組織・人材育成
「簡単で単純な気遣い」がより良い組織を作る鍵になる
より良い組織づくりとリーダーシップ
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子季節の変わり目で寒暖の差が大きな時期にこの原稿を書いています。体調はお変わりありませんか?
さて、今回は人間関係に悩んでいた組織でリーダーが代替わりし、新リーダーが「講師が言っていたことをやってみた」ケースをご紹介します。
さて、今回は人間関係に悩んでいた組織でリーダーが代替わりし、新リーダーが「講師が言っていたことをやってみた」ケースをご紹介します。
ケース:
「上村さんが言っていたことをそのままやってみたら、目の前のスタッフが泣き出してしまったのでびっくりしました」と語るのは、このクリニックで長くスタッフ育成に悩むA院長です。
A院長はこのクリニックの2代目。初代であるお父様は新しいスタッフが入職してもすぐ辞めてしまうことにずっと悩んでおり、A医師はそんな父を傍で支えていました。ある時、お父様が体調を崩し、急遽A医師が院長になることに。慣れない院長業務に四苦八苦していたA院長を見かねた知人の紹介で、筆者が講師を務める公開セミナーに参加したのでした。セミナーのテーマは「より良い組織づくりとリーダーシップ」。A院長は「職員面談」の話が特に印象に残ったようです。
そのセミナーでは、ある組織のリーダーが職員面談では「相手を慮る」ために以下の3点を意識していたというケースを紹介していました。
なぜなら相手を慮ることで相手が想像以上に動くことを、そのリーダーは経験上知っていたからです。
1. 冒頭で必ず「体調変わりない?」と職員の身体を気遣う
2. 業務上「何か必要なものはない?」「何か欲しいものはない?」と聞く
3. あとはひたすら職員の話を聴くことに徹する
この話を聞いたA院長は「そんな簡単で単純なことなの?」と拍子抜けしたと言います。半信半疑ながらも「やってみないと本当かどうか分からない」と、院長に就任してから行ってこなかった職員面談を実行することにしました。
最初に職員面談を行ったのは社会人3年目の受付の女性Bさん。いつもの面談では「はい」「いいえ」「特にありません」の他はあまり言葉がないとお父様から聞いていたそうですが、今回の面談では驚きの変化が! 最初に体調を尋ねると「あれ?いつもと違うな」という表情になったようですが、徐々に笑顔が出てくるように。
最後に「何か言い残したことはありますか?」と声を掛けると急に言葉に詰まり下を向くBさん。しばらく待っていると「こんなに自分のことを気にかけてもらったのは初めてです」とBさんは涙をたくさん目に貯めながら顔を上げたのでした。
A院長「そこで今まで行っていた面談をBさんと振り返りました。父との面談では冒頭からできていない点を責められるばかりでBさんは非常に苦しかったそうです。父は面談の最後に『期待しているのだから!頑張って!』と伝えていたそうですが、Bさんの耳には入っても心までは届くことはなったとのこと。他のスタッフとも話しましたが、同様でした。父は当然悪気があったわけではなく、心の底からスタッフの育成に熱心だったことは間違いありません。でも、その結果スタッフに良くない影響を与えていては本末転倒ですね。Bさんたちスタッフは決して怠けているのではなく、一生懸命お仕事に励んでいるのです。リーダーとしてスタッフを責めるばかりでは、成長しようと思うスタッフの気持ちを削いでしまうことになりかねない。このことは頭で理解できていても、行動に伴っていなければ意味がありません。相手を慮る面談だけでここまでスタッフとの関係性が変わるとは驚きです。半信半疑でもやってみて良かったと思いました。他にも上村さんのセミナーで学んだ『自分ができること』を片っ端からやってみようと思います!」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
組織づくりをテーマとするセミナーに参加されたという医療関係の管理職のお話を伺うことが多くなりました。コロナ禍で複雑化した組織の課題を解決しようと、さまざまな学びを得ようとされている姿は本当に素晴らしいと思う反面、その後に何らかの取り組みを組織で実行されたという管理職のお話は意外と少ないように思います。
私はちょっとしたボタンの掛け違いが積み重なることで、組織が上手く機能しなくなることが多いように感じています。そしてこのケースのようにそのボタンを直す作業はほんのささやかな気遣いであることも多いと思います。組織が何かおかしいなと感じたならば、リーダーの立ち居振る舞いから見直されてはいかがでしょうか。自分が意図しないことが相手にとって辛く悲しい気持ちを生み出している可能性はゼロではないと思います。相手の変化を期待するよりも、自分の言動を見直す方が近道です。相手を慮る面談が行えているかどうか、振り返ることをお勧めいたします。
【2023. 6. 15 Vol.570 医業情報ダイジェスト】
A院長はこのクリニックの2代目。初代であるお父様は新しいスタッフが入職してもすぐ辞めてしまうことにずっと悩んでおり、A医師はそんな父を傍で支えていました。ある時、お父様が体調を崩し、急遽A医師が院長になることに。慣れない院長業務に四苦八苦していたA院長を見かねた知人の紹介で、筆者が講師を務める公開セミナーに参加したのでした。セミナーのテーマは「より良い組織づくりとリーダーシップ」。A院長は「職員面談」の話が特に印象に残ったようです。
そのセミナーでは、ある組織のリーダーが職員面談では「相手を慮る」ために以下の3点を意識していたというケースを紹介していました。
なぜなら相手を慮ることで相手が想像以上に動くことを、そのリーダーは経験上知っていたからです。
1. 冒頭で必ず「体調変わりない?」と職員の身体を気遣う
2. 業務上「何か必要なものはない?」「何か欲しいものはない?」と聞く
3. あとはひたすら職員の話を聴くことに徹する
この話を聞いたA院長は「そんな簡単で単純なことなの?」と拍子抜けしたと言います。半信半疑ながらも「やってみないと本当かどうか分からない」と、院長に就任してから行ってこなかった職員面談を実行することにしました。
最初に職員面談を行ったのは社会人3年目の受付の女性Bさん。いつもの面談では「はい」「いいえ」「特にありません」の他はあまり言葉がないとお父様から聞いていたそうですが、今回の面談では驚きの変化が! 最初に体調を尋ねると「あれ?いつもと違うな」という表情になったようですが、徐々に笑顔が出てくるように。
最後に「何か言い残したことはありますか?」と声を掛けると急に言葉に詰まり下を向くBさん。しばらく待っていると「こんなに自分のことを気にかけてもらったのは初めてです」とBさんは涙をたくさん目に貯めながら顔を上げたのでした。
A院長「そこで今まで行っていた面談をBさんと振り返りました。父との面談では冒頭からできていない点を責められるばかりでBさんは非常に苦しかったそうです。父は面談の最後に『期待しているのだから!頑張って!』と伝えていたそうですが、Bさんの耳には入っても心までは届くことはなったとのこと。他のスタッフとも話しましたが、同様でした。父は当然悪気があったわけではなく、心の底からスタッフの育成に熱心だったことは間違いありません。でも、その結果スタッフに良くない影響を与えていては本末転倒ですね。Bさんたちスタッフは決して怠けているのではなく、一生懸命お仕事に励んでいるのです。リーダーとしてスタッフを責めるばかりでは、成長しようと思うスタッフの気持ちを削いでしまうことになりかねない。このことは頭で理解できていても、行動に伴っていなければ意味がありません。相手を慮る面談だけでここまでスタッフとの関係性が変わるとは驚きです。半信半疑でもやってみて良かったと思いました。他にも上村さんのセミナーで学んだ『自分ができること』を片っ端からやってみようと思います!」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
組織づくりをテーマとするセミナーに参加されたという医療関係の管理職のお話を伺うことが多くなりました。コロナ禍で複雑化した組織の課題を解決しようと、さまざまな学びを得ようとされている姿は本当に素晴らしいと思う反面、その後に何らかの取り組みを組織で実行されたという管理職のお話は意外と少ないように思います。
私はちょっとしたボタンの掛け違いが積み重なることで、組織が上手く機能しなくなることが多いように感じています。そしてこのケースのようにそのボタンを直す作業はほんのささやかな気遣いであることも多いと思います。組織が何かおかしいなと感じたならば、リーダーの立ち居振る舞いから見直されてはいかがでしょうか。自分が意図しないことが相手にとって辛く悲しい気持ちを生み出している可能性はゼロではないと思います。相手の変化を期待するよりも、自分の言動を見直す方が近道です。相手を慮る面談が行えているかどうか、振り返ることをお勧めいたします。
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