、訪問診療、訪問介護も同様です。しかし、リハビリ職の採用は昔ほど難しくなくなってきました。よって、まず、病院等が地域に出ていく武器として訪問リハビリは最適であると思います。

▼訪問リハビリの運営がうまくいかない理由と解決策

一方、「訪問リハビリを始めてみたけれど、利用者が増えず、収益が伸びない」という話も聞きます。このような場合、「何となく始めて、そのまま」というケースも多く「1日1件か2件、リハビリ職が空いている時間だけ訪問リハビリをやっている」のをよく聞きます。法人の方針で退院患者や退所者のフォローアップとして訪問リハビリを提供するということであれば、これで良いと思いますが、訪問リハビリを1つの事業としてきちんと成立させるのであれば、やはり他の事業所と同様に目標設定や計画立案などが必要になります。よって筆者は、「訪問リハビリを伸ばしたい」という病院等の経営者の皆様には必ず「どこまでやりますか」とお聞きするようにしています。
もし、1つの事業としてきちんと収益を上げていきたいのであれば、1日12~15回の件数は必要になるでしょう。

▼リハビリ設備のない診療所でも提供できる

また、筆者は以前、駅前診療所での訪問リハビリ開設を支援しました。駅前診療所ですから診療所のスペースは限られており、外来患者にリハビリを提供したくても疾患別リハビリ料でのリハビリ室や介護保険の通所リハビリを作ることはできません。しかし、訪問リハビリであれば、リハビリ室や通所リハビリを作ることなく、外来患者にリハビリを提供することができます。新たに必要となるのは、リハビリ職1名の採用と車くらいです。もし、外来患者のうち、介護保険被保険者で「リハビリが必要」と思う方がいれば、訪問リハビリを開設するのも1つの方法であると思います。

(図)第193回社会保障審議会介護給付費分科会資料 令和2年11月16日(月)



【2023. 4. 15 Vol.566 医業情報ダイジェスト】