組織・人材育成
初めての人事評価の導入とトップの関与
役職者の力を引き出す目標管理と育成段階のラダーの評価
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功先日、病院の人事評価委員会に委員としてオンラインで出席しました。事前に役職者以上の目標管理のシートと人事評価表をお送りいただき、すべて熟読させていただきましたが、どれも非常に分かりやすく書かれており感心した次第です。2020年4月に新しい人事・賃金制度を導入し今回4回目の最終評価ですが、導入後も継続して支援を続けてきた甲斐があったと嬉しく思いました。
そこで今回は、人事評価を全く行ったことがない病院等への制度の導入と運用について考えます。
そこで今回は、人事評価を全く行ったことがない病院等への制度の導入と運用について考えます。
役職者の力を引き出す目標管理と育成段階のラダーの評価
人事評価を行ったことがない病院では、経営者は、評価をすることで職員が退職するのではないかと危惧されます。また、自院の役職者には、部下を適切に評価することなどできないと言われます。このような目で、役職者を見ていたのでは、いつまで経っても人や組織をマネジメントできる人材は育ちません。
師長や主任といった役職者には、組織業績を最大化する役割と、部下を育成しマネジメントする役割があることを言い続け、彼らの意識を変え、内に秘めている力を引き出す必要があるのです。そのためにも、役職者以上には目標管理が有効です。
冒頭の病院では、1年間に、管理職であれば3つの目標を立てて取り組みます。部署の目標は、できるだけ業績評価指標として数値で表し、部署の評価ができるようにお願いをしていますが、個人の目標は数値にこだわる必要はないと伝えています。したがって、今回も数値目標以外の目標が多かったのですが、全員が収益向上や質の向上に向けての目標を立てて真剣に取り組んだ様子が、目標管理シートの「目標の概要」「手段・方法・時期」「中間面接時進捗状況」「目標達成度」の各欄に細かく書かれており、実際の活動状況が目の前に映し出されるようでした。
目標管理の目標は数値で表現することが原則という意見がありますが、筆者は、数値目標にこだわる必要はないと考えます。数値目標が推奨される根拠は達成水準が明確になるからですが、数字で表さなくても、「何を、どの程度、どのような方法で、いつまでにするのか」が明確になっていれば、同様に達成水準は明確と言えます。ですから、数値ではない進捗目標(筆者は行動目標と称する)でも客観的な評価は可能です。病院の業務には、数値で表すことができないものが数多く存在しますから、それを目標にできないのでは、公正とは言えませんし、病院の業績を上げていくこともできないでしょう。
ただし、数値で立てるべき目標を数値で立てないのは問題ですから、そのような場合には、目標設定の段階で修正をかける必要があります。冒頭の病院では、人事評価を導入した年にデイケアをスタートさせましたので、そこの師長は、常に数字を意識し、自己の目標に目標利用者数の増加を挙げてきました。しっかりと数値で目標が挙げられ、コロナウイルス感染症の影響なども把握しながら数字を確認して上げ続けており、これも目標管理を導入した成果と言えます。
なお、初めて人事評価を導入する病院では、育成段階の一般職等については、人事評価に変えてキャリア開発ラダーの評価を中心に、育成に力を入れるようにしています。その際にも、目標管理を導入し、能力開発のための目標を中心に立ててもらっています。部署目標からブレイクダウンした目標を設定するという目標管理の基本からは外れますが、まずは評価と育成を組織に根付かせるには効果があると考えます。
師長や主任といった役職者には、組織業績を最大化する役割と、部下を育成しマネジメントする役割があることを言い続け、彼らの意識を変え、内に秘めている力を引き出す必要があるのです。そのためにも、役職者以上には目標管理が有効です。
冒頭の病院では、1年間に、管理職であれば3つの目標を立てて取り組みます。部署の目標は、できるだけ業績評価指標として数値で表し、部署の評価ができるようにお願いをしていますが、個人の目標は数値にこだわる必要はないと伝えています。したがって、今回も数値目標以外の目標が多かったのですが、全員が収益向上や質の向上に向けての目標を立てて真剣に取り組んだ様子が、目標管理シートの「目標の概要」「手段・方法・時期」「中間面接時進捗状況」「目標達成度」の各欄に細かく書かれており、実際の活動状況が目の前に映し出されるようでした。
目標管理の目標は数値で表現することが原則という意見がありますが、筆者は、数値目標にこだわる必要はないと考えます。数値目標が推奨される根拠は達成水準が明確になるからですが、数字で表さなくても、「何を、どの程度、どのような方法で、いつまでにするのか」が明確になっていれば、同様に達成水準は明確と言えます。ですから、数値ではない進捗目標(筆者は行動目標と称する)でも客観的な評価は可能です。病院の業務には、数値で表すことができないものが数多く存在しますから、それを目標にできないのでは、公正とは言えませんし、病院の業績を上げていくこともできないでしょう。
ただし、数値で立てるべき目標を数値で立てないのは問題ですから、そのような場合には、目標設定の段階で修正をかける必要があります。冒頭の病院では、人事評価を導入した年にデイケアをスタートさせましたので、そこの師長は、常に数字を意識し、自己の目標に目標利用者数の増加を挙げてきました。しっかりと数値で目標が挙げられ、コロナウイルス感染症の影響なども把握しながら数字を確認して上げ続けており、これも目標管理を導入した成果と言えます。
なお、初めて人事評価を導入する病院では、育成段階の一般職等については、人事評価に変えてキャリア開発ラダーの評価を中心に、育成に力を入れるようにしています。その際にも、目標管理を導入し、能力開発のための目標を中心に立ててもらっています。部署目標からブレイクダウンした目標を設定するという目標管理の基本からは外れますが、まずは評価と育成を組織に根付かせるには効果があると考えます。
人事評価委員会等による人事評価の運用とトップの関与
人事評価の運用を継続して行っていくには、定期的に確認する委員会は必須です。特に1年間の最終評価については委員会で内容を確認すべきでしょう。病院のトップを含めた委員全員で、役職者以上の目標管理シートや人事評価表のすべてを熟読し、一人一人の活動を確認し、必要があれば、その内容を基に指導を行わなければなりません。時に、実際の彼らの活動を確認もせずに、「当院の管理職に問題があるので、病院の経営が上手くいかない」と言う幹部の方がおられますが、それでは組織がよくなっていくわけはありません。冒頭の病院の理事長は、すべてのシートに目を通し、それを基に各部長の話を聴き、役職者以上の職員の活動を十分把握して委員会に出席され、意見を述べられています。
理事長のこの姿勢が、組織を変え、人事評価を活用して業績を上げ続けていると推察します。管理職の最終評価者は理事長であり、S評価やA評価を付けられた管理職は、その結果がダイレクトに処遇に反映されなくても、モチベーションを上げ、この理事長の下で頑張りたいと思っている姿が、目標管理シートにそのまま表れていました。従業員エンゲージメントの高い人材も多く育ち、今後の一層の発展が期待されます。
【2024. 4. 1 Vol.589 医業情報ダイジェスト】
理事長のこの姿勢が、組織を変え、人事評価を活用して業績を上げ続けていると推察します。管理職の最終評価者は理事長であり、S評価やA評価を付けられた管理職は、その結果がダイレクトに処遇に反映されなくても、モチベーションを上げ、この理事長の下で頑張りたいと思っている姿が、目標管理シートにそのまま表れていました。従業員エンゲージメントの高い人材も多く育ち、今後の一層の発展が期待されます。
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