組織・人材育成
時に判断しない勇気も~ネガティブ・ケイパビリティ
「判断しない勇気」について考えたいケース
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子![](/upimg/PIC__0_1712727284.jpg)
この冊子が皆さまのところに届く頃には診療報酬改定の骨子が具体的に見え、組織に与える影響を考えて次年度の計画を立てられていることと想像しています。寒さも厳しくなり、体調を崩しやすい季節ですが、いかがおすごしでしょうか。
今回はそんな環境の変化に対応すべく、常に判断することの多いリーダーの皆さまに、「判断しない勇気」について考えたいケースをご紹介したいと思います。
今回はそんな環境の変化に対応すべく、常に判断することの多いリーダーの皆さまに、「判断しない勇気」について考えたいケースをご紹介したいと思います。
ケース:
日本の西側、にぎやかな商店街の中にあるクリニックのお話です。このクリニックの院長先生は今日もスタッフとの関係性に頭を悩ませていました。
院長先生「うちのスタッフは本当によく働いてくれます。真面目だと思います。だけど、言われたことしかしない。自分たちで考えて行動できる人になってもらいたいと色々な取り組みをしているのですが…難しいですね」
筆者「スタッフに期待する気持ちだけではなく具体的に院長先生が取り組まれているのは素晴らしいと思います!これまでどんなことに挑戦してきたのですか?」
院長先生「例えば、会議の前に議題をスタッフに伝えて意見を考えてもらう、議題を伝えた後に考える時間を設ける、なるべく行動の意味を理解できるように私からスタッフに『どうしてそのような行動を取ったのか』聞く、このようなことを意識しました」
筆者「試行錯誤されていますね!その結果はどうでしたか?」
院長先生「少しはスタッフに『自分たちで考えてほしい』と院長が考えているという気持ちは伝わったと思いますが、効果のほどは…もっと良い方法はありませんか?」
筆者「ネガティブ・ケイパビリティという言葉をご存じですか?『消極的受容力』『否定的能力』などと日本訳されるもので、未確定なものや不確実なもの、答えの出ないものに対して受容する能力を指す言葉です。いわゆる『モヤモヤ』に耐える能力です。この言葉自体は古く精神科領域で使われる言葉ですが、最近では組織作りやリーダーシップを考える上でも重要だと言われることが増えてきました」
院長先生「全く知りませんでした。リーダーに求められる能力とはどういう意味なのですか?リーダーはモヤモヤすることがあっても判断することが仕事なのでは?」
筆者「価値観が多様化している現代ではコレが正解!という確実なものがないため、必要な能力と言われています。モヤモヤすることは組織運営上多いですよね。おっしゃる通り、リーダーは判断することが仕事のひとつです。ネガティブ・ケイパビリティの重要性は、リーダーに『判断するな』と言っているのではなく、『保留する』『議論しない』『その場で決めなくても良いものは今決めない』ことを選択肢として持っておくことが必要なのではないか、と伝えているのです。なぜなら、リーダーの判断が時に組織の議論を止めてしまうことがあるからです」
院長先生「言われてハッとしました。何にせよ、私が最初に発言していることが多いので、それが決定事項のように受け止められていることからスタッフは『何を言っても変わらないろう』『言われたことをやれば良いのだ』と議論にもならないのだと気が付きました。判断することがスタッフの安心に繋がると信じてきましたし、何か起こったらすぐに判断しないと気持ちが悪いと思っていましたが、必ずしもそうではないのですね。時と場合によりますが、私が発言を抑えるなど、必ずしも判断しない、スタッフに判断を委ねることを意識していきたいと思います。出来るかな…(苦笑)」
このケース、どのような感想を持ちましたか?ネガティブ・ケイパビリティという言葉を聞いたことがある読者の皆さまもおられると思いますが、意外とこの「モヤモヤに耐える能力」に長けるリーダーは多くはないように思います。特に医療は命にかかわる仕事という特性もあり、どんなことでも「なるべく判断は早く正確にミスなく行うことが大切だ」という価値観が根底にある方も多いと思います。それは決して悪いことでありませんが、特に組織運営を考える上では組織員に考えさせる機会を損なっている場面もゼロではないようです。「ネガティブ・ケイパビリティ」を意識して、組織運営を見直してみませんか?きっと色々な気付きがあると思いますよ。
【2024. 1. 15 Vol.584 医業情報ダイジェスト】
院長先生「うちのスタッフは本当によく働いてくれます。真面目だと思います。だけど、言われたことしかしない。自分たちで考えて行動できる人になってもらいたいと色々な取り組みをしているのですが…難しいですね」
筆者「スタッフに期待する気持ちだけではなく具体的に院長先生が取り組まれているのは素晴らしいと思います!これまでどんなことに挑戦してきたのですか?」
院長先生「例えば、会議の前に議題をスタッフに伝えて意見を考えてもらう、議題を伝えた後に考える時間を設ける、なるべく行動の意味を理解できるように私からスタッフに『どうしてそのような行動を取ったのか』聞く、このようなことを意識しました」
筆者「試行錯誤されていますね!その結果はどうでしたか?」
院長先生「少しはスタッフに『自分たちで考えてほしい』と院長が考えているという気持ちは伝わったと思いますが、効果のほどは…もっと良い方法はありませんか?」
筆者「ネガティブ・ケイパビリティという言葉をご存じですか?『消極的受容力』『否定的能力』などと日本訳されるもので、未確定なものや不確実なもの、答えの出ないものに対して受容する能力を指す言葉です。いわゆる『モヤモヤ』に耐える能力です。この言葉自体は古く精神科領域で使われる言葉ですが、最近では組織作りやリーダーシップを考える上でも重要だと言われることが増えてきました」
院長先生「全く知りませんでした。リーダーに求められる能力とはどういう意味なのですか?リーダーはモヤモヤすることがあっても判断することが仕事なのでは?」
筆者「価値観が多様化している現代ではコレが正解!という確実なものがないため、必要な能力と言われています。モヤモヤすることは組織運営上多いですよね。おっしゃる通り、リーダーは判断することが仕事のひとつです。ネガティブ・ケイパビリティの重要性は、リーダーに『判断するな』と言っているのではなく、『保留する』『議論しない』『その場で決めなくても良いものは今決めない』ことを選択肢として持っておくことが必要なのではないか、と伝えているのです。なぜなら、リーダーの判断が時に組織の議論を止めてしまうことがあるからです」
院長先生「言われてハッとしました。何にせよ、私が最初に発言していることが多いので、それが決定事項のように受け止められていることからスタッフは『何を言っても変わらないろう』『言われたことをやれば良いのだ』と議論にもならないのだと気が付きました。判断することがスタッフの安心に繋がると信じてきましたし、何か起こったらすぐに判断しないと気持ちが悪いと思っていましたが、必ずしもそうではないのですね。時と場合によりますが、私が発言を抑えるなど、必ずしも判断しない、スタッフに判断を委ねることを意識していきたいと思います。出来るかな…(苦笑)」
このケース、どのような感想を持ちましたか?ネガティブ・ケイパビリティという言葉を聞いたことがある読者の皆さまもおられると思いますが、意外とこの「モヤモヤに耐える能力」に長けるリーダーは多くはないように思います。特に医療は命にかかわる仕事という特性もあり、どんなことでも「なるべく判断は早く正確にミスなく行うことが大切だ」という価値観が根底にある方も多いと思います。それは決して悪いことでありませんが、特に組織運営を考える上では組織員に考えさせる機会を損なっている場面もゼロではないようです。「ネガティブ・ケイパビリティ」を意識して、組織運営を見直してみませんか?きっと色々な気付きがあると思いますよ。
【2024. 1. 15 Vol.584 医業情報ダイジェスト】
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