介護

退院・退所後の早期訪問リハビリテーションの強化

株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
12月11日に次期介護報酬改定に向けて介護給付費分科会から「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」が出されました。リハビリに関係のある通所リハビリ、訪問リハビリ、介護老人保健施設に関しては、前回の改定同様に多くの改定項目が設定されました。リハビリ職が配置されている施設では、医療系施設として、次期改定でも医療との連携に関する項目が非常に多くなっています。
なかでも筆者が注目しているのが「訪問リハビリ」です。訪問リハビリには、①診療報酬における医療機関から出る「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」、②訪問看護ステーションから訪問看護師の代わりに出る「訪問看護基本療養費」、③訪問リハビリ事業所から出る「訪問リハビリ」と3種類あります。②に関しては、訪問看護ステーションの方向性が「24時間、365日対応」「看取り」「重度対応」に向かっているため、訪問看護ステーションからの訪問リハビリは次期改定でも規制の強化が予測されます。
一方、③訪問リハビリ事業所から出る訪問リハビリに関しては、前回の改定で退院・退所直後の3か月以内は、「週6回」が「週12回」と倍増しました。これは、退院・退所後に集中的に訪問リハビリを提供することでADLが維持・向上するためです。

▼医療機関との連携強化

次期改定に向けて、新たに「医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化」が設定されました。これに関しては、退院・退所後にいかに早く訪問リハビリを開始できるかが重要だからです。しかし、7月24日の介護給付費分科会の資料によれば、退院・退所から訪問リハビリ開始まで2週間以上かかっている利用者は全体の「32%」もあります。また、2週間未満に開始された利用者と2週間以上かかって開始された利用者では、明らかにADLの差が出ています。
では、開始までに2週間以上かかる要因は何かというと「医療機関と訪問リハビリ事業者との連携不足」が挙げられています。訪問リハビリ事業者が医療での疾患別リハビリの計画書を入手しているのは「44%」と半分にも満たないのです。医療保険の場合は、医師の指示で疾患別リハビリを開始しますが、介護保険の場合は、ケアマネジャーのケアプランにて訪問リハビリを開始します。つまり、医療機関との間に、一度、ケアマネジャーが入るため、医療機関と訪問リハビリのリハビリ職が直接やりとりをするケースは非常に少なく、法人が違えば、なおさらやりとりするのは難しいでしょう。
よって、今回、「医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化」を設定し、医療機関と訪問リハビリ事業所が直接やりとりをして、退院・退所後に早く訪問リハビリを開始できるような連携を促しています。

さらに「退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進」として、退院時共同指導加算と同じような加算になることが予測されています。退院時共同指導加算は、入院・入所中の利用者に対して、主治医とその他の従業者と共同し、在宅での指導を行うものです。これを行えば、医療機関と訪問リハビリのリハビリ職が直接顔を合わせての引継ぎが可能になります。


第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料 令和5年11月6日(月)

▼訪問リハのプランはリハビリ職が立てる

ケアマネジャーのなかには「自宅での生活に慣れるまで、訪問リハビリは週1回にしましょう」というようなプランを立てる場合があります。ケアマネジャーの多くは介護職であり、リハビリに関する知識が少ないのは、仕方がないことです。しかし、前回の改定で退院・退所後が「週6回」から「週12回」に倍増されたのは、「退院・退所後、早期にたくさんリハビリをした方が効果がある」からです。
よって、「慣れるまで週1回」ではなく「慣れるまで週3回」の方がリハビリの効果が出やすいということです。そして、自宅でのADLが向上し、安定してくれば「週に1回」に減らしていく「傾斜配置」にしていくべきです。医療機関や訪問リハビリ事業所のリハビリ職は、リハビリのプランをケアマネジャー任せにするのではなく、「この利用者のリハビリの効果を出すためには週〇回は必要です」と進言していきましょう。


【2024. 1. 15 Vol.584 医業情報ダイジェスト】