組織・人材育成

目標管理における目標の種類と難易度

目標管理の必要性とチャレンジ目標か否かの判断について
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功
先日、某法人の人事制度委員会に参加し運用状況を確認した際、改善した目標管理制度について、一部の委員から2つの問題点が挙げられました。1つはチャレンジ目標が増えていること、もう1つは目標の種類を職員に理解してもらうのが難しいということでした。そこで今回は、目標管理の目標の種類を定める必要性とチャレンジ目標か否かの判断について考えます。

目標管理における目標の種類

目標管理は、人事評価の結果評価として活用されますが、第一の目的は、部署の事業計画を達成することです。したがって、チャレンジ目標が増えることは、その計画を上回る成果を目指して、部下が目標を立てたことの表れであり、本来、上司は喜ぶべきことでしょう。しかし、チャレンジ目標が増えたことを問題視している背景としては、部署の事業計画を達成するための目標になっておらず、しかも部下が勝手にチャレンジ目標と言っているものを直属の上司がそのままOKしたことにあると思われます。
また、目標の種類を明確にすることは、部下が何を目標とするのかが明らかとなり、部下の責任も明確になります。人間は責任感の強い生き物ですから、責任が明確になれば、目標達成の可能性が高まりますし、客観的な評価もしやすくなります。このことを経営職も十分理解できておらず、種類を決めることに抵抗感があるように思われます。

目標の種類は3つあります。1つは数値目標です。「地域の開業医からの紹介患者数を年間10%増やす」「新卒看護師を3月末までに例年より10名多く採用する」といった目標数値を達成する目標です。もう1つは、アウトプット目標です。これは、目の前に成果物が出来上がるような目標を言います。例えば、「新しいシステムを8月末までに完成させる」「新しい検査技術(例えば心エコー)を身に付け4月から実行する」といった目標を言います。この場合、心エコーができるようになった本人がアウトプットということになります。3つ目は行動目標です。これはスケジュール目標などとも言いますが、計画を立てて、その通りに実行できたか否かを評価するものです。例えば、「9月末迄に地域の開業医を計画的に30件訪問する(一見数値目標のようだが計画的に行動することをコミットしたもので行動目標である)」「自分が学んだことを8月の勉強会で情報発信する」といった、実行する行動を計画しその通りに行うといった目標を行動目標と言います。

病院の業務を考えると、企業の営業マンのように、自分の力だけで目標数値を達成するような目標を設定することは困難な職種が多いでしょう。そういう意味からも、数値を目標としたほうが難易度は高くなることが多いように感じます。目標の種類を明確にすることで、目標のゴールと責任、難易度が明確になるのです。

目標設定と難易度

医事課長が、部署の事業計画の中に「未収金を2千万円回収する」という目標を立てたとします。この達成に向けて自分も含め4名の担当者に分担して目標に掲げてもらい、1人で500万円を回収してもらわなければならないとすれば、医事課長は、担当者に500万円の回収を数値目標として挙げてもらうことを依頼し引き受けてもらわなければなりません。そしてさらに、その具体的な方策を共に考え、目標のアクションプランの中に挙げてもらう必要があるでしょう。なお、今までの回収状況や部下のポジションから、この目標設定チャレンジなのか否かも判断できると思われます。すなわち、部下にやってもらいたいことが先にあって、それを目標として立ててもらう時に、部下が数値まで責任を持つ自信がない場合、チャレンジ目標として認め、何が何でも数値を目指してもらうことに意義があるわけです。
未収金の累積が3~4千万円もあるような病院においては、未収金回収は切実な問題であり、医事課長が自らの目標に挙げて取り組むか、部下に任せるかしかないわけです。また、部下に任せるとしても、何らかの支援は必要になりますが、その前に数値を目指してもらいたいという上司の思いがあれば、そこに誘導するためにチャレンジの判定を活用します。

このように、まずは管理職が、自部署の取り組むべき課題を明確にして、それを担当者に分担する所から目標設定はスタートしなければなりません。目標管理は自ら立てた目標にコミットし実行してもらうことが基本とは言え、組織にとって有益な目標でなければ意味がありません。部下を上手にマネジメントし、有益な目標を立てさせ、自部署の事業計画を達成することこそ、管理職の重要な役割であり、そのための目標設定のポイントとして、種類の明確化とチャレンジを上手に使うことが求められるのです。


【2024. 2. 1 Vol.585 医業情報ダイジェスト】