組織・人材育成

報連相はそれぞれが大切!「相談」まで出来る組織とは?

「報連相」について勉強会を行った事例
株式会社メディフローラ 代表取締役 上村 久子
暑さと台風、そしてコロナの第7波が猛威を振るっていますね。急遽シフトの調整が必要になるなど、通常とは異なる業務の対応が続く組織も多いと思います。通常でも緊急事態でも円滑な業務に大切な「報連相」について勉強会を行った事例から、より良い組織のあり方を考えましょう。

ケース:

「報告と連絡は仕事において大切だと分かるのですが、正直、相談というと…ピンと来ません」と語るのはこのクリニックに努めて4年目になる栄養士Aさんです。
このクリニックの院長先生は何かあるたびに「報連相が大切だ」とスタッフに言い聞かせていました。その院長先生から「報連相の大切さについてスタッフに認識させて、より良い組織を目指したい」と要望があり、この日の全体研修のテーマは「報連相」としました。冒頭の発言は、このクリニックで研修が日常業務に入り込んでいたからこそ出てきた、スタッフからの何気ないひと言なのでした。
よくよくAさんにお話を聞くと「私は院長先生や看護師さんたちから指示されて患者さんに食事指導を行っていますが、その業務では『食事指導を行った』という報告をしたり、受付の代わりに出た電話の内容について必要な人に連絡したりすることはあるので理解できるのですが、相談はどんなことが考えられるのか分かりません」とのこと。すると看護師Bさんも「実は私も同じことを思っていました。院長先生から指示されたことをこなすことが仕事だと思っていたので、相談すること自体がおこがましいというか…仕事のことであれば自分で解決しなきゃいけないような気がして…ピンと来ないというAさんの意見が分かります」と発言。この言葉に院長先生は心底驚いている様子でした。

この後、「報告・連絡・相談はそれぞれ何のために行うのか」「なぜそれが必要なのか」「大切なのはみんな承知しているが、それが出来ないのはなぜなのか」というワークを行って研修は終了しました。
やはり盛り上がったワークは「相談」について。相談は「自分で考えて仕事を行う意識が無いと生まれない」ということや「相談することに戸惑う心理が働く組織では成り立たない」という発言がスタッフから出てきたのでした。
 研修の終了後、院長先生とコーチングセッションを行いました。

院長先生
「私はスタッフから必要な相談はされているように思っていたので驚きました。相談をすること自体が自分の業務が出来ていないことを示しているように感じたり、未熟であることを認めたりと、ネガティブに捉えられてしまっている雰囲気を自分が作っていたのかも知れません…」
院長先生は大きなショックを受けていましたが同時にこんな変化もあったようです。

院長先生
「…実は、あの研修の後、スタッフ同士で『まず報告と連絡をしっかり行える環境を整えよう!』と忙しい時の付箋での連絡方法など、具体的に対応策を考えてその日のうちに実行するようにしたのです。そうしたら『指示を受けた内容について何も問題なく終わったら報告しなくても良いと思っていた』と語っていたCさんが付箋でコメントを残してくれるなど、新しい形でコミュニケーションが生まれたのです。少しずつですが、まず必要な内容を滞りなく伝えあえる組織づくりから始めたいと思います」

このケース、どういう感想を持ちましたか?
ポイントは2点あると思います。1つ目は、仕事を主体的に考えて行動するという文化が形成されにくい医療という特殊性を理解して「相談しやすい組織づくり」を行うこと。2つ目に、そもそも報告・連絡というコミュニケーションの工夫を行っておらず、円滑に行えていない組織は「相談しやすい組織づくり」の実現は難しいということです。

医療は医師の指示の下に業務を行うという性質上、どうしても医師以外は指示された内容通りに行動する文化が根付いており、自分たちで考えて行動するという文化からは真逆と言えます。仕事における相談の目的は業務の改善であることを考えると、医師から指示を受ける側のスタッフに「相談する」という思考が無いことは、想像以上に少なく無いと思います。今回のケースで行った研修では「相談しても良いのだ」ということを確認し合うことが出来ました。そして、そもそも報告・連絡の時点で認識が異なっていたという事実も発覚し、改めて報連相というコミュニケーションの方法を具体的に振り返ることに繋がり、改善に向けた行動変容が出来たケースでした。

「報連相が大切だ」ということを理解している方は多いと思います。ただ、報連相って自分たちにとって何なのか、一つひとつ改めて振り返ってみると思わぬ組織改善の鍵が眠ってるかもしれませんよ!


【2022. 9. 1 Vol.551 医業情報ダイジェスト】