組織・人材育成
事務職の育成と管理職の人材像
職員の異動と育成、処遇について
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功![](/upimg/PIC__0_1701395539.jpg)
職員を育成する目的で、定期的に職員の人事異動を行っている医療機関があります。そのような医療機関に人事・賃金制度を導入する際、時に質問を受けるのは、「人事課から医事課に異動した場合、医事課の業務は新人になるが、育成や処遇において新人として扱うのか」ということです。
特に、事務職においては、医事課からスタートし、用度課、経理課、人事課などいくつものセクションを経て、課長や部長に昇進させているような組織に、キャリア開発ラダーを導入し、ラダーの育成と資格等級をリンクさせようという提案をすると、このような質問をよく受けます。先日も多くの福祉施設や医療機関を有する法人で、同様の質問を受けましたので、今回は、職員の異動と育成、処遇について、事務職の育成を例に考えます。
特に、事務職においては、医事課からスタートし、用度課、経理課、人事課などいくつものセクションを経て、課長や部長に昇進させているような組織に、キャリア開発ラダーを導入し、ラダーの育成と資格等級をリンクさせようという提案をすると、このような質問をよく受けます。先日も多くの福祉施設や医療機関を有する法人で、同様の質問を受けましたので、今回は、職員の異動と育成、処遇について、事務職の育成を例に考えます。
育成段階の職能資格制度とラダー
育成のために異動を定期的に行っている組織では、状況によっては、人事課の係長を医事課に異動させることも考えられると思います。また、異動の際に、医事課に係長のポストがなければ、主任として異動させることもあるようです。本人に問題がないのに役職を落として異動をさせるのはいかがなものかと思いますが、管理職になる前の育成段階であればやむを得ないのかもしれません。
実際、このような人事異動を行っている医療機関がありました。
このような場合、役職が下がるのに伴い、等級も落ち、基本給まで下がっては、誰も異動を望まなくなるでしょうから、等級を下げる降格はすべきではないでしょう。したがって、職員の育成のために異動を定期的に行っている医療機関の等級制度は、管理職になるまでの育成段階においては、職能資格制度の考え方を入れると理論的にも問題ないように思います。すなわち、1度身につけた能力は下がることはないということから、等級を下げる降格という概念のない制度を入れて、育成段階では、能力育成に注力することがよいと思います。
また、人事課の係長が、医事課の経験は初めてで、診療報酬についても1から学ぶからといって、ラダーのレベルを下げることもしてはいません。事務職としてのキャリアはあるのですから、ラダーは、同一ラダーで、頑張ってもらうことにしています。
異動が多く、その際、仕事の内容も大きく変わる事務職のラダーでは、事務職で共通の実践能力を段階に応じて明確にするとともに、重要な専門業務については、毎年5項目程度、選択して身に付けていくような仕組みを入れるようにしています。例えば、医事課に配属中であれば、①診療報酬点数の計算ができる、②自賠責、公務災害、労災について、内容を把握し、患者に説明ができる、③診療報酬改定の内容や施設基準について理解できる――などの基本的実践能力から、その年に身に付けるべき能力を選択してもらいます。育成段階のラダーレベルを2~3段階程度とし、課長の役割を担うまでに、3セクションの経験を求めるのであれば、その期間で、ラダーを終了すればよいことになります。
なお、あまりにも頻繁に人事異動をする所がありますが、多くのセクションを経験したから、人は成長するというものでもありません。自分が自信の持てる核となる知識や技術を身に付けることが、その人の成長にとって必要だと考えます。1セクションでは、視野が狭くなり、考え方の柔軟性が乏しくなりますから、複数のセクションの経験は必要でしょうが、育成段階において2~3セクションで十分ではないかと考えます。
実際、このような人事異動を行っている医療機関がありました。
このような場合、役職が下がるのに伴い、等級も落ち、基本給まで下がっては、誰も異動を望まなくなるでしょうから、等級を下げる降格はすべきではないでしょう。したがって、職員の育成のために異動を定期的に行っている医療機関の等級制度は、管理職になるまでの育成段階においては、職能資格制度の考え方を入れると理論的にも問題ないように思います。すなわち、1度身につけた能力は下がることはないということから、等級を下げる降格という概念のない制度を入れて、育成段階では、能力育成に注力することがよいと思います。
また、人事課の係長が、医事課の経験は初めてで、診療報酬についても1から学ぶからといって、ラダーのレベルを下げることもしてはいません。事務職としてのキャリアはあるのですから、ラダーは、同一ラダーで、頑張ってもらうことにしています。
異動が多く、その際、仕事の内容も大きく変わる事務職のラダーでは、事務職で共通の実践能力を段階に応じて明確にするとともに、重要な専門業務については、毎年5項目程度、選択して身に付けていくような仕組みを入れるようにしています。例えば、医事課に配属中であれば、①診療報酬点数の計算ができる、②自賠責、公務災害、労災について、内容を把握し、患者に説明ができる、③診療報酬改定の内容や施設基準について理解できる――などの基本的実践能力から、その年に身に付けるべき能力を選択してもらいます。育成段階のラダーレベルを2~3段階程度とし、課長の役割を担うまでに、3セクションの経験を求めるのであれば、その期間で、ラダーを終了すればよいことになります。
なお、あまりにも頻繁に人事異動をする所がありますが、多くのセクションを経験したから、人は成長するというものでもありません。自分が自信の持てる核となる知識や技術を身に付けることが、その人の成長にとって必要だと考えます。1セクションでは、視野が狭くなり、考え方の柔軟性が乏しくなりますから、複数のセクションの経験は必要でしょうが、育成段階において2~3セクションで十分ではないかと考えます。
事務職の管理職の人材像を示す
事務職の管理職は、その業務における実践能力は、当然必要であり、育成段階で身に付けた能力を活かせるセクションでの活躍を望みますが、それとともに、何か起こった際に状況を的確に把握して対処する判断力や企画力といった課題対応能力、スタッフの意欲や能力を引き出し、部署の目標をスタッフとともに達成するという対人対応能力も発揮してもらわなければなりません。
そこで、管理職の育成においては、まずは自院が求める管理職の人材像を示す必要があると考えます。なお、育成段階を経て管理職に昇進しているわけですから、管理職の異動は基本的には頻繁に行わず、じっくりと業務に取り組んでもらうほうがよいように思います。また、降職をしての異動も不適切と考えます。
事務職の管理職の人材像としては、次の5つが挙げられます。①部署のビジョンをわかりやすく語り、スタッフを引っ張っていくことができるビジョナリーリーダーである。②部署の目標設定と達成にむけて、リーダーシップを発揮できる。③専門領域においてリーダーシップを発揮し、その分野をマネジメントできる。④病院の全体最適を考えることができる。⑤スタッフを育成することができる。
ちなみに、これら人材像に近づけるために、具体的にどのような役割を果たしてもらえばよいかを、役割行動という形で示し、その行動が取れるようになるよう、医療機関の幹部である部長職に管理職の指導をお願いしています。
【2022. 7. 15 Vol.548 医業情報ダイジェスト】
そこで、管理職の育成においては、まずは自院が求める管理職の人材像を示す必要があると考えます。なお、育成段階を経て管理職に昇進しているわけですから、管理職の異動は基本的には頻繁に行わず、じっくりと業務に取り組んでもらうほうがよいように思います。また、降職をしての異動も不適切と考えます。
事務職の管理職の人材像としては、次の5つが挙げられます。①部署のビジョンをわかりやすく語り、スタッフを引っ張っていくことができるビジョナリーリーダーである。②部署の目標設定と達成にむけて、リーダーシップを発揮できる。③専門領域においてリーダーシップを発揮し、その分野をマネジメントできる。④病院の全体最適を考えることができる。⑤スタッフを育成することができる。
ちなみに、これら人材像に近づけるために、具体的にどのような役割を果たしてもらえばよいかを、役割行動という形で示し、その行動が取れるようになるよう、医療機関の幹部である部長職に管理職の指導をお願いしています。
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