組織・人材育成
患者さんにできていることが、なぜできないんだろう
リーダーとしての立ち居振る舞いを考える
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子2023年度に突入し、新入職員が入った組織も少なくないと思います。新たな気持ちで新年度を迎えた組織の雰囲気はいかがでしょうか。
今回はスタッフ育成に悩む院長先生とのお話から、「患者さんとの関わりとスタッフとの関わりを振り返ることで、リーダーとしての立ち居振る舞いを考える」という学びを共有したいと思います。
今回はスタッフ育成に悩む院長先生とのお話から、「患者さんとの関わりとスタッフとの関わりを振り返ることで、リーダーとしての立ち居振る舞いを考える」という学びを共有したいと思います。
ケース:
「今日も患者さんに『もう治療が終わるなんて!寂しい!』と言われてしまいました」と語るのは地方都市にあるAクリニックの院長先生。定期的な治療に来ていた患者さんに対して、基本的な治療は終了したため次回のフォローアップ受診はかなり期間を空けて良いと告げた時の患者さんからのひと言でした。実はこのクリニックでは度々このような言葉が患者さんから聞かれるようで、その度に院長先生は不思議そうに「何でそういう言葉が出てくるのだろう…ありがたいのだけれども…」と受け止め方を探っている様子でした。
というのも、Aクリニックの院長先生の悩みは、スタッフの育成。先の患者さんのような言葉がスタッフからも出てくると良いのに…と、筆者とのセッションの度にボヤいていたのでした。
以前はこのような患者さんの声は聞かれなかったとのことで、筆者から院長先生に質問を投げかけました。
筆者「過去と今を比べて、患者さんとの関わりで変わったことはありますか?」
院長先生「患者さんを必ず1回は笑わせようとしているのは変わっていないけど…そう言えば、昔は自分が伝えた生活上の注意点が理解できていない様子の患者さんなど、会話が成立していないと感じる患者さんとのやり取りでイライラしていました。患者さんに良くなってほしい一心なのに…と、自分の考えを理解してほしくてイライラしていたのだと思います。でも最近は患者さんに対してイライラすることは滅多にありません。患者さんに自分の考えを理解してほしいと求めるのではなく、患者さんのことを私が理解しようと努めるようになりました。患者さんが言ったことではなく『何を考えているのだろう』『どうしたらこの人の行動が変わるのだろう(行動が変わることで患者さんが健康になり、幸せに繋がる)』と考えながら接するのが普通になっています」
筆者「そうなのですね。素晴らしいと思います!では、スタッフ育成に目を向けてみましょう。スタッフの皆さまから、患者さんのように『業務時間が終わっちゃうの寂しい!』というような発言が聞こえるようになるためのヒントは、患者さんとのやり取りから探すことはできませんか?」
院長先生「あ…!私はスタッフに『成長してほしい』『私が伝えていることを理解して行動に変えてほしい』と要求していますね…。以前の私が患者さんに対して思っていたことと同じです。患者さんにできていてスタッフにできていないことに気が付きました…」
翌日からスタッフに対する態度を改めようと決めた院長先生。スタッフと共に行う勉強会の開催など、スタッフを巻き込んだ組織全体を成長させる取り組みについて試行錯誤が始まっています。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
この院長先生のように、患者さんからの評判が非常に良いのにスタッフからの評価がイマイチ上がらないリーダーの声を耳にすることは少なくありません。患者さんからの評価が高いことはもちろん嬉しいことですし経営上プラスになるはずですが、他のスタッフにとっても素晴らしいリーダーであった方が、経営上のリスクマネジメントを考える上でも重要です。
このケースではない、別の医療機関の経営者から「患者さんは『患者』だから優しく促すことができるけど、職員は従業員という給与を貰っている立場なのだから、経営者である自分の要望を職員が聞いて自ら学んで成長することは当然である」という声を聞いたこともあります。経営者という立場からの発言として、その気持ちは十分理解できます。ただ、人は正しいから動くのではなく、動きたいから動くもの。従って、経営者として職員が成長することを望んでいるのでしたら、職員が成長したくなるような関わりを経営者自ら行う方が長い目で見て効果的です。命令されるよりも能動的な行動による成長の方が、効果的で持続性があるのは、皆さまも納得されるのではないでしょうか。
自分や相手の立場・役割からあるべき姿を考えるのではなく、どうしたら相手がより良く変化したくなるかを考えて、自らの立ち居振る舞いを振り返ってはいかがでしょうか。
【2023. 5. 1 Vol.567 医業情報ダイジェスト】
というのも、Aクリニックの院長先生の悩みは、スタッフの育成。先の患者さんのような言葉がスタッフからも出てくると良いのに…と、筆者とのセッションの度にボヤいていたのでした。
以前はこのような患者さんの声は聞かれなかったとのことで、筆者から院長先生に質問を投げかけました。
筆者「過去と今を比べて、患者さんとの関わりで変わったことはありますか?」
院長先生「患者さんを必ず1回は笑わせようとしているのは変わっていないけど…そう言えば、昔は自分が伝えた生活上の注意点が理解できていない様子の患者さんなど、会話が成立していないと感じる患者さんとのやり取りでイライラしていました。患者さんに良くなってほしい一心なのに…と、自分の考えを理解してほしくてイライラしていたのだと思います。でも最近は患者さんに対してイライラすることは滅多にありません。患者さんに自分の考えを理解してほしいと求めるのではなく、患者さんのことを私が理解しようと努めるようになりました。患者さんが言ったことではなく『何を考えているのだろう』『どうしたらこの人の行動が変わるのだろう(行動が変わることで患者さんが健康になり、幸せに繋がる)』と考えながら接するのが普通になっています」
筆者「そうなのですね。素晴らしいと思います!では、スタッフ育成に目を向けてみましょう。スタッフの皆さまから、患者さんのように『業務時間が終わっちゃうの寂しい!』というような発言が聞こえるようになるためのヒントは、患者さんとのやり取りから探すことはできませんか?」
院長先生「あ…!私はスタッフに『成長してほしい』『私が伝えていることを理解して行動に変えてほしい』と要求していますね…。以前の私が患者さんに対して思っていたことと同じです。患者さんにできていてスタッフにできていないことに気が付きました…」
翌日からスタッフに対する態度を改めようと決めた院長先生。スタッフと共に行う勉強会の開催など、スタッフを巻き込んだ組織全体を成長させる取り組みについて試行錯誤が始まっています。
このケース、どのような感想を持ちましたか?
この院長先生のように、患者さんからの評判が非常に良いのにスタッフからの評価がイマイチ上がらないリーダーの声を耳にすることは少なくありません。患者さんからの評価が高いことはもちろん嬉しいことですし経営上プラスになるはずですが、他のスタッフにとっても素晴らしいリーダーであった方が、経営上のリスクマネジメントを考える上でも重要です。
このケースではない、別の医療機関の経営者から「患者さんは『患者』だから優しく促すことができるけど、職員は従業員という給与を貰っている立場なのだから、経営者である自分の要望を職員が聞いて自ら学んで成長することは当然である」という声を聞いたこともあります。経営者という立場からの発言として、その気持ちは十分理解できます。ただ、人は正しいから動くのではなく、動きたいから動くもの。従って、経営者として職員が成長することを望んでいるのでしたら、職員が成長したくなるような関わりを経営者自ら行う方が長い目で見て効果的です。命令されるよりも能動的な行動による成長の方が、効果的で持続性があるのは、皆さまも納得されるのではないでしょうか。
自分や相手の立場・役割からあるべき姿を考えるのではなく、どうしたら相手がより良く変化したくなるかを考えて、自らの立ち居振る舞いを振り返ってはいかがでしょうか。
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