組織・人材育成
その看護師さんは勉強がしたい
より能力を伸ばせる環境づくりについて
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子梅雨の季節となりました。空が暗くジメジメとした雰囲気に飲まれてしまわないよう、せめて身の回りの整理整頓に心がけておりますが、皆様はご自身の心の調子を整えるために気を付けられていることはありますか?
今回は問題に対してタイムリーな対応ができないと嘆く院長先生のケースをご紹介します。
今回は問題に対してタイムリーな対応ができないと嘆く院長先生のケースをご紹介します。
ケース:
日本の北にあるやや大きなクリニック(法人内には小規模の病院あり)のお話です。このクリニックで10年務める看護師Aさん(管理職)は今後のキャリアに悩んでいました。
Aさん「私は看護学校を卒業し三次救急の病院で経験を積んでいたのですが、主任になった際に直属の上司との関係が悪くなってしまったためこの法人に転職しました。今のクリニックは法人で色々な事業を展開していることもあり地域との繋がりを感じられるとても良い環境だ!とウキウキした気持ちで転職したのですが、当時は職員の教育体制は皆無で驚きました。前職の経験からクリニックで働く医療者の知識・技術レベルを上げる必要性を感じたため、私が提案して定期的な勉強会を始めました。しかし、私は教育の勉強をしていたわけではないので手探りでの取り組みです。最近は限界を感じていたため、人材育成について学びたいと思うようになりました。私のためではなくもちろん組織のためです。ただ、しっかり学びたいので、1度だけ参加するセミナーではなく大学院での勉強を考えています。そうなると勤務にも支障が出てしまいますし、可能であれば法人から補助していただけるとありがたいと思い、院長先生と事務長に相談しました」
筆者「問題意識を持ち、ご自身のキャリアと所属している職員のことを考えておられるのですね。院長先生のお返事は?」
Aさん「残念ながら事務長に嫌われていたのか…『それは今本当に必要なことなのか?』と反対されました。しかし私の覚悟は決まっていたので『法人で援助がなくても休職して行くことも考えている』とも伝えたのですが『法人として認めることは出来ない』と……。もう私は心が折れました。その後、事情を知る法人の看護部門の部長に会って『どうなったの?』と聞かれてことの詳細を伝えて諦めた旨を伝えると『あなたなら何て言われても行くと思った』と言われました。私は誰か一人でも、お金は出せなくても同じ組織の一員として応援してくれるとひと言を掛けてもらえたらこんなに心が折れることはなかったと思います。私は今職場に行く気力が無くなってしまいました。私と一緒に前職の病院から付いてきてくれた後輩に申し訳ないのですが…どこか良い働く場は無いでしょうか…」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
Aさんは看護師としての思いが非常に強く、医療の質向上のための新しい技術・知識の探求に日ごろから努められています。ところがクリニックで働くだけでは限られた経験しか出来ないため、可能な範囲で学会の参加など研鑽に努めていました。確かに、このクリニックで働く全員がAさんの動きを快く思っていた訳ではなく、自分流の医療に意見するAさんを煙たがる医療従事者もいたようですが、多くの職員がAさんの勤勉さを認めていました。
医療従事者の多くはそのプロフェッショナル性から学ぶことに貪欲な方がたくさんいらっしゃいます。しかし、クリニックで働いているというと学ぶ意欲が小さいと勘違いされるケースもまだまだ少なくないようです。外来医療計画について話し合われている通り、病院における外来の在り方は近年変化しつつあります。病院の外来看護師は医師の診療補助が中心ではなく、指導など看護師という専門職だから出来る業務に力を注げるように業務改善が進んでいます。私はクリニックにおいても医療従事者の専門性を活かす場を作ることが大切だと思います。もちろん、法人として職員全員が希望する学習の金銭的な援助は難しいと思いますが、何より組織に還元し得る学習に対する意欲を応援する姿勢は重要ではないでしょうか。
学習環境は別に外部に限らず、院内でもある程度構築することは可能です。今回のケースのような定期的な勉強会はもちろん、学びを応援する声掛けをするなど、皆様の組織で活躍する職員の方々にとって、より能力を伸ばせる環境づくりについて見直すきっかけになれば幸いです!
【2023. 7. 1 Vol.571 医業情報ダイジェスト】
Aさん「私は看護学校を卒業し三次救急の病院で経験を積んでいたのですが、主任になった際に直属の上司との関係が悪くなってしまったためこの法人に転職しました。今のクリニックは法人で色々な事業を展開していることもあり地域との繋がりを感じられるとても良い環境だ!とウキウキした気持ちで転職したのですが、当時は職員の教育体制は皆無で驚きました。前職の経験からクリニックで働く医療者の知識・技術レベルを上げる必要性を感じたため、私が提案して定期的な勉強会を始めました。しかし、私は教育の勉強をしていたわけではないので手探りでの取り組みです。最近は限界を感じていたため、人材育成について学びたいと思うようになりました。私のためではなくもちろん組織のためです。ただ、しっかり学びたいので、1度だけ参加するセミナーではなく大学院での勉強を考えています。そうなると勤務にも支障が出てしまいますし、可能であれば法人から補助していただけるとありがたいと思い、院長先生と事務長に相談しました」
筆者「問題意識を持ち、ご自身のキャリアと所属している職員のことを考えておられるのですね。院長先生のお返事は?」
Aさん「残念ながら事務長に嫌われていたのか…『それは今本当に必要なことなのか?』と反対されました。しかし私の覚悟は決まっていたので『法人で援助がなくても休職して行くことも考えている』とも伝えたのですが『法人として認めることは出来ない』と……。もう私は心が折れました。その後、事情を知る法人の看護部門の部長に会って『どうなったの?』と聞かれてことの詳細を伝えて諦めた旨を伝えると『あなたなら何て言われても行くと思った』と言われました。私は誰か一人でも、お金は出せなくても同じ組織の一員として応援してくれるとひと言を掛けてもらえたらこんなに心が折れることはなかったと思います。私は今職場に行く気力が無くなってしまいました。私と一緒に前職の病院から付いてきてくれた後輩に申し訳ないのですが…どこか良い働く場は無いでしょうか…」
このケース、どのような感想を持ちましたか?
Aさんは看護師としての思いが非常に強く、医療の質向上のための新しい技術・知識の探求に日ごろから努められています。ところがクリニックで働くだけでは限られた経験しか出来ないため、可能な範囲で学会の参加など研鑽に努めていました。確かに、このクリニックで働く全員がAさんの動きを快く思っていた訳ではなく、自分流の医療に意見するAさんを煙たがる医療従事者もいたようですが、多くの職員がAさんの勤勉さを認めていました。
医療従事者の多くはそのプロフェッショナル性から学ぶことに貪欲な方がたくさんいらっしゃいます。しかし、クリニックで働いているというと学ぶ意欲が小さいと勘違いされるケースもまだまだ少なくないようです。外来医療計画について話し合われている通り、病院における外来の在り方は近年変化しつつあります。病院の外来看護師は医師の診療補助が中心ではなく、指導など看護師という専門職だから出来る業務に力を注げるように業務改善が進んでいます。私はクリニックにおいても医療従事者の専門性を活かす場を作ることが大切だと思います。もちろん、法人として職員全員が希望する学習の金銭的な援助は難しいと思いますが、何より組織に還元し得る学習に対する意欲を応援する姿勢は重要ではないでしょうか。
学習環境は別に外部に限らず、院内でもある程度構築することは可能です。今回のケースのような定期的な勉強会はもちろん、学びを応援する声掛けをするなど、皆様の組織で活躍する職員の方々にとって、より能力を伸ばせる環境づくりについて見直すきっかけになれば幸いです!
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